第6話 小春日和

ネズミ「やあウサギくん」


ウサギ「やあネズミくん。今日はやけにむずかしそうなかおをしてるね」


ネズミ「ホー、分かるんかい。俺の気持きもちが」


ウサギ「君の表情ひょうじょうを見ればそれくらいのことは分かるよ」


ネズミ「ウサギくんも成長せいちょうしたね。だれかのおかげかな?」


ウサギ「・・・・」


ネズミ「ウサギくんは小春日和こはるびよりって言葉ことばを知ってるかい?」


ウサギ「馬鹿ばかにしないでよ。勿論知もちろんしってるさ」


ネズミ「じゃあ、その言葉ことば季節きせつはいつごろだかも当然知とうぜんしってるよね」


ウサギ「春先はるさきあたたかい日のことじゃないの」


ネズミ「ブブー! やっぱりそう思ってたんだね」


ウサギ「それってちがうの?」


ネズミ「そう、ちがうんだな」


ウサギ「へー、そうなんだ。じゃあ、いつごろのことなの?」


ネズミ「さむくなったころから年がけるまえまでのようなんだ」


ウサギ「ようなんだって、物知ものしりのネズミくんもはっきり知らないんだね」


ネズミ「だからなやんでるのさ。年のころなのに何で春って言葉が入っているか。それが大きな問題もんだいなんだ」


ウサギ「これって、そんなにおおげさになやむことなのかね」


ネズミ「だからウサギくんはのんびりだって言うんだよ。日本語にほんごは本当にむずかしいんだ。ウサギくんはもっとかんがえたほうがいいよ」


ウサギ「ネズミくんは学者がくしゃの先生にでもなれそうだね」


ネズミ「学識がくしき向上こうじょう目指めざすものは、つねなやみととなわせなんだ」


ウサギ「なんだか本当ほんとうの先生に見えてきた」


ネズミ「オッホン!」


ウサギ「益々偉ますますえらそう。でも何で小春日和こはるびよりなやはじめたの?」


ネズミ「とおりがかりの親子おやこの話しをいちゃったんだよ」


ウサギ「どんな話?」


ネズミ「お父さんが今日は『小春日和こはるびより』だって言ったんだ。そしたら子供こどもが今は春じゃないよって言いかえして、それでお父さんがさっきのことを言ったんだ」


ウサギ「何故なぜってその理由りゆうかなかったの?」


ネズミ「聞いてりゃこんなになやんだりしないさ」


ウサギ「そりゃそうだ」


ネズミ「ウサギくんに話しても無駄むだだったな。かえるとするか」


ウサギ「そういえば太郎君たろうくんのお友達ともだちたし小春こはるちゃんっていう女の子がいたな。春に生まれたんじゃないけど春のようにあたたかくておだやかな人にそだってしいとのねがいをめて親が名付なづけたとか言っていたような気がする。小春こはるにはそんな意味いみがあるんじゃないかな。もしかしてぼくほうがネズミくんより物知ものしりだったりして。なんちゃって!」


ネズミ「今の言葉ことばこえたぞ!そんなことあるはずないだろうが。大馬鹿者おおばかものが!」


ウサギ「こえちゃったの。ごめんね。ネズミくんを小馬鹿こばかにしたわけじゃないんだよ。あっ!これにもくんだ」



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