（ヒマつぶし）ウサギとネズミの会話

第8話 公約

ネズミ「やあ、ウサギくん」

ウサギ「やあ、ネズミくん。今日は何（なん）のお話かな？」

ネズミ「知ってるかい。近（ちか）いうちにこの町（まち）の議員選挙（ぎいんせんきょ）があるってこと」

ウサギ「知ってるよ。選挙（せんきょ）カーが時々（ときどき）この辺（へん）に来（き）て大（おお）きい声（こえ）でなんか言ってるのを聞（き）いたからね」

ネズミ「ウサギくん。凄（すご）いじゃないか。それを聞（き）いて選挙（せんきょ）があるってことが分（わ）かったんだね。大（たい）したもんだ」

ウサギ「・・・・」

ネズミ「じゃあ、町（まち）の人は誰（だれ）に投票（とうひょう）するかをどうやって決（き）めているかも知ってるよね」

ウサギ「それは、候補者（こうほしゃ）が友達（ともだち）だったり知（し）り合（あ）いだったりじゃないのかな」

ネズミ「やっぱりウサギくんだね」

ウサギ「それ、どういう意味（いみ）？」

ネズミ「君はノー天気（てんき）だってことだよ」

ウサギ「じゃあ、当然（とうぜん）ネズミくんは知っているってことだよね」

ネズミ「そんなの、当（あ）たり前（まえ）だろ」

ウサギ「それ、答（こた）えてよ」

ネズミ「教（おし）えてください、だろ。そう頼（たの）まれれば言ってやるけど」

ウサギ「仕方（しかた）ない。教（おし）えてください」

ネズミ「素直（すなお）でよろしい」

ウサギ「・・・・（今日（きょう）は・・・が二度目（にどめ）だ！）」

ネズミ「候補者（こうほしゃ）は公約（こうやく）を言って、それに賛同（さんどう）する人がこの候補者（こうほしゃ）ならと考（かん）えて投票（とうひょう）するんだよ」

ウサギ「へー、そうなんだ。てっきり友達（ともだち）とかばっかりだと思（おも）ってた」

ネズミ「何（なん）でそんなこと思（おも）っていたんだい」

ウサギ「だって小学生も学級委員（がっきゅういいん）の選挙（せんきょ）があるよね。太郎君（たろうくん）が話していたのを聞（き）いたことがある。その選挙（せんきょ）では友達（ともだち）の多（おお）い子が委員（いいん）に選（えら）ばれるって言ってた」

ネズミ「そりゃ、小学校と町（まち）とでは世界（せかい）が違（ちが）うんだよ。町（まち）の選挙（せんきょ）には多（おお）くのお金（かね）がかかっているんだ」

ウサギ「そうなんだ。じゃあ、お金（かね）のない人は立候補（りっこうほ）できないってことだね？」

ネズミ「おやまあ、鋭（するど）いこと言うね」

ウサギ「それほどでもないさ」

ネズミ「謙遜（けんそん）するなよ。珍（めずら）しく褒（ほ）められて照（て）れくさいのかな」

ウサギ「ところで、さっき言ってた公約（こうやく）って何（なに）さ？」

ネズミ「君は公約（こうやく）を知らなくって当然（とうぜん）だよね。それは当選（とうせん）したらこれをします。あれもします。その約束事（やくそくごと）を公約（こうやく）って言うんだ」

ウサギ「へー、やっぱりネズミくんは凄（すご）いもの知りだねー。感心（かんしん）するよ」

ネズミ「君よりはね。それにしても俺（おれ）は今悩（いまなや）んでいるんだよ。多（おお）くの候補者（こうほしゃ）は公約（こうやく）を言うと必（かなら）ずその後（あと）に『このことは必（かなら）ず前向（まえむ）きに検討（けんとう）して参（まい）ります』って言っているんだよ」

ウサギ「検討（けんとう）してくれるんならいいじゃない」

ネズミ「それが癖（くせ）もんなんだ」

ウサギ「どうして？」

ネズミ「政治家（せいじか）の前向（まえむ）きに検討（けんとう）って言葉（ことば）は検討（けんとう）はするけど実行（じっこう）はしないって意味（いみ）らしいんだ。選挙（せんきょ）に当選（とうせん）したら政治家（せいじか）になるんだからね」

ウサギ「それじゃ、公約（こうやく）でもなんでもないじゃん」

ネズミ「良（よ）かった。理解（りかい）できたようだね。

さて誰（だれ）にしようかな。なかなか決（き）められないな。

ぼちぼち考（かんが）えながら帰（かえ）るとしよう」

ウサギ「珍（めずら）しくおとなしく帰（かえ）った。

あれ！それにしてもネズミくんには選挙権（せんきょけん）があるのかな。ある訳（わけ）ないよな。なんでそんなに悩（なや）むんだろ。変（へん）なの。

でも投票（とうひょう）ができなくてもいろいろ考（かん）えるのは悪（わる）いことじゃないよな。ちょっとネズミくんを見直（みなお）してもいいかな！？」