第七話 守備部隊の到着
僕は気絶してしまったのでどうなったかは覚えていなかったのですが、実は僕が気絶してからそれ程時間を置かずに状況が一気に動いていました。
ぱっかぱっかぱっかぱっか。
「こっちから声が聞こえたぞ」
「何だ、この焦げ臭い臭いは」
「死体が転がっているぞ」
騎士服を着て簡易的な鎧を装備した騎馬の一団が、馬車が止まっている街道脇に集まってきたのだ。
一同は、現場の悲惨な状況を目の当たりにしてかなり驚いていた。
そして、騎馬の一団が倒れて体が動かない人物を見てびっくりしていた。
「た、隊長。この緑色の短髪の男は、バラス盗賊一家のトップじゃないですか」
「おお、確かに手配書にそっくりだな。それに、体は動かせない様だが会話はできそうだぞ」
隊員の話を聞いた隊長が、体が全く動かない緑色の短髪の男の側にどっかりとしゃがみ込んだ。
隊長は改めて周囲を見回したが、生きているが倒れている五人は手配書に載っている容貌と全く一緒だった。
そして、街道の木の側で倒れている子どもの側には、女性の隊員が走って向かった。
隊長は、緑色の短髪の男にフランクに話しかけた。
「よお、天下のバラス盗賊一家なのに一体どうしたんだよ。全滅じゃないか」
「ああ、全くだよ。あのガキにやられたぞ。久々の大商いだったのにな」
緑色の短髪の男も全てを諦めたのか、隊長と呼ばれた男に淡々と話し始めた。
隊長も緑色の短髪の男の話に付き合いながら、周りの状況を冷静に確認していた。
焼け焦げた死体が二体で、他に死体が二体。
殺しの手口は、手配書に載っていたバラス盗賊一家のものと同一だった。
すると、倒れていた子どもの元に向かっていた女性隊員が隊長に向かって叫んできた。
「隊長。この子生きていますが、初めて魔法を使った時に見られる熱を出しています」
「そうか。じゃあ、治療してやれ」
「はい、分かりました」
隊長は子どもの元にいる女性隊員に指示を出すと、再び緑色の短髪の男と話し始めた。
「なあ、あの坊主の魔法は凄かったか?」
「ああ、凄かったぞ。うちの魔法使いよりも良い素質を持っている。うちのアホがわざとガキを追い詰めて遊んでいたから、手痛いしっぺ返しをくらったんだよ」
「まさに窮鼠猫を嚙む、ってヤツだな」
「そうだな。あのガキをスカウトすれば、俺らももっと発展しただろうな」
「ははは、そりゃちげえねえな」
隊長は緑色の短髪の男の話に同意していた。
いくら不意打ちをくらったとはいえ、まだ幼い子どもが大の大人を魔法でぶっ飛ばしたんだ。
どんな組織であれ、よだれが止まらない程の逸材だろう。
うちだって、子どもは隊員にできないという規定がなければスカウトしたい逸材だ。
そんな事を思っていた隊長の元に、別の隊員が話しかけてきた。
「隊長、死体を全てシーツに包みました。あと、その男以外は拘束しました」
「わかった。あの馬車が動けば、一気に全員運べるな。ちょっと見てこい」
「はっ」
隊長は隊員に指示を出しながら、自身も縄を取り出した。
「よっと、お前さんも拘束させてもらうぞ」
「お好きにどうぞ。どうせ全く動けないからな」
隊長は縄を手に持ち、緑色の短髪の男を拘束し始めた。
これから忙しくなるぞと、気を引き締めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます