第12話 筋肉☆大解放!
……ヒロイン、どうしよっか
---------------------------------------
結衣の眼前に広がるは、ブーメランパンツ一丁に目元だけ隠した仮面のマッチョマン二人。
その二人が白くて綺麗な歯をむき出しに爽やかな笑顔を浮かべて、助けてくれたのだ。
……絵面はなかなか酷いものだが。
「えっ、と。助けて、くれたんですか?」
「「当たり前じゃないか」」
マッチョマン二人こと《モストマスキュラーズ》は、まさか囮にされていたのがとても可愛くてスタイル抜群の女性だったと知り、極めて紳士的な振る舞いをする。
下心百二十パーセントである。
兄者が結衣の足元を見ると、彼女のアキレス腱に深くナイフが刺さっていた。
ゴブリンの物ではない、人間が使う得物だ。
弟者も兄者の視線に気が付いたのか、双子だからなのか同じ結論に辿り着く。
((さっき逃げてきた奴等の仕業、か))
結論が出た後、兄者は和哉に指示を出す。
「和哉、君は彼女の傍にいたまえ。私達が絶対君達を無事に地上に変えそう」
「わかった、頼んだ!」
「それともう一つ。そこに落ちているカメラも絶対に壊さないように確保して欲しい」
カメラにはテレビ局のロゴが印字されていた。
テレビダンジョン。
ダンジョン系コンテンツを売りにしているテレビなのだが、視聴者は残念ながらKA☆ZU☆YAに取られている為、ネット上ではあまり評判は良くない。
恐らく人気が出ている結衣をダシに使い、視聴率を稼ごうとしたのだろう。
彼女も相当運が悪い。
和哉は兄者の指示の意図を理解した。
和哉から見ても結衣の状態は、人による仕業だとわかった。
なら、何故彼女がこのような状態になったのか、カメラはしっかりと捉えている筈だ。
「了解だ。そっちは任せてくれ」
「うむ、頼りにしているぞ。さて、弟よ。暴れるぞ!」
「ああ、俺の筋肉パワーが今にも溢れ出しそうだぜ!!」
筋肉パワーという謎のワードが飛んできた。
和哉と結衣は首を傾げる。
兄者は爽やかな笑顔で前方にジャンプし、一気にゴブリンの集団に飛び込んでいく。
そして、集団の中心でサイドチェストを披露する。
「はぁぁぁぁっ、《
兄者がそう叫ぶ。
恐らく何かスキルを発動したようだが、見た目は何も変わっていない。
ゴブリン達も最初は彼の奇行に呆気に取られていたが、すぐ我に返り手に持っていた棍棒で殴りかかる。
だが、兄者の全身を複数匹のゴブリンで袋叩き状態にしたのだが、全ての棍棒が粉砕されてしまう!
兄者の筋肉が棍棒より固く、相手の武器を破壊してしまったのだ!
しかも傷一つ無く、何故か艶があるように見える。
これが兄者が所有しているスキルの一つ、《
《
しかも《
更に、ポージングが美しければ美しい程、敵の注意を引き付ける効果もあるのだ。
何故ゴブリン達が全員兄者に攻撃しているのか、それは《
ギャグみたいな存在は、スキルまでギャグであった。
ゴブリン達は負けじと兄者に飛び掛かり、全員で攻撃する。
だが悪戯に自身の得物が壊されるだけだった。
ゴブリン達の目が恐怖というより、「何だこの変な奴」というドン引きしたものとなっていた。
「今だ、弟よ!」
「おうさ、兄者!」
そして弟者もダブルバイセップスのポーズを取る。
弟者のチャームポイントである上腕二頭筋が盛り上がり、非常に美しいプロポーションを披露している。
すると、彼の腕と脚が光を帯びていく。
「さぁ行くぜ、《
兄者に気を取られているゴブリン達は、いつの間にか弟者に轢かれて肉体が四散する。
これが弟者のスキルの一つ、《
《
ポージングの美しさ・完成度によって攻撃力増加が上下するという、これまたユニーク中のユニーク。
通常人間が作った兵器や人間の肉体による直接攻撃では魔物を倒す事は不可能なのだが、スキルであれば殺す事が可能となる。
しかし、弟者の場合は効果がえげつない!
その太い腕と脚で薙ぐと、一振りで何匹もの魔物を屠る事が出来るのだ。
今弟者は、兄者を中心として両腕を左右に広げて自身を回転させ、兄者の周囲にいるゴブリンを腕で薙ぎ払い四散させていく。
さながら、兄者の中心を回るギロチンカッターのようだ。
「流石だ、弟よ! だが私も負けんぞ、兄の威厳というものを見せてやろう」
サイドチェストのポーズを取りながら、ひたすらゴブリン達に殴られている兄者の身体が発光していく。
兄者が持っている戦闘用スキルが、今解放される。
「Fuuuuu!! 《
兄者が渾身のモストマスキュラーを披露すると、彼の身体から神々しい光が放たれる。
まるで光の爆発だ。
《
威力はポージングの美しさ・完成度、そして受けた攻撃の強度が高ければ高い程増していく。
今回は美しさ・完成度は文句無しなのだが、所詮ゴブリンからの袋叩き程度の攻撃強度だと、このスキルは満足な威力が出ない。
しかし、ゴブリン達百匹程度なら、一瞬で屠れるだろう。
予想通り、光の爆発は一瞬でゴブリン達を消し去り、
この光景に和哉も結衣もただただ茫然としていた。
そしてライブ配信を視聴している視聴者達もコメント出来ず、チャットが止まるという異常事態が発生した。
当の兄者は全くの無傷。
あの程度の攻撃では、彼の鋼の筋肉には傷一つ負わせる事が出来ないのだろう。
そして激しく攻撃をしていた弟者も無傷。
二人共一切汗をかいておらず、涼しげな顔でポージングの練習をしていた。
「流石兄者のモストマスキュラー! あまりの美しさに俺も見惚れてしまったぜ!」
「そういう弟もダブルバイセップスは見事としか言いようがない! 私ではあのような素晴らしい上腕二頭筋は表現できないからな!」
「いやいや、兄者の胸筋だってまるで六法全書みたいな分厚さだったぜ!」
「いやいや、弟は上腕二頭筋にロードローラーでも取り付けているのではないか?」
「「ふっ、HAHAHAHAHAHA!!」」
互いに互いを褒め称え、最後には満足そうに高笑いする。
数分前まで
---------------------------------------
彰に憑依する魔素ちゃん「キレてる、キレてるよぉぉぉぉ! 最高よ!! ポージングの点数はまだ伸びしろがあるから、期待して90点!」
陽介に憑依する魔素ちゃん「何て重厚な重機を乗せてるの!? ポージングはまだ極められるわ。95点!」
以上、魔素ちゃんによるスキルの効果判定でした。
面白いと思ったらいいね、☆をよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます