第36話 最後の試合
「………」
「………!」
先に動いたのは、僕。
ガキィッ!という激しい音を響かせて、ストライク先輩が受け止めたと思ったら反撃をされる。僕もそれを受け止めて更に反撃をする。が、ストライク先輩の反撃が重すぎる。めり込むはずのない固く舗装された地面に足が食い込んでいる様だ。
「………っ」
「───────」
「クライト選手とストライク選手!!! まずはと言ったところでしょうか!!! 剣と剣を交わし合っています!!!」
これ以上剣を交わしてもジリ貧になるだけなので一度地面を強く蹴って大きく退く。だけど、僕の退きに合わせてストライク先輩は地を蹴り、剛剣が僕の喉元に伸びて来る。僕はそれを剣の腹で受け止めて、そのままストライク先輩の突きのエネルギーに任せて弾き飛ばされるように後退する。
「おーっとクライト選手が吹っ飛ばされたァァアアア!!!!! いや、違います!!! 敢えて弾き飛ばされて距離を取ったようです!!! 流石決勝戦という事もあってか、戦闘時の『
「へぇ、凄い」
ストライク先輩が称賛の言葉を僕に送ってくれるけれど、正直に言うと僕に軽口を叩ける余裕は無い。だって、多分だけれどストライク先輩は本気で僕の喉元を突き刺そうとしていた。本気でだ。
僕の脳裏には確実に死の一文字がよぎった。まるでそう、クレジアントの時と同じように。
もし、もしだ。可能性には過ぎないけれど、
「………
「なんだ?」
「おおっとクライト選手!!! 今日数少ない試合で使用した魔法
僕は地形の変更と土魔法の高位魔法である
普通はこの魔法は魔素消費が激しくて使えないけれど、今日の今日まで僕は体内の魔素最大量を増やし続けてきたから大丈夫。それにクレジアントとの試合で大幅に使ったけれど、今回の試合に臨む前に携帯魔力貯蔵パックで魔素は供給した。
「
「これは………」
「これは………!!!!! 見る見るうちに様々な武器が自動で武器が生成されて行きます!!!!!」
うん、いい感じ。僕の
だったら、これならどうか。
「………なっ!?魔法武器だと!!!」
「スタグリアンの仇分です」
「なんてことでしょう!!!!! あのスタグリアン選手の魔法剣の応用でしょうか!!! クライト選手が土で生成された武器に魔法を付与して魔法武器を量産しています!!!!!」
自動生成され続ける土武器に魔法を付与する。そう、スタグリアンの試合を聞いた時にパッと閃いたんだ。ストライク先輩は魔法剣を嫌がっていた。だったら、それを強引にも大量に押し付けたら勝てるんじゃないかなって。
「対応し難いな………」
僕はその上で土の塔を足元から生やして高いところまで行き、魔法の
「ストライク選手!!!!! 絶体絶命のピンチです!!!!! やはり今世紀一番のダークホース、クライト選手の猛攻には耐えることが出来ないのでしょうか!!!!!」
スパァンッ!!!
「え?」
「えッ!!!??? な、なんですか今の!!!!!」
目を疑った。
ストライク先輩は魔法武器を避けつつ、剣の衝撃波で火球を斬っていた。どんな所から魔法が来ても魔法を使わずに剣だけで対処している。そんなことが人間には可能なのか、とかそんなことを考えさせることすらない。だって、事実何度も何度もそうしているのだから。
「嘘でしょ………」
スパァンッ!!!
「なぁぁぁぁああああ!!!!! 何という事でしょうか!!!!! 魔法を斬っている!!!!! ただの剣で魔法を斬っているぞォォォォオオオ!!!!!」
嘘じゃない。
ただ………何で魔法を使わないんだ?いや違う、使えないのかもしれない。クレジアントと同じくらいの強さを感じたから麻痺していたけれど、この世界で魔法と武術の両方を使える人はそこまで多くない。多分3割位だ。
その上で、戦闘中に魔法と武術を両立できるのは1割位だ。Sランク冒険者は殆ど両方使えるけれど、ストライク先輩は剣だけでもそこまで登れる実力があったのだろう。
「化け物だな………」
「流石平均試合時間が10秒の男、ストライク選手!!!!! クライト選手お得意の魔法の弾幕戦法はあまり効果が無いようです!!!!! さぁどうするクライト選手!!!!!」
でも一つだけ分かった。ストライク先輩は魔法だけしかまだ斬っていない。そう。魔法武器からはずっと逃げているだけだ。新しく生成されようとしている魔法の付与されていない土武器は破壊しているけれど魔法が付与されている土武器には手が出ていない。つまり、魔法武器で攻撃を仕掛ければいいのだ。
「………仕方ない」
「おっと!!!!! クライト選手がストライク選手の頭上に高く跳びました!!!!!」
僕はジャンプして、それに合わせるように足元で魔法で小さな爆発を起こす。もちろん足に魔素障壁は張っている。でも、魔素障壁はダメージは消せてもエネルギーは消せない。つまり、爆発による運動エネルギーだけを貰う事ができるのだ。
爆発によって高く飛び上がったボクは重力魔法を使いながら急降下する。でも、そんなことしたら僕の体が負荷に耐えられない。だから剣に魔法を付与して、剣の周囲にだけ重力魔法をかける。目指すはストライク先輩の頭部。
剣が、落ちていく。
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