7. ゴブリンのリーダー

 ボクたちは途中にいるゴブリンを踏み潰しながら陣地の奥へと踏み込んでいく。

 途中からゴブリンライダーたちも混ざりだし面倒になってきたけど、その程度で足が止まるわけじゃない。

 襲ってきたゴブリンはすべて倒しながら最奥部付近まで歩みを進めた。

 そこにいたのは先ほど遠見の水晶玉で確認した笛を吹くゴブリンだ。

 周囲は槍を手にしたゴブリンと櫓の上に立つ弓を構えたゴブリン、それに巨大な体躯をしたホブゴブリンで守っている。

 見た目からしてもこいつがリーダーだろう。


 ボクがアレクに乗ったままゆっくりと近づき、鞍に取り付けてあったランスを手に取る。

 それを見たゴブリンたちのリーダーは笛を吹くのをやめこちらを睨み付けてきた。


『ナニモノダ。コノチヲオカスフトドキモノガ』


「何者でも構わないだろう? 人にとって君たちゴブリンは身近にいてほしくない存在なんだ。こんな街の近くに群れがいたら追い払いたくもなる。この群れのリーダーは君かい?」


『ソウダ。オレサマガコノムレノリーダーダ。セッカク、コノサキノマチヲオソウタメニチカラヲタクワエテイタノニジャマヲシヤガッテ』


「それは残念。ついでに君の命ももらい受ける」


『ヤレルモノナラヤッテミロ、ジュウジン!』


 ゴブリンのリーダーは再び笛を吹き始める。

 その笛の音に合わせてゴブリンたちの陣形が変わっていき、槍を持ったゴブリンたちはボクたちを包囲するような構えに、弓を構えたゴブリンたちは集まって来て僕を狙う構えに、ホブゴブリンたちも僕に狙いを定めてきた。

 あの笛、士気高揚のためかと考えていたが、ゴブリンを操るための魔法の道具マジックアイテムか!

 これは早くあのリーダーを倒すか笛を奪うか破壊するかしないと、外縁部で戦っている冒険者たちも危ないかもしれない。

 柄じゃないがちょっと本気で行こう。


「アレク!」


『任せろ!』


 ボクは手綱を引き、アレクの腹を蹴る。

 それを受け、アレクは一気に最高速度で走り出し空へと駆け上がった。

 それを見た槍持ちのゴブリンたちは、すかさず槍を投擲してくるが届く前にランプ噴き出す炎によって槍を消し炭にされてしまう。

 素手になっても諦めずボクたちを追おうとしているみたいだが、その前にロインからほとばしった電撃に焼かれて倒される。

 残ったオファールもホブゴブリンに突撃を仕掛け、一匹を角で串刺しに、もう一匹を蹄で踏みつけたあと、毒のブレスを吐き出して周囲のホブゴブリンたちを一網打尽にした。

 ボクとアレクにはゴブリンの弓兵から矢が放たれるけど、その程度の攻撃ではアレクに当たることはない。

 アレクのスピードと動きをゴブリンごときが予測できるはずがないのだ。

 ゴブリンの櫓はランプたちに任せ、ボクとアレクはゴブリンのリーダーを倒すべく突撃を仕掛ける。

 しかし、ボクのランスによる突撃は見えない障壁によってはじかれた。

 これは……結界具か!


「用意周到だね! 結界まで張っているなんてさ!」


『ユダンハシナイ。オマエノコウゲキデハオレニトドカナイゾ』


「それはどうかな?」


 ボクはランスを手放し、背中に回してあった棒を取り出す。

 両方の先が宝石になっている打撃用の棒だ。

 ボクはそれを手に再び突撃攻撃を仕掛ける。

 ボクの手にある棒が結界に振れた途端結界は消え去り、それを見たゴブリンのリーダーは慌ててボクとアレクの攻撃を回避した。


『ナンダ、ソノブキハ!?』


「ちょっとした魔法の道具マジックアイテムだよ。さて、身を守る盾もなくなった。大人しく観念してくれるとありがたいな」


『ソウハイクカ! オレハゴブリンノオウトナルノダ!』


 ゴブリンのリーダーは腰に下げていた袋からなにかの破片を取り出し口に含む。

 すると、ゴブリンのリーダーの体が膨らみ始め、筋肉なども盛り上がっていく。

 ああ、それも持っていたか。


『ドウダ! コレナラバカナワナイダロウ!』


「魔鱗の欠片を持っていたことには驚いたよ。でも、それだけだ」


 ボクは改めて棒を構えアレクとともに飛び出す。

 ゴブリンのリーダーも背後においてあった剣を取って攻撃してくるが、ボクの棒とゴブリンの剣がぶつかった瞬間、ゴブリンの剣は粉々に砕け散った。


『ナニ!?』


「そんな粗末な剣じゃねぇ。それでは仕留めさせてもらう!」


 ボクは棒を突き出し、ゴブリンのリーダーの胸を貫いた。

 アレクはそのまま勢いに乗って前進し、ゴブリンのリーダーの後方にあった岩にぶつかる。

 それによってゴブリンのリーダーは完全に胸を潰されたみたいだ。

 息も浅くなり弱々しくボクたちをにらみつけるだけである。


『ナンダ、ナンナノダ、オマエタチハ』


「ただのモンスターテイマーだよ。ちょっと強いだけのね」


『ナンナノダ! オマエタチハ!!』


「うるさい。黙って死ね」


 ボクはゴブリンのリーダーの胸から棒を引き抜く。

 そして、アレクがゴブリンのリーダーの頭を踏み砕いて討伐完了だ。

 うん、ゴブリンにしては強かったけど、所詮はゴブリンだったな。


「あの笛は……ああ、あった、これか」


 ボクは戦利品としてあの毒々しい色の笛をいただいておく。

 なにかしらの魔力がこもった魔法の道具マジックアイテムのようだし、調べれば効果がわかるだろう。


「メェー」


「あ、オファール。ランスを持ってきてくれたのかい。助かるよ」


「メェー」


 ゴブリンの櫓も倒壊しており、乗っていたゴブリンたちもおそらくはランプたちに倒されているはずだ。

 リーダーを倒したことでゴブリンの群れの統率は乱れたはず。

 ボクも掃討を手伝うとしよう。

 早く街に帰りたいしね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る