第2話

ヒロタカは、どうしたら良いのかと思う。

 そう思った。

 何にも役に立たない男だと思ったが、そこにA市の図書館司書の日吉という20代の女性が、みんなにこう言った。

 「誰か、名前を書くことを手伝ってくれる人はいませんか?」

 と言った。

 ヒロタカは、作家だから、字を書くのは得意だった。

「はい」

 と言って、ヒロタカは、そのまま、受付のところへ行って、字を書いた。

 今のご時世、スマホで、自分の漢字を書くことができない人が多いのだ。中には、こんな美人が、名前を書くことができないとヒロタカは、思った。

 日吉は、ヒロタカに、こう言った。

「ありがとうございます」

「いえ」

「助かっています」

 と言った。

 …

 本当は、東京からのテレビ番組が、地震の番組になっている。

 キャスターは、頑張って報道している。

 しかし、近所のコンビニで食べ物を盗む事件が発生をした。

 そして、お笑い番組が、なくなった。

 あれだけ、みんなは、お笑い番組を観ていたが、今は、そんな気分ではなかった。

 …

 そんな時だった。

 誰かが、怒号をあげて

「おい、何か面白いことはないのか」

 と言った。

 すると、

 ヒロタカは、その時、「みんなで、歌いませんか?」と言った。

「じゃあ、お前、歌ってみろや」と誰かが、怒った。

 図書館司書の日吉は、厳しい顔で観ていた。

 悲しそうにも思った。

 ヒロタカは、歌った。

「~私は、今、どこにあるのと~」

 と歌い始めた。

 いきものがかり『YELL』を歌い始めた。

 その時、「まっすぐな~」と歌った時、つられて、一人の中学生の女の子も歌い始めた。涙を流している人が出た。

 そして、A市の公民館は、一時的に、ヒロタカを観た。

 みんなも、少し、歌った。

 盛り上がった。

 本当は、この3市の地震で、悲しいはずなのに。

 最後は、拍手が出た。

 パチパチパチパチと。

 A市の市会議員も、そして、A市の図書館司書の日吉も涙を流しながら、拍手を送った。

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