旅路の果てに 2024/01/31

 長い旅であった。

 時間にして100年くらいか……

 随分と遠いところに来たなと感じる。


 東京をスタート地点として、俺たちは日本中から出て世界中を飛び回る。

 最初こそ息子と一緒にいたが、すぐに別れた。

 一緒にいても俺の目的には邪魔なだけ。

 『一緒に行こう』なんて駄々を言われなくてホッとしたものだ。


 旅の目的はお金を稼ぐこと。

 それ以外にこの旅の意味なんてない。

 金は天下の回りもの。

 Money is all.。


 俺は目的のため、行く先々で物件を買い漁った。

 買うのは利益を生み出す物件だ。

 もちろん安い買い物ではなく、出費のせいで懐事情は厳しくなる。

 だがこれらは金の卵を産む鶏なのだ。

 今は苦しくても、後々自分が金持ちになるための布石。

 将来を思えば何ともない。


 そうやって俺は順調に資産を増やしていた。

 だが常に順風満帆であったわけではない。


 世界中が不況になって出費が重なり、泣く泣く物件を手放したこともある。

 無差別なテロリストに金をばらまかれたこともある。

 妨害が重なり、まったく知らない辺境に行かされたこともある。


 山あり谷あり、まるで人生のよう。

 だがそれでも最終的に俺は億万長者となった。

 この手にはたくさんのお金がある!


 最後の年の三月。

 ここが旅路の果て。

 これを越えればで自分の勝ちだ。


「じゃあ、『持ち金ゼロカード』使うね」

「は?」


 息子がこのタイミングで最悪のカードを切る。

 すると俺の現金が0に……。

 これでは……これでは!


 そして、最後の総決算。

 答え合わせは……

「ばかな」

 画面に映し出されたのは『2位』の文字。


 思わず息子の方を振り返る。

 息子の顔は悪意に満ちた笑みを浮かべていた。


「お父さんも甘いね。お金はちゃんと使わないと。

 金は天下の回りもの、だよ」

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