兎天候短編集(解説付き)

兎天候

3.五感の嘘と、双依存

俺とお兄ちゃんは、カーテンのすぐ側で怖くなっちゃうほどに乱れている。深い息だけで二人の隙間が埋まる。

そこで俺は、お兄ちゃんに見透かされている想いを改めて伝える。大好きだと、それでも俺と一緒にいる事を諦めたいと言いたげな顔をされる。

こんな話を少し前に聞いた。世の中の全ては、五感しか知ることが出来ない。もしも自分が五感に騙されているとしたら?そんな話。お兄ちゃんはその時俺に言った。僕が君の存在を信じる為にも、あやふやじゃない誰かと幸せになってほしいと。

お兄ちゃんが俺のまともな幸せを願っているのは分かっている。いや、本当は分かってなんかいないのだと思う。存在証明方法を知らない、仲間外れにされてきた俺は、お兄ちゃんの幻になりたい。確かな色に染められたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る