(ヒマつぶし)ウサギとネズミの会話

やまのでん ようふひと

第1話 ケージの内外

ネズミ「やあ、ウサギくん。」


ウサギ「やあ。ネズミくん。今日はなんの話しをしに来たんだい。」


ネズミ「今日は君にとって、とっても重要じゅうような話なんだ。」


ウサギ「いつものことだけど、君のそのかたぼくにとっていやな話になるような気がするんだよね。」


ネズミ「そう言うなよ。大事だいじなことなんだから。」


ウサギ「・・・・」


ネズミ「もしなんだけどさ、もしウサギくんがわれるとしたらだれわれたい?」


ウサギ「何だい、突拍子とっぴょうしもないその質問しつもんは。やっぱりいやな話になった。」


ネズミ「この問題もんだいはウサギくんの将来しょうらいにとって、とっても大事なことだと思うんだけどね。」


ウサギ「だから、何でぼくわれなくちゃいけないのさ。」


ネズミ「君はかごの中のウサギだろ。

だから何時いつだれかにわれることになるかもれない。

そのときウサギくんが未練みれんのこさないように覚悟かくごというか、われる相手あいてめておいたほうがいいって話さ。」



ウサギ「ぼく安全あんぜんさ。このケージはここの小学校が管理かんりしているんだからね。」


ネズミ「それがくせもんなんだな。」


ウサギ「何でだよ。」


ネズミ「この前出先まえでさき偶然見ぐうぜんみたテレビでちか将来世界的しょうらいせかいてき食糧不足しょくりょうぶそく時代じだいがやってるって言ってたんだ。

だからかんがえてもみなよ。

君はかごの中にいるんだよ。

だから君を食料しょくりょうにするのは一番手いちばんてばやいってことさ。」


ウサギ「その出先でさきってどこのことさ?」

ネズミ「あぁ、物探ものさがしであっちこっちのうちにお邪魔じゃまするからね。そのうちの一軒いっけんうちなんだけどさ。」


ウサギ「ふ~ん。で、それって本当ほんとうなのかい?」


ネズミ「話は間違まちがいないさ。テレビが言ってたんだ。

テレビはうそなんかつかないよ。」


ウサギ「もしそれが本当ほんとうだったらやばいよね。

でも何でだれわれるかをここでかんがえなくちゃいけないの。」


ネズミ「きらいいなやつわれるのはかなしいじゃん。

本当ほんとうはさ、ライオンにわれるんならしあわせだったりするんだろうけど。

そうすりゃ自分じぶんがライオンの一部いちぶになれるようなものだからね。

これはウサギくんのためにかんがえたことなんだよ。」


ウサギ「ライオンかぁ。

そうかもれないけど、ここにはライオンはいないからね。

どうしようかなぁ。」


ネズミ「ウサギくん。何時いつものとどけてくれる子供こどもはどうなんだい。

いい子なんかい。」


ウサギ「とってもいい子さ。太郎たろうくんって言うんだ。

ぼくをいつも可愛かわいがってくれる。

学校が休みの日だってくさ一杯取いっぱいとってきてくれるんだ。」


ネズミ「じゃあ、その太郎たろうくんにめなよ。

それがいい。」

ウサギ「でもどうやってそのことを太郎たろうくんにつたえたらいいんだい。その方法ほうほうからないな。」


ネズミ「それは簡単かんたんなんだけどさ・・」


ウサギ「もったいぶらないでおしええてくれよ。」


ネズミ「仕方しかたないなぁ。いいかい、よくおぼえておくんだよ。

太郎くんが君のところにやって来たら、その子のまえんだふりをすればいいんだ。

そうすればきっと太郎くんは君を食べてくれる。」


ウサギ「そんなに上手うまくくいくかなぁ。」


ネズミ「大丈夫だいじょうぶ保証ほしょうするよ。」


ウサギ「ありがとう。やっぱりネズミくんは知恵者ちえしゃだね。」


ネズミ「まぁね。君のやくったならそれでいいんだよ。」


ウサギ「ネズミくん、あぶない! ねこだ。げないと!」


ネズミ「おおー!アブねぇ。おれわれちまう。」


ウサギ「ネズミくん、大丈夫だいじょうぶだったかな。

ちゃんとれただろうか。

それにしてもネズミくん。僕の心配しんぱいより自分じぶんのこと心配しんぱいしたほうがよさそうだよね。

ケージの外は魅力的みりょくてきだとおもうけど、いつも危険きけん一杯いっぱいだ。

ぼくには内と外のどっちがいいか、決心けっしんがつかないな。」




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