第4話 イカれた筋肉双子、暑苦しく配信者デビュー!


 Yo!tubeに、一本の動画が配信された。

 再生時間は二分半と短いが、強烈なインパクトを残した。


 真っ暗な画面に急にスポットライトに照らされて、タキシードを着た一人の男が照らされた。

 この男の名前は《KA☆ZU☆YA》

 彼はダンジョン情報配信系Yo!tuberで、登録者数は一千万人いる超有名配信者だ。

 そんな彼が、スポットライトの下で丸椅子に足を組んで座っている。


「どうも、《KA☆ZU☆YA》です。皆さま、大変お待たせ致しました。ついに私は、探索者界隈を騒がせている二人組とコンタクトを取る事に成功し、彼等を配信者としてプロデュースする事が決定致しました」


 この発言の直後、《KA☆ZU☆YA》の背後に新たなスポットライトが二つ点灯する。

 そして、照らされる二つの人影。

 どうやらその人物はローブを羽織っているせいか、身体のラインなどが隠れている。

 しかし、巨大な体躯をしているというのが、何となく伝わってくる。


「ふふ、前置きはここまでとしましょう。それでは紹介しましょう!」


 左にいる人影がローブを脱ぎ捨てる。

 現れたのは、燃えるような赤髪に漆黒のブーメランパンツ、そして目を覆い隠した仮面をつけた筋肉モリモリマッチョマン!

 いや、その程度の言葉で片付けられない。

 きっとドーピングしたとしても届きようがない、まさにボディービルダーの極致と言っても良い程の肉体を持っている。

 初心者がやりがちなチキンレッグ――上半身ばかりを鍛えすぎて、下半身が鶏のようになってしまっている状態の事――でもなく、しっかりと下半身も鍛え上げられている。

 そして何より、胸筋の盛り上がり具合が素晴らしい!

 サイドチェストで更に盛り上がる胸筋は、ボディービルダーにとっては美しく艶やかに見えるだろう。

 極めつけが、目元は隠れているが爽やかな笑顔だ。

 素晴らしい、完璧だ。

 

「名前は兄者! チャームポイントはそのムキムキな胸筋! 役割ロール盾役タンクで、どんな攻撃も自慢の筋肉で受け止め、その太い腕から強烈なカウンターを見舞うのです!!」


 攻撃を受け止め殴る。

 ただ攻撃を受け止めるだけの盾役タンクではなく、しっかりダメージも与えられる盾役タンクなのだ。

 兄者は理想的な盾役タンクだろう。


 次に右の人影がローブを脱ぎ捨てる。

 海のような青髪に、兄者と同様に漆黒のブーメランパンツと仮面をつけた筋肉モリモリマッチョマン二号が現れた!

 だが、兄者と違う点は、両腕の筋肉の発達具合だろう。

 兄者は胸筋が素晴らしかったが、彼は腕の筋肉が何百年生きてきた大樹を思わせるかのような太さをしているのだ。

 サイド上腕三頭筋トライセップスの時の上腕三頭筋のが非常に素晴らしく、だからと言って兄者には負けるが胸の厚みも理想的である。

 また、脚の厚みはどうやら兄者より上のようで、あんなので蹴られたら骨折どころか内臓までずたぼろにされると思ってしまう程鍛え上げられている。

 そして流石は双子だろう、兄者と同様の爽やかな笑顔だ。

 ケチをつける所が見当たらない。


「名前は弟者! チャームポイントは上腕二頭筋! 役割ロール攻撃役アタッカーで、どんなに固い敵もその腕と脚から繰り出される攻撃で粉砕してしまうのです!!」


 剛腕、剛脚が敵をなぎ倒す。

 どんな固い敵であろうと構わず粉砕してしまう、完璧で究極の攻撃役アタッカー

 

「二人のパーティ名は《モストマスキュラーズ》!! 今まで都市伝説とまで言われていた彼等の全貌が、ついに彼等自身によって明らかになります!!」


《KA☆ZU☆YA》が力説している後ろでは、マッチョ二人が「Ah~~」だの「Oh~~」だの妙に艶めかしい声を出しながら、自慢の肉体をポージングで披露している。

 暑苦しい、非常に暑苦しい絵面である。

 超有名人である《KA☆ZU☆YA》よりも、圧倒的な存在感を放っていて《KA☆ZU☆YA》のモブ感が半端なく目立ってしまっている。


「これから二人は、どのような配信を見せてくれるのでしょうか? それでは『筋肉☆探索 ~やはり筋肉……!! 筋肉は全てを解決する……!!~』チャンネル、レディィィィィィっ、ゴォォォォォッ!!」


《KA☆ZU☆YA》はこの言葉を言い終えたと同時に拳を作って両手を挙げる。

 それに倣って兄者と弟者も両手を挙げる。

 マッチョマン二人に細いイケメンという何ともアンバランスな絵面のまま、ゆっくりとフェードアウトして動画は終了する。




 このあまりにもインパクトがありすぎる動画はSNS等で瞬く間に広がっていき、トレンド一位になる程の話題となった。

 そして登録者数はこの動画だけで十万人を超え、余裕で収益可能ラインにまで到達したのだった。


 

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