花びら拾い

音崎 琳

花びら拾い

知り合いがずいぶん前に住んでいた街でゆうがたすれ違うひと


押し入れで待っていて蚊取り線香 螺旋たどって夏が来るまで


海色を九月の街にひるがえし在庫処分で夏五割引き


もしかしてまるいケーキを食べるのは一緒に食べるためだったのか


見なくてもありかのわかる傷口に触れないようにまわりをなぞる


慇懃な命令後ろ指をさす 逆らう自由従う自由


王様は隣の枡へさみしいが洩れ出す穴はゆびで塞いで


手紙来た? 昨日送ったあのデータ、ラブレターだと思うけど、どう?


伝えたいことと遠慮にはさまれて解凍できなくなった紙片


目が覚める朝ごとにまた花が咲く歌にしかならないくらい好き


旅先の一昨日の君焼きつけてあわや一生泣くとこだった


水晶が揺るぎないまでそだったら、そのときついに手紙を書こう


見なかった夢で見ていた輝きを灯したのかも、もしかして、今


それぞれに選ばなかつた花があり選んだ花をあなたと生ける


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花びら拾い 音崎 琳 @otosakilin

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