ミルティーと魔法のスプーン
なつきしずる
ミルティーと魔法のスプーン
わたしの名前はミルティー。
魔法使いの女の子。
魔法のスプーンで大好きなおかしを、
いっぱい。
いっぱい。
だしちゃうの。
しくしく。
しくしく。
どこかでだれかが泣いています。
しくしく。
しくしく。
お空でお月さまが泣いています。
ミルティーちゃんはフワフワ浮かぶマシュマロの雲にのって、泣いているお月さまに会いにいきました。
「こんばんは。お月さま。わたしは魔法使いのミルティー。お月さまはどうして泣いているの?」
ミルティーちゃんはお月さまにたずねました。
お月さまは泣きながら答えました。
「どうしてぼくが泣いているかって? それはね、おなかがペコペコで悲しいからだよ」
ぐうぐう。
ぐうぐう。
お月さまのぺったんこなおなかから、
ぐうぐう。
ぐうぐう。
大きな音がなっています。
「かわいそうなお月さま」
ミルティーちゃんも悲しくなってきました。
「そうだ。わたしがお月さまをおなかいっぱいにしてあげる」
ミルティーちゃんは魔法のスプーンをとりだしました。
ミルティーちゃんは魔法のスプーンにキスをします。
チュッ。
魔法のスプーンが大きくなりました。
ミルティーちゃんは、
クルクル。
クルクル。
魔法のスプーンをまわしながら呪文を唱えました。
「ミルティー。
ミルティー。
あまくてとろける。
ミルティー。
ミルティー。
おいしいおかしとすてきな夢を、
ミルティー。
ミルティー。
お願いかなえて魔法のスプーン」
ぽわわわわわん!
星のようなコンペイトウが夜空にたくさんきらめきました。
「お月さま。どうぞ、めしあがれ」
ミルティーちゃんはコンペイトウを魔法のスプーンにすくって、
「お月さま。あーん」
お月さまはお口を大きくあけて、
「いただきまーす」
コンペイトウをパクリ。
「おいしい」
今度は黄色いコンペイトウをパクリ。
「おいしい」
白いコンペイトウをパクリ。
ピンクのコンペイトウをパクリ。
お月さまのおなかが、
どんどん。
どんどん。
ふくらんでいきます。
「もう、おなかいっぱい。ごちそうさま」
ぺったんこだったお月さまがまんまるお月さまになりました。
「ミルティーちゃん。ありがとう。ミルティーちゃんのおかげで、もう悲しくないよ。これで暗い夜道も明るく照らすことができるし、眠っている子供たちをやさしく見守ることができるよ」
お月さまがお礼を言いました。
「どういたしまして。お月さま」
ミルティーちゃんもうれしそう。
「でも、食べすぎには注意だよ」
ミルティーちゃんはお月さまの大きなおなかを見て言いました。
「そうだね。虫歯にならないように歯みがきもきちんとしないとね」
お月さまはニッと笑って言いました。
わたしの名前はミルティー。
魔法使いの女の子。
魔法のスプーンにキスをして、みんなにおいしいおかしとすてきな夢をとどけるの。
ミルティーと魔法のスプーン なつきしずる @natukishizuru
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