第七十八話 工房に向けて出発です

 翌朝、僕はいつもの訓練を屋敷の庭で行って、朝食を食べたらいよいよアマード子爵領の冒険者ギルドに向かいます。


「一晩泊めてもらい、ありがとうございます」

「全然良いのよ。また、いつでも遊びに来てね」

「遊びに来なかったら、私からレオ君の所に遊びに行っちゃうよ」


 皆さん忙しいみたいで、グレイスさんとデイジーさんが見送りをしてくれました。

 デイジーさんがお茶目に僕に話しかけて来ましたが、たぶん遊びに行かないと本当に宿まで押しかけてきそうな雰囲気です。

 因みに僕は頑張って屋敷から冒険者ギルドまで行くと伝えたら、とても分かりやすい地図を書いてくれました。

 というか、屋敷から冒険者ギルドまで一直線なんですね。

 逆に、これで迷子になったら凄いかもしれないよ。

 僕はグレイスさんとデイジーさんに手を振りながら、屋敷を後にしました。


 とことことこ。


 僕は、街の風景をキョロキョロと眺めながら歩いています。

 昨日は馬車に乗っていた上に緊張をしていたから、まともに街の風景を見ていないんだよね。

 街はとっても活気に溢れていて、商店では朝から威勢の良い声が響いていました。

 セルカークの街よりも元気がある雰囲気ですね。

 そんな街の通りを三十分程歩くと、目的地の冒険者ギルドに到着です。

 セルカークの街よりは一回り建物が小さいけど、冒険者がいっぱいで活気に溢れているのはアマード子爵領の冒険者ギルドでも同じですね。

 僕はそんな冒険者ギルドの建物の中を、受付に向かって歩いていきます。


「お、見慣れない小さな坊主だな。これから冒険者登録するのか?」

「おはようございます。僕は、もう冒険者登録してあります。これから依頼を受けに行くんです」

「ははは、そうかそうか。頑張れよ」


 受付の列に僕の後ろに並んでいた厳つい顔をした冒険者が、ニコニコしながら僕に話しかけてきました。

 この街の冒険者は豪快な人が多いけど、何だか良い人も多いみたいだね。

 そんな事を思っていたら、僕の順番になりました。

 僕は、よいしょと椅子によじ登りました。


「宜しくお願いします」

「はい、冒険者カードを確認しました。工房から迎えの人がまだ来ていないので、受付の側にいて下さいね」


 受付のお姉さんにカードを返却して貰って、僕は暫くの間受付の側で辺りを見回していました。

 この冒険者ギルドには、宿がない分食堂がとっても大きいです。

 鉱山関係での依頼が多いって聞いたから、力仕事でお腹が空くのかな?

 今度僕も食堂でご飯を食べてみよう。

 そんな事を思っていたら、僕の所に年配の男性がやってきました。


「君がレオ君かな?」

「はい、レオです」

「良かった。俺が工房まで案内するぞ」


 年配の男性が僕の事を確認すると、僕の頭を撫でながら話し始めました。


「工房はここから歩いて十分だ。荷物は大丈夫か?」

「はい、今ある物だけです」

「よし、じゃあ早速行くぞ」


 僕は年配の男性の案内で、目的地の工房に向かって行きます。

 商店街とは別の、工房が立ち並んでいるエリアにあるそうです。


「魔法使いがこの街に来てくれて、本当に助かった。希少金属の加工が滞るのは、この街だけでなく国にとっても損害だからな」

「僕も皆の役に立てるように、一生懸命頑張ります!」

「ははは、それは頼もしいな。でも、頑張りすぎない程度にな」


 年配の男性は笑いながら僕の頭を撫でてくれたけど、ごつごつしていて職人の手って感じでした。

 この手で、色々な物を作っているんだね。


「さあ、工房に着いたぞ」


 僕は、平屋建ての建物の前に到着しました。

 建物の中からは、カンカンと金属を叩く音が聞こえてきます。

 年配の男性と共に、僕は工房の奥に進んで行きます。

 工房の中はとても広くて、多くの職人さんが働いていました。

 全員が汗をかきながら、一生懸命に道具や剣とかを作っていました。

 そして、工房の奥にある大きな物を見てビックリしました。


「うわあ、とっても大きいですね」

「これが、金属を溶かしてインゴットにする為の炉だ。こんな大きさだけど、魔導具でもあるんだぞ」


 レンガ作りの大きな炉が、どーんと構えていました。

 こんなに大きいのに魔導具だなんて、本当に凄いね。

 炉の周りにも沢山の人がいて、金属を炉に入れたり出来上がったインゴットを確認したりしていました。

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