ギャルゲーの主人公視点じゃない奴
箱屋
よくある転校生
「なあ相棒。」
体格のいい男子、友崎が言った。
「どうした戦友。」
どこぞの男子の魂が入ってるだけの地味目な女子、志摩が答えた。
「隣の教室に転校生が来てるらしいぜ。」
「だからどうしたよ。」
転校なんて今時よくある。
ましてやアニメでもないのにそんな一時の出会うか出会わないか、卒業した後で覚えてるような間柄になるかもわからんことで大盛り上がりする方がアホらしい。そんな感じの感情で志摩は答えた。
「お前は見に行かねぇの?」
「あほくさ。転校生よりか、うちのクラスの色とりどりな髪のクラスメイト共の方が5000倍珍しいと俺は思うね。」
「そのカラフル頭たちがみんなして見に行ってるんだぜ?一波乱ありそうじゃね?」
言われてみれば、今の教室にわずかに残るクラスメイトはただの黒髪か、少し色落ちした茶髪気味の人たちだけ。
「オレは行くぜ相棒。歴史が変わる瞬間をこの目で見てやる。」
「やはり隣の教室か、俺も同行しよう。」
「志摩院…!」
アホなやり取りをしながら、二人は授業中の教室を抜け出した。
廊下に出てすぐに。これは異常だと二人は感じた。
だって劇場の大舞台みたいに教室からまぶしい光が溢れていたのだから。
非現実的すぎるのだった。
教室の窓やら出入口やらから覗いていた人たち(主に女性陣)はバタバタと倒れていて、万が一子の廊下をバイクで突っ走ったら数十名は命が飛ぶなぁと感じさせる様だった。
二人のクラスにいたカラフル頭のガールズもしっかり覗いていたが、しかし驚くべきことに、教室から漏れる謎の光を浴びても気絶することなく、目をハートマークにしてよだれを垂らすだけでとどまっていた。
端的に言うと、うちの学校の美人何人衆たちとは思えないほど滅茶苦茶汚かった。
「お、おいもう戻ろうぜ…。」
「なんだよ友し。びびってんのか?」
「ふ、ビビってるわけがないでしょう。オレ的に考えて。」
友崎はこんなこともあろうかと、と二人分のサングラスを用意して、装着した。
「…片方俺によこせや。」
ぐだぐだしながらも二人で光る教室を覗く。
そこは。
真に死屍累々だった。
舞台の上で自己紹介する人型の発光体が身振り手振りし笑顔で言葉を発するたび、熱線の如く光が教室を飛び、線上に居た生徒たちはそろって奇声をあげながら恍惚とした表情でよだれなり何なりをまき散らし倒れ伏す。
前の生徒から後ろの生徒まで分け隔てなくこのありさま。
果ては”やばいと思って止めようとしたのかもしれない先生”まで倒れ伏していた。
誰も聞いていないであろう自己紹介。
「─────それでは、これから君たちと仲良くできるとうれしいです♪」
ショタっぽい声で発光体はそう言うと、窓の外のカラフル頭たちにも優しくウインク。
そしてビームが発射された。
「「「「きゃうんっ!!!!!!!」」」」
流石の
全身に電流が走ったかのような感覚と共に、彼女らは意識を手放したのだった。
その時ふと、発光体少年とグラサン少女の目が合う。
「─────ッ。」
発光体がなにか言葉を発したようだったが、あんなビーム出すやつに睨まれてビビり散らかして逃げ出した少女と少年に、その音が届くことは無かった。
発光体はぱっぱと教室を片付けると、静かに自分の席に着くのだった。
「いやー、クソほど眩しかったな?戦友、お前あれ何だったか知らね?」
「知らねーよ相棒、とっとと戻ろうぜ。よく考えたら国語の高山の授業抜け出すとかマジにあほだったかもしれねぇ…!」
現実とは思えないみょうちきりんな転校生。
そんな未知との出会いにより、彼らの1学期はあらぬ方向へ飛んでいき始めるのだった。
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