筋肉☆探索 ~やはり筋肉……!! 筋肉は全てを解決する……!!~
ふぁいぶ
第1話 デッカい筋肉をひっさげた双子探索者
西暦一九四六年。
日本に突如、全国各地で謎の洞窟が発生した。
当時の世論は「きっと地震によって出来た洞窟だろう」とスルーしていたが、その一年後である一九四七年に事態は大きく変わる。
何と、この洞窟から魑魅魍魎とも言える異形の者が地上に出てきたのだ。
ある者は緑色の皮膚をしており、鼻を摘まむ位の悪臭を放つ小学校高学年程度のサイズの人型。
ある者は鬼を連想させる程の真っ赤な皮膚に、二メートルを超す巨体の人型。
そして日本にはいる筈のない狼型や、頭が三つある大型の狼型、等々。
これらの化け物共は地上で平和に暮らしていた日本人を、ひたすらに殺していった。
政府も応戦したものの非常に旗色が悪く、化け物の討伐数より隊員の死者数の方が上回っていた。
特にアサルトライフル規模の銃弾の効き目が悪く、戦車の主砲等でようやく有効打となった程度だった。
そこで当時の政府は総力を挙げ、洞窟の探索をする事を決定した。
この洞窟でも化け物達が多数確認されており、洞窟で奴等を倒すと稀に剣等の武器を落とす事を発見した。
落とした武器はどうやら化け物達に特攻効果があるようで、銃弾の効果が悪かった化け物に対しても非常に有効だったのだ。
そして政府は、命懸けで洞窟内で落ちる武器をかき集め、地上に溢れかえった化け物達を掃討する事に成功した。
これを、
政府は各地で発生した洞窟は魔窟であるとし、魔窟に住まう化け物共を《魔窟に住む者》の意を省略して《魔物》と呼称。
当時は魔窟と言われていたが、コンピューターゲームが盛んになった頃から魔窟から《ダンジョン》という呼称に変化。
更に、ダンジョンにいる魔物が落とす《魔石》と呼ばれる、魔物達の心臓となる物体が発見され、研究に研究を重ねて魔石を動力源にする方法を発見する。
自国から採掘できる資源が乏しい日本において、魔石はまさに救世主であった。
そこから日本は経済的に急激に成長し、現在においては、電気と魔石を融合した家電製品や交通網が主流となる。
しかし魔石を採取するにも人員が圧倒的に足りなかった政府は、一つの案を出す。
それは、十五歳以上の一般人であれば、ダンジョンを探索できる制度を打ち立てた。
これを《探索者制度》という。
探索者はダンジョンを探索し、魔物を討伐したりダンジョンのマッピングを行うのが仕事だ。
主に収益はダンジョンのマッピング報酬と、魔石の買い取りである。
強い探索者は億万長者に成れ、弱い探索者は細々と生計を立てる、そんな弱肉強食の世界。
さて、現在西暦二〇三三年。
今でも探索者は大人気で、『なりたい職業ランキング』では十年連続で一位を飾っている。
同時に『子供になってほしくない職業ランキング』の方でも堂々の一位である。
今日も一攫千金を夢見て、老若男女がダンジョンへ命懸けの探索をしている。
そんな探索者の中で、ひと際異色の存在がいた。
「弟よ、今日の私の肉体はどうかね!!」
「キレてる、非常にキレてるよ、兄者!!」
魔物からの攻撃から身を守る為、ダンジョン産防具に身を固めるのが基本なのだが……。
この探索者は、あろうことかブーメランパンツのみでダンジョンを探索しているのだ。
彼等は双子の兄弟で、筋骨隆々という言葉では表現できない程の肉体をしていた。
とある目撃者は、
「二メートルを超す大型のオーガを気絶させ、それで筋肉トレーニングをしていた」
だの、
「ゴーレムの足を掴んで、まるで棍棒のように武器にして魔物をなぎ倒していた」
だの。
とにかく目撃者の頭が大丈夫なのか、と心配したくなるような噂話ばかりが出回っている。
しかし、事実だ。
もう一度言おう、事実だ。
その証拠に、マッスルポージングをしている二人の周囲には、元々魔物だった残骸である魔石が無数に転がっていた。
彼等は、「あっ、この広い空間でポーズの練習をしたくなった。だが魔物が邪魔だからさっさと蹴散らそう」と言って、二人だけで五分程度で魔物の群れ(約百匹程)を排除したのだ。
しかも素手だ。
「兄者、俺の筋肉はどうだい!?」
「Oh、何だその上腕二頭筋は!? 私を更に筋肉道の深淵へ
「Huuuuu! そういう兄者こそ、素晴らしい胸筋をしているじゃあないか! とってもエッチです!!」
「ふふ、私の筋肉に魅了されるのもわかるが、残念だ。私はノーマルだ」
お互いの肉体を披露して、互いを褒め合うこの
素性もわからず、名前も《兄者》と《弟者》としか名乗らない。
ただ明確にわかっている事が一つだけある。
彼等のパーティ名である。
彼等は、《モストマスキュラーズ》。
筋肉を愛し、筋肉を武器とし、筋肉を防具とするイカれた双子の兄弟。
この物語は、探索者界隈でしか有名でなかった二人が、ふとしたきっかけで世界を震撼させる存在になる。
そんな現代風英雄譚である。
「弟者よ、いざという時の為に、モストマスキュラーの練習をするぞ!!」
「わかったぜ兄者! しかし、今日の魔物達はパンプアップにもなりゃしなかったぜ」
「うむ。そろそろもっと下層へ行く頃かもしれんだ。一度でいいから、私はドラゴンと力比べをしてみたいぞ!」
「俺はギガンテスっていうオーガよりデカい奴をダンベル代わりにトレーニングしてみたいぜ!」
「おお、それも良いな! 夢はでっかく、大きく持つべきだ。私のこの胸筋のように!!」
「そうだな、俺の上腕二頭筋のようにな、HAHAHAHAHAHA!!」
今日も二人は、魔石をそっちのけでトレーニングに励むのだった。
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