ヨークシャーテリアの花屋第2話

@peacetohanage

第2話

今日も店主のヨークシャーテリアがせっせと仕事をしていると、店先に狼の奥さんが姿を現しました。

「こんにちは、ヨークシャーテリアさん!少しお花を見させて下さいな?」

「勿論ですとも!奥さん、どんなお花をお探しかな?」

ヨークシャーテリアは店先へ向かって、狼の奥さんは店内に向かって…二人はちょうどアザレアの辺りで鉢合わせをしました。

「いいえ、贈り物では無いのですが、家のテーブルに飾りたいのです」

そこでふとヨークシャーテリアはある噂話を思い出しました。

狼の旦那さんは大のお酒好きで、酒屋のワインを一人で買い占めてしまうそうなのです。

先日、リスの旦那さんがそうやって愚痴も溢していました。

「どうでしょう?このアザレアは」

ヨークシャーテリアは側のアザレアを指差します。

「まぁ!何て綺麗な花弁でしょう?こんなに大きなお花、テーブルを華やかにしてくれそうだわ」

「お気に召した様ですね?実はアザレアの花言葉は禁酒なのです」

咄嗟に狼の奥さんは、上品に口元を隠します。

「ま、まぁ!何故…それをご存知ですの?お恥ずかしいわ。うちの旦那ったら、毎晩ワインを何本も空にしてしまうのです」

ヨークシャーテリアは胸を張ると、一度咳払いをしました。

「アザレアは乾燥した土を好みます。つまりドライ、ですから禁酒と言う花言葉が有るのです」

狼の奥さんは口元を隠したまま、ふふふと笑います。

「じゃあ、もう迷う必要は有りませんわね?今日はこのアザレアにします」

「それはどうも、どうも。お買い上げ、ありがとうございます」


こうして狼の奥さんがほくほくと鉢を抱えてスキップをしながら立ち去ってしまうと、ヨークシャーテリアは再びせっせと仕事に戻りました。

「また一つ、新しいアザレアを注文しておかなければね?」

そうせっせと一人言を呟きながら。


おわり

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