これが合コンか(個人の見解です)

藤泉都理

第1話 仙涯実と丹賀歩




 黒の丸サングラス。

 袷の灰色ちりめん着物。

 黒の足袋に、黒の千両下駄。

 これらを身に着ける銀髪で長身のすらりとした男性は、ウインクしながら言った。

 ここにいる全員を、ぼくは狙っているよ。


 女性三人、男性三人。

 合わせて計六人での合コンで、自己紹介を始めた時の出来事であった。




(全員を狙っている。なんて言っていたけど)


 ちびりちびり、ちょびりちょびり。

 大衆居酒屋。畳に直座り。長方形のテーブルに並べられた居酒屋料理、ソフトドリンク、お酒の数々を前に。

 初めて合コンに参加する緊張は解かれたけれど、他の緊張感が発生。なるべく物音を立てずに食事を進めつつ、神経を集中させた。


 自己紹介の際に、全員を狙っている宣言をかました隣の男性、仙涯実せんがいみのると、彼の真正面に座り、浅葱色のニット帽を深く被って目を隠して、灰色のぶかぶかのフード付きパーカーとジャージパンツを身に着けている男性、丹賀歩たんがあゆむが紡ぎ出す二人だけの世界に。


 緊張している、からだろうか。私が。とっても。

 それとも、お互いにわかる程度の声量しか出していないのか。

 何を話しているのか、まったく、これっぽっちもわからないのだけれど。

 時々盗み見る二人の雰囲気が、とっても、やわらかくて、やさしくて、ういういしくて、マイナスイオン満載で、浄化作用抜群で。

 日頃の疲労鬱憤が消化されていく感覚だった。

 これが。これが、


((((合コン、か))))


 心の声が確かに一致したような気がした私を含む四人は、互いに慈愛に満ちたまなざしを向け合ってのち、もう一度心の声を一致させた。


 二人を快く見送ってのち、ゆっくりじっくりしんみりしみじみ、飲み明かそう。











(2023.1.2)




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