小説に専念したいので仕事辞めます!(前編)

 どうも、熊ノ翁です。

 本日はこの、物書きならば一度は考えるであろうアイデアについて語っていきます。


「仕事辞めれば書く時間いっぱい作れるじゃん! やるっきゃないっしょ!」

 この一見夢と希望に満ち溢れたステキなアイデアなんですが。


 正直これ、熊も考えました!

 ええ、ええ、それはもう考えましたとも!

 つーか物書きやってる人、全員ちょっとは考えた事あるっしょ!?

 小説書いてて「あー楽しいなー。これが金になって生活できたらなー」って、考えないっつったら嘘になるでしょうもん!


 熊ですか?

 もちろん考えますよ!

 この熊エッセイが何かの手違いで書籍化コミカライズ化アニメ化されて、思った事を気の向くままに好き放題書き殴るだけで大金が転がってくるような生活とか超憧れますし!

 まあ、実際のライターさん方は、好きに書くことなんてまずできずに血を吐くような思いで日々文章紡いでるんでしょうけども。

 そこはとりあえずアマチュアの特権で見ないふりしておいて!


 そんな毎日が夢見心地な無限列車生活できるってんならそりゃあしたいですよ!

 だから「仕事辞めて人生全てを創作活動に極振りしていっちょ一攫千金狙ってみるか!?」という考えも、気持ちの上では実に理解できます!

 出来るのです!

 だからこそ、これは声を大にして言いたい!

「やめとけ」と!


「んだとぉ!? 腐れおっさん風情が未来に向かって挑戦しようとする若人に、何夢を壊すような事を言ってやがんだ!」とお怒りになる気持ちもわかります!

 が、これ、前提条件をそもそもはき違えている方が結構いらっしゃるんじゃないかと思うんすよ。

 若かりし頃の熊もそうでしたが「新人賞取ったり書籍化したら、その気になれば作家として専業でやっていけるもんなんでしょ」っていう誤解。

 この誤解を意外とされてる方がいるんじゃねえかなーと、物書きさんのツイート見てて思ったんですわ。


「俺は作家を目指すから仕事辞めるぜ!」とか考えてるそこのアナタ!

 違うんです!

 作家になっても売れなきゃ人は生活できないんです!

 そして今の時代は、文学全盛だった昔と違い、小説はそこまで羽振りの良いコンテンツではないんです!


 実際問題としてどの位売れなきゃならんかというとですね。

 一人暮らしをするのに必要な年収は、300万は無いとキツいと言われているわけですが、それを印税で稼ごうとなると文庫本一冊の印税を70円として、年間約4万3千部ほど売らなければならないわけなんですよ。

 今のご時世、初版が1万部切る事も少なくないわけで。

 そんな中で4万3千部をコンスタントに売るとなると年最低4冊以上は出さなきゃならんのですよね。

 そして、そんな4冊も5冊も年間通して本を出せる位人気のある作家って、全作家の内一体何%なのかというともうマジに限られてくるわけです。

 書籍なんて、そんなポンポン出させてもらえませんからね。

 それで稼げるお金が年収300万円です。


 んで、この年収300万って別にそんないい稼ぎってわけでもなくて。

 関東の東京にアクセスできるところに住んだ場合、結構カツカツの生活になる額です。

 あと日本人の平均年収が423万円なので、それと比較してみても労力に見合うとはとても言えない額なんですよ。

 普通にサラリーマンやってる方が儲けとしては全然マシですし、そもそも安定してます。


 仮にプロ作家になる事が出来て、年間4冊書かせてもらえる機会を得られたとしても、そんなに余裕のある生活が出来るわけでもなく、そもそも次にまた書かせてもらえる機会が得られるかどうかもわからないわけで。

 専業でやるにゃあ、とにかくリスクが大きすぎるんですよね。


「じゃあ、大手の新人賞で受賞すりゃあ良いんだろ!?」とか考える方もいるかもしれませんが、現実には芥川賞作家さんや直木賞作家さんですら仕事をやめず兼業で書かれている方が多いわけで。


 もちろん「無理だ」とは言いません。

 現に、デビュー作から多くの人に愛され、あらゆるメディアで作品が展開されて華々しく活躍されてる作家さんも中にはいらっしゃいます。

 ですが、現実のリスクを考えると、一部の成功者のみを見て自身の身の振り方を決めるのは、賢い選択であるとは言えないのもまた確かでしょう。

 物書きは物語を作り、読者さんに夢を語る事が役目なわけですが、自分が夢に呑まれてしまっては本末転倒です。


 物書きとしての夢を叶えるためにも、今一度自分の身を置く現状はしっかりと把握しとくのが良いかもですね。


小説に専念したいので仕事辞めます!(前編)……END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る