面倒なことは全部無能と呼ばれている妹に任せてたら何故か病んでた。しかも俺なんかよりめちゃくちゃ有能そう
シャルねる
俺の犯してしまった罪
家には無能と呼ばれる女の子がいる。
俺が八歳になったと同時にいきなり家に住むようになった子だ。
父様がいきなり「今日から一応、お前の妹になる娘だ。人前では気をつけろ」と言って連れてきたんだ。
その時は一応妹って言う意味が分からなかったし、人前では気をつけろって意味も分からなかったけど、なんとなく、大人たちのその子への態度を見てれば意味は分からなくても雑に扱ってもいいってことは分かった。
……ただ、雑に扱うっていうのもよく分からなかったから、俺は取り敢えずめんどくさいことを妹になった子に任せることにしたんだ。
……まぁ、めんどくさいことは基本的にメイドがやってくれるから、基本的にメイドに任せるようなことをその妹になった子に任せ続けた。
そして今、俺は15歳になった。
学園にも通うようになったし、流石の俺も理解した。
今、俺が妹に……イリーゼにしていることはあれだ。……いじめだ。
……いや、正直に言うと、薄々気がついてたんだ。気がついてたんだけど、俺が意図的に目を逸らしていただけに過ぎないんだよ。……だってさ、そう気がついてからイリーゼの様子を見てみても、全然苦痛に感じてるような感じがしなかったんだよ。
まぁ、全部俺がそう思いたいだけで、そう見えてしまってただけなのかもしれないけど。
「イリーゼ、大事な話がある。今、良かったか?」
そして、俺はイリーゼに今までの事を謝るためにイリーゼの部屋に訪れていた。
許してくれなくていい。ただ、なにか俺に出来ることがあるのなら、償いをしたかったから。
「……はい、もちろん構いませんよ。お兄様」
すると、中から嬉しそうな声色でイリーゼはそう言ってきた。……いや、俺がそう思ってるだけかな。いじめていた相手が自分の部屋を訪れてきて、嬉しいなんて思うはずがない。
はぁ、本当に自分が嫌になる。
もっと早く、俺が自分のしていることに気がついていれば、仲のいい兄妹にでもなれたんだろうか。
今更考えても無駄な話しか。
「入るぞ」
そんなことを内心で思いながらも、俺はそう言ってイリーゼがいる部屋の中に入った。
「お兄様、また、なにか私に御用ですか?」
俺が部屋に入るなり、小柄な金髪の女の子……イリーゼは心做しか嬉しそうにそう聞いてきた。
……さっきもだけど、勘違いにも程があるな。イリーゼが嬉しそうなはずがないだろう。いい加減にしろよ、俺。
本当に反省してるのか? ……してるよ。
「イリーゼ……もう、俺の変な命令に従う必要は無い。……今まで、悪かった」
どうやって謝ったらいいのかなんて分からなかった。今まで誰かに謝るようなことなんて無かったから。……甘やかされすぎてたんだな。父様や母様に文句を言うつもりはないが、今なら分かるよ。
……今更だけど、なんで父様は初めてイリーゼを連れてきた時にあんなことを言ってきたんだろう。
母様だってイリーゼに対する仕打ちを止めようとしてなかったし。
ただ、それでも、俺は自分の気持ちをそのまま言葉にして、イリーゼに向かって頭を下げた。
「何か、俺に償えることがあるのなら何でもする。もう俺に関わらないで欲しいのなら、一生イリーゼには関わらない」
そしてそのまま、続けるようにそう言った。
頭を下げているから、顔は見えないけど、イリーゼは酷く動揺してるみたいだった。
……当然だよな。
今まで、自分のことをいじめてきていた相手がいきなりこんなことを言って頭を下げてくるんだから。
「……どうして、どうして、そんな酷いことを言うのですか、お兄様」
……酷い、こと? ……もしかして俺はまた何か、イリーゼに対して嫌なことを言ってしまっているのか?
「私に関わらないだなんて、冗談ですよね? お兄様。お兄様は私にそんなこと言うはずがないですもんね?」
「い、イリーゼ?」
頭を下げた状態でもイリーゼの纏う雰囲気が今までに感じたことの無いようなものだったから、俺は思わず顔を上げてそう言ってしまっていた。
なんて例えたらいいんだろうか。……龍に睨まれたゴブリン? いや、それは少し違うかもだけど、感覚的にはそんな感じだった。
「ねぇ、冗談ですよね、お兄様」
「え、あ、いや……い、イリーゼが望むのならって話で、望まないのなら、何か、他に償いをしようかと思って、ます」
ただ、顔を上げてもいつもと様子の変わらないイリーゼが居て、そう言ってくるだけだった。
そんなイリーゼに動揺した俺は、思わず敬語になってしまいながらも、思っていたことをそのまま言った。
「……償い?」
すると、イリーゼは訳が分からない、と言った風にそう呟いていた。
そりゃそうだ。
何度も言うが俺はイリーゼをいじめていた相手だ。
そんなやつからいきなり償いなんて言われても意味がわからないに決まってる。
「……意味が分かりませんし、そんなもの、お兄様からは絶対に必要ありません。私には分かりませんが、もしもお兄様が何かを罪に感じていると言うのなら、私と一生一緒に居てください」
「……えっと、え? あ、え?」
イリーゼからのそんな言葉に困惑した俺は、思わずそんな間抜けな声が出てしまっていた。
マジで何を言ってるんだ? ……俺が馬鹿なのが悪いのか?
「……嫌、だなんて言いませんよね? お兄様」
「え、あ、あぁ、い、イリーゼが望むのなら、と、当然だ」
イリーゼに謎の圧をかけられてそう言われた俺は、気圧されながらもそう言った。
何か、俺は更に取り返しのつかないことをした気がした。
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