幕間4ノ1 キュールの尽力 前

【キュールside】


 今日はクレジアントちゃんと一緒にクライト君のお家に来ました。べ、別に、その………やましい気持ちとかは、全然なくて!私は帰るところも特に無いし、それにクライト君は優しいから私達が付いていっても良いって言ってくれました。


「どうぞこちらへ」

「うわぁ………やっぱり凄いです………」

「そうだね~!これで別邸だからね!」

「そうなんだよね………絶対もっと小さく出来るはずなのに………」


 クライトが頭を抱えています。どうしてなのでしょうか?


「クライトはこんな素敵なお屋敷を小さくしたいんですか?」

「うーん、微妙」

「それは何でなの?」

「いやぁ。まぁ色々あるんだよね………」


 あんまり良い事じゃなさそうです。


「何か、悩み事があったらいつでも私に言ってくださいね?」

「ボクも聞くよ」

「うん。二人ともありがとう」

「お坊ちゃま。良いパートナーの方と結ばれましたね」

「うん。本当にありがたいことだよ」


 そう言ってもらえてとっても嬉しいです。私からしてみたら、クライトの方が私にとってはもったい無い位良い、か、彼氏なのですけど………


「それじゃあ、僕はお風呂に入ったら眠るよ。ごめんね………あ、そうそう。二人とも、女性用のお風呂も仕切りがあるはずだから入っても良いよ。ただ僕も壁を挟んで隣に居るから嫌だったら、ちょっと待ってから入ってもらえると嬉しいな」


 そう言ってクライト君は風呂に向かっていきました。疲れていそうでしたが、大丈夫でしょうか………?


「お二人は階段を上がってすぐの2つのお部屋をお使いください。どうぞ、鍵をお渡ししておきます。綺麗にしてあるとはあると思いますが、万が一状態が悪い場合お申し付け下さればすぐに他の部屋に変えることも可能です」

「あ、ありがとうございます…!」

「ありがとうございます!」


 う、うわぁ。それにしても凄いなぁ。私みたいな平民の親無し子が、こんなところに来れるなんて………べ、勉強頑張って学園に入って良かったなぁ………


 いいえ、それ以上にクライトが私みたいな取り柄のない平民でも告白したら優しく受け入れてくれた事に感謝するべきです………!!!本当に、クライトはお人よしが過ぎます。そのおかげで私もクライトのパートナーになれたのですけれど。


「もし、浴室に向かわれるようでしたら使用人にお申し付けください。あ、それから今は確か浴室に使用人のクララが居るはずです。あまり人と一緒の時間に入りたくない場合は今お申し付け下さればまだ浴室を利用していない使用人に言っておきますので」

「あ、えと、大丈夫です。ありがとうございます」

「ボクも大丈夫です!」

「クレジアントちゃん、どうする?」


 私はクレジアントちゃんにお風呂に今入ってしまうか聞いてみました。私は直ぐに入ってしまいたいのですけど、せっかく二人で来たのに私一人で入るのも酷いと思うのでクレジアントちゃんが嫌だったら我慢することにします。


「じゃあ入っちゃおう。あ、ナイパーさん。その、今浴室に居るって言ってた使用人の方はお風呂一人の方が良い人ですか?」

「うーん、私めは使用人のもの達と性別が違うのでその手の話を聞くことはありませんが………彼女の性格からするに、多分一人じゃなくても良いと思いますよ」

「ありがとうございます!キュール、行こう!」

「は、はい!な、ナイパーさん、ありがとうございます!」

「いえいえ。ごゆっくり」


 今の会話を聞いていたのか近くに居た使用人の方が私たちの荷物を持って、部屋まで運んでいってくれる。なんて優しい人たちなんでしょうか………クライトの優しさはこの人たちから来てるのかな?それとも、クライトにこの人たちも影響されてこういう優しい人たちばっかりなのかな?多分、どっちもですよね。


 私達が脱衣所に行くと、そこには使用人の方らしき人が居ました。ナイパーさんは確かクララさんって言ってましたっけ。


「こ、こんばんは」

「あら?どなたですか?」

「あ、あ」


 そうでした、私達が来たことをまだクララさんは知らないんですよね………恥ずかしさでいっぱいになってしまいます。


「ボク達は今日からクライトと一緒に学園の長期休暇が終わるまで泊まらせてもらう者達です!一応クライトの、か、彼女です」


 クレジアントちゃんはやっぱり凄いです。私は初対面の人と話すのがあんまり得意じゃないんですけど、クレジアントちゃんはグイグイいけてていいなって思います。


「あら、そうでしたか!こんな格好で申し訳ありませんね。というか、クライトお坊ちゃまも一人の男の子になったのですね………何だか感慨深いです!少し前までばぶばぶ~って言ってましたのに」

「え~!見てみたいな」

「そ、そうですね」


 赤ちゃんのクライトですか………そんなの可愛いに決まっているじゃないですか!クララさんの事が少し羨ましくなってしまいます。


「それはそれはもう可愛らしかったですよ!それなのに、読んでる本は大分難しいというか厳つい本なのでちょっと怖かったですけれどね。その上に6歳位から自分で戦いの練習をし始めましてね………先生が付いていたんですけれど、途中で先生から『私では教えきれない位強い』って言われまして。本当に、クライトお坊ちゃまは凄いんですよ!クライトお坊ちゃまの使用人で良かったです」


 やっぱりクライトは小さい頃から努力を重ねていたのですね………あれだけ強いのにも納得です。そんな事を思っていると、クレジアントちゃんがいきなりとんでもない事を言い始めました。


「あの、唐突で申し訳ないんですけど。ボクこの家の事とか手伝ったりしたいんです。ダメですか?」

「え、く、クレジアントちゃん?」


 なんでそんなに大胆に言えるのですか………!!!わ、私だってちょっと憧れてはいましたけれど………


「なんか、クララさんのお話聞いてたら私も使用人と言いますか。給仕やってみたいなって思ったので。だめですか?」

「うーん………私一人じゃ分かりかねますから、ナイパーさんに聞いておきますね!お二人はお風呂でゆっくりしていって下さい!では、私はこれで失礼します」


 そう言ってクララさんはメイド服を着ると、スタスタと脱衣所から出ていきます。脱衣所には私とクレジアントちゃんだけになりました。


「えへへ、キュール!行こ」

「あ、えっ、ちょっと!」


 もうすでに裸になっていたクレジアントちゃんに無理やり服を脱がされて浴場に連行されてしまいました。いざこういう状況になってみると恥ずかしいです………


「お風呂では寝かさないよ!」

「お、お風呂で寝たら溺れちゃいますよ………」

「あはは、確かに!それでさ………」


 チャポン


 そう塀を跨いだところから音が聞こえました。多分クライトだと思います、クライト君がお風呂から上がって………あ、うぅ………駄目、駄目です………その気は在りませんでしたけれど、間違えて破廉恥な想像してしまいました………反省です。


「クライトが上がったみたいだね!」

「そ、そうですね」

「丁度よかった!私キュールちゃんの事色々と気になるんだよね~!」

「え、な、なんか嫌な予感………です」


 この後、ちょっと人には聞かせることが出来ないような事を話しました………クレジアントちゃんの事色々知れたけれど、クレジアントちゃんやっぱり私と違ってグイグイすぎますよぉ………

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