第七十三話 大きな屋敷に到着です
からからから。
馬車はアマード子爵領の領都の防壁の門に、無事に到着しました。
おや?
馬車が身分チェックで並んでいる人の列を通り過ぎて、何故か一番前までやってきちゃったよ。
「先代様、長旅お疲れ様でございます」
「うむ」
そしてサイオンさんが守備隊の隊員に一言声をかけたら、馬車は何事もなかったかの様に門を通過しちゃったよ。
えっ、大丈夫なのかな?
セルカークの街では、僕も毎回門を通る度にチェックしていたよ。
「サイオンさん、メアリーさん。何もチェックしないで門を通過しちゃったけど、大丈夫ですか?」
「レオはしっかりとしているな。何も問題はないぞ」
「ええ、気にしなくて大丈夫だから安心してね」
サイオンさんとメアリーさんが心配するなと僕の頭をポンポンと撫でてきたけど、僕はちょっと不安になっていました。
そんな不安の中で、僕達を乗せた馬車は進んでいきます。
からからから。
「お家が沢山立ち並んでいるエリアに入りましたね」
「この辺からが住宅街だ。儂の屋敷はこの街道の先だ」
今、サイオンさんがこの先にある屋敷が自宅って言わなかった?
この街道の先にある屋敷って、あの庭もとても広い豪華な屋敷の事ですか?
まさかですよね?
と思っていたら、馬車はその屋敷に向かって行きます。
「先代様、お帰りなさいませ」
そして大きな屋敷を守っていた門兵も、あっさりと門を開けて馬車を通過させていきました。
この大きな屋敷が、サイオンさんとメアリーさんの自宅で間違いないみたいです。
となると、サイオンさんとメアリーさんって一体何者なのだろうか?
そんな事を思っているうちに、馬車が屋敷の玄関に到着しました。
僕達は馬車を降りたのですが、僕は改めて見る庭の広さと屋敷の大きさに圧倒されて声も出ません。
ガチャ。
そして重厚な玄関のドアが開くと、これまた豪華な室内が広がっていました。
と、ここにとても綺麗なドレスを着た二人の女性がこちらに歩いてきました。
「お義父様、お義母様、お帰りなさいませ」
「お爺様、お婆様、お帰りなさい」
二人の女性の挨拶からすると、サイオンさんとメアリーさんの子どもと孫みたいですね。
子どもと思われる女性は茶色っぽい髪を腰の辺りまで伸ばしていて、とってもスタイル抜群です。
孫っぽい女性は薄い茶色の髪を肩くらいまで伸ばしていて、とても優しそうな表情でした。
すると、ここで孫の女性がサイオンさんの側にいる僕の存在に気が付きました。
「あら、お爺様、お婆様、そちらの子どもは?」
「おお、そうじゃ。紹介を忘れておったわ。この子はレオと言って、あの有名な小さな魔法使いだ」
「旦那様が体調を崩して宿の前でうずくまっていた所に颯爽と現れて、あっという間に治療してくれたのよ。本当に凄腕の魔法使いなのよ」
サイオンさんとメアリーさんが僕が村で行った事をニコニコしながら説明すると、孫の女性が目をキラキラと輝かせながら僕の事を見てきました。
「わあ、この子が有名な小さな魔法使いなんですね。今まで噂でしか聞いたことがなかったですけど、本当に小さい子どもなんですね」
孫の女性は僕の事を興味津々で見つめているけど、敵意が全くないので僕も安心しています。
「レオ、息子の嫁のグレイスと孫のデイジーだ」
「初めまして、レオです」
「レオ君初めまして。お義父様を助けてくれてありがとうね」
「デイジーです。本当に凄い魔法使いなんですね」
グレイスさんとデイジーさんは、ニコニコしながら僕の頭を撫でてくれました。
ここで、メアリーさんがグレイスさんに話しかけました。
「グレイス、レオ君を昼食に誘ったのよ。レオ君の昼食を手配してくれるかしら?」
「はい、勿論子どもサイズで準備しますわ」
グレイスさんもニコリとしながら、僕の昼食の手配をしてくれると言っていました。
一方で、サイオンさんが周りをきょろきょろと見回しながら、デイジーさんに話しかけました。
「デイジー、ウィリアムとジョセフはどこにいるのだ?」
「冒険者ギルドのギルドマスターと教会の司祭様がお見えになっていて、お父様とお兄様が応接室で対応しております」
「ふむ、例の件か。丁度タイミングが良かったな」
デイジーさんのお父さんとお兄さんが、アマード子爵領のギルドマスターと司祭さんと話をしているんだね。
サイオンさんも知っている内容らしいけど、一体どんな話なのかな?
そんな事を思っていたら、サイオンさんが僕の手を握りました。
「儂はレオ君と一緒に応接室に向かう。例の件なら、レオ君が適任じゃろう。昼食の準備を進めておいてくれ」
え、えっとサイオンさん?
僕は全く話が見えないのですが、例の件って一体何ですか?
事情が分からない僕の手を引きながら、サイオンさんはとある部屋に向かって行きました。
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