第10話 少しだけ怖い実体験

視えても、話しかけられても無視をする。

それを守り始める前に一度だけ幽霊の話を聞いてついていったことがある。


筆者が小学3年生の頃のとある放課後

両親は共働きで忙しそう。

姉は友達と遊びに行ってしまった。(姉がいます、これから出るかもしれない)

筆者は公園に行こうかと自宅を出て歩いていた。


『ねえ、こっちで遊ぼうよ。』


真上から聞こえてきた女の子の声

真上と言ったら空だ、時間的にもそんなに遅くないので明るい空

つい見上げたら真っ白のワンピースを着た女の子の幽霊がいた。

そして問いに答えてしまった。


「遊ぶってどこで?なにするの?」


『私の秘密の場所に連れて行ってあげる、ついてきて。』


女の子の幽霊は同じ目線の高さまで降りてくれば誘導するように前を進みだした。

それに大人しくついていってしまった。


普通の道

土手

人の家の裏


そんな道を歩いていき、流石に疲れてしまい声を上げた。


「もう疲れたよー、まだー?」


そう聞くと女の子の幽霊はにこにこ笑いながら右手で家と家の間の道を指差していた。


『ここだよ、ここを通ったら秘密の場所に行けるよ。』


「秘密の場所ってなにするの?」


『それは行ってから決めよう、ほら早く』


そう言い右腕を引かれた。

ついていこうとしたら今度は反対の左腕を強く引かれた。


「こんな所で何してるんですか!」


腕を引いてきたのは近くにある神社の神主さん

服装で分かった。

必死な顔と大きな声に思わず驚きながらもぽつりと口にした


「あの子が秘密の場所に連れて行ってくれるって言うから…。」


「あの子って、視えるんですか。あの赤いワンピースの女の子が」


「赤?白だよ、ほら…」


そう言ってもう一度女の子の幽霊を視たら真っ白のワンピースは血に染めたように真っ赤になっていた。

首がありえない方向に曲がりながらけたけたと笑っていた。


『あぁ、おしかった。もうスコしで秘密の場所に連れていけタノに。大人が触ッタらもうダメだ、バいばイ』


そう言って家と家の間に入っていってしまった。

神主さんがそれを視て深い溜め息をついた。


「あの子についてきたんですか、家はどこ?」


「〇〇の1丁目って場所。」


「◯◯の1丁目!?ここは△△の5丁目ですよ!?」


驚く神主さんにつられ同じく驚いた筆者。

歩いていった場所は大人なら2時間以上歩く場所

子どもならもっとかかるだろう。

そんなに歩いたつもりないのに、と言うと


「霊についていくとよくあることです、時間間隔が狂ったり平衡感覚が狂ったりと…。送っていきます。」


「知らない人についていったらダメって学校で教わった…。」


「今まさしく知らない霊についていこうとしたのに!?あぁ、じゃあ奥さん呼んで親御さんに電話するのでせめて電話番号を教えてください。」


「変なことしない?」


「しませんから!」


それから近くの神主さんがいつもいるという神社に行き、母屋で神主さんと変わらない年くらいの奥さんが出迎えてくれて神主さんが母と電話している間にお菓子を食べさせてくれた。


距離もあるので車で送ってもらうことになり、神主さんは運転席で筆者と奥さんは後ろの席に座った。

気付いたらすっかり夜が更け周りは真っ暗に

何時なんだろう、と当時ケータイも時計もなかった筆者はそわそわした。


結局家に着いたのは夜の19時

母は怒る前に泣きながら出迎えてくれた。

あまりにも遅かったから警察に届けを出す所だった、と父は神主さんに礼を言いながらそう話していた。


「そうだ、お嬢さんにはこれをあげますね。」


父と話し終わった神主さんはそう言って桃色の小さな御守袋を渡してきた。


「小学校を卒業するまでお風呂以外は肌身離さず持っていなさい、悪いものからお嬢さんを守ってくれますよ。」


「本当に?」


「私の保証付きです。」


自信満々に言う神主さんに対して怪訝な顔をした筆者だが事情を電話で聞いた母はすぐに首に下げられるように紐を繋げてくれたのでつけることにした。


神主さん達を見送り夕飯も食べいつも通り寝たが次の日高熱を出した。


医者には疲れだろう、と言われ知恵熱と診断されたとか。

正直どのくらいの熱だったかは覚えていないが暑かったなって薄っすら記憶がある。


後日父の運転する車でたまたま女の子の幽霊に案内された道の近くを通った。

そこには黄色と黒の立ち入り禁止のテープが貼られていた。


神主さんが動いてくれたのか、元々貼られる予定だったかは分からない。

その黄色と黒は嫌によく覚えている。


中学校に入る頃に当時の神主さんにお礼を言いに行こうと母が行ってくれたので久しぶりに会いに行った。

大きくなったね、と夫婦揃って出迎えてくれて無事に小学校卒業できました、と母は頭を下げていた。

神主さんに会えたら聞こうと思っていたことがあったので聞いてみた。


「ねえ、あの女の子の幽霊はどこに行ったんだと思う?」


そう聞いたら神主さんは少し渋い顔をして首を左右に振って


「それは考えないほうがいいですよ、これから先もずっと。必要であればまたお守り差し上げますので。」


と、言われたのでそれ以上は聞けなかったが小学校の間つけていた御守袋は返して普通に売っているお守りを買って帰った。


今でもあの道は立ち入り禁止のテープが貼られているのだろうか。

大人になった今も怖くてまだ行けていない。

あそこをくぐっていたら今ここにいられなかったと思うから。


この神主さん夫婦にはその後も少しお世話になったがまたそれは別の機会に。

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