第7話 必ず守るよ
校長である桐生からの待機命令など、頭の中にはなかった。本当は走り抜けようという気持ちだったが、流石にそこまでのリスクは避けようと思った。
さらにその調子で3.4匹目。半目で寝ている五匹目も難なくクリアした。
そして、そのまま歩いて向かい側の壁にたどり着く。音を出さずにタッチ。
帰路に着いた。遺伝子に刻み込まれた、身体能力が学習を始める。桜木自身は、それを無意識に感じていた。より繊細に、物音一つ立てずに、歩くことが自然にできるようになった。
再び
「やるな、桜木」
山羽もどうやら俺のことを認めてきたらしい。
「まぁ俺を舐めるなよって話だ」
「次は俺の番だな」
「なんだよ、山羽もやるのかよ」
「お前には、負けられねーんだよ」
山羽はそう言って俺と同じように、
だが誰も気づかなかった。桜木が復路で最後の
式神とは、山羽が言った通り、土地神である。村のあらゆるものに精通するため、先々まで神経を尖らせていなかければならなかった。
それが仇となった。
-山羽にはプライドがあった。山羽家は誰よりも人を守らなからばいけない。そう教えられてきたのだ。
あの時からそうだ。俺は山羽家の三男として次男と一緒に母上からお使いを頼まれてきた。
山羽家は住宅街に位置しており、周りには、一般の子供たちがよく遊んでいる。
山羽にはそれが羨ましかった。
「おーい。ボールこっちによこせよ〜」
近くに転がってきたボール。同い年ぐらいの、近所の子が声かけてくる。
山羽は黙ってそのボールを拾って差し出す。
「ありがとうな」
そう言って近所の子は、仲間の子がいる場所へと戻っていった。
思わず、自分もほんのちょっぴりだけ、仲間に入れてもらえた気がした。
「にいちゃん、僕もあの子達と遊びたいよ」
「あつし、なぜ彼らが平和に遊べているか知ってるか?」
「……? 知らない」
「それは、我々山羽家が影から世界を平和にしているからだ」
にいちゃんはニヤッと笑って言った。
結局、その時は近所の子たちと遊ぶことはできなかった。
だが、それから普通のしばらくして、父から呼び出された。父は山羽家の総帥で、いわば一番偉い。普段、どこをほっつき歩いているのか、あまり姿を見せない。一対一で喋ることはほとんどない。そんな父からの誘いに山羽は何事か気になって仕方がなかった。
「あつし、近所の子と友達になりたいか?」
思いがけない質問だった。なりたくない訳がない。
「当たり前だろ」
「そうか。なら、父さんが許可してやる。お前は普通の小学校に行け」
「本当か? やったー!」
「まぁ待て。その代わり、一つ契約を結ぶ」
「なんのことだ?」
「桜木悠斗。同じ時期に小学校に入っくる。特別な異能の可能性を秘めた男の子だ。彼は我々の保護観察対象だが、異能を知らずに育って欲しいという両親の願いもあり、後方監視ということになった」
父が見せてくらたら写真には、健気に笑う男の子が写っていた。
「この子は同い年なのか?」
「ああ、だから仲良くしながら監視も頼んだ。それと本人にバラしたらダメだ。とんでもないことになるからな。それさえ守れば、あとは友達を作ったり好きなことをして良い。よい学生生活を楽しめよ」
そう言ってと父は山羽の前でガッツポーズをして見せた。頑張ってこいという父なりのメッセージなのだろうと山羽は捉えた。
「お父さんありがとう。必ず守るよ。この桜木って子も、みんなの平和も。だから、普通の学校に行かせてくれてありがとう」
そうだ。桜木を守るのは、俺の役目だ。だから、俺が手本を見せてやる-
山羽は桜木と同じように、
背後で立ち上がる一匹の
「…! うそ…だろ?」
触れてないぞ。と言わんばかりの山羽の顔。
「ヤベッ」
俺には心当たりがあった。復路の時、確かに足裏にもふもふした感覚が来た瞬間があったのだ。
「グロロロロロ!」
五匹の
「ヌオオオオオオオオオオ!」
ドオオオオオン!
「嘘だろ、桜木⁉︎」
山羽が驚いた顔で俺を見る。
さすがの山羽でも俺の身体能力のヤバさに気づいたか。そりゃそうだ。両腕で五匹まとめて吹っ飛ばしたんだからな。
だが流石に重すぎたか。血まみれになった両腕がジンジンと痛む。
飛ばされた
「グロロロロロ!」
再び立ち上がって来た五匹を見て、俺は冷や汗をかいた。
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