第7話 友達だから
【クライトside】
はぁ、昨日は魔法陣基礎も中々頭に入ってこなかった。今日から始まる僕のBクラス生活。クレジアントはこの前見た時に序列が67位だったから、Bクラスにいるはずだ。どうしようか…いや、考えていても仕方が無い。ここは無言キャラで行こう。
覚悟を決めて、Bクラスに入る。そこにはニーナ先生が待っていた。
「はーい、それじゃあ今日のBクラス移動者を紹介しまーす!まずは…クライト君!」
「あ、えーと、よろしくお願いします」
「この子はCクラスのナヴァール先生によると滅茶苦茶強いらしいから油断しないように!」
「ちょっ…!!!」
なんてこと言うんですか!変に注目浴びるの嫌なんですけど!そもそも恥ずかしいし、何よりクレジアントが黙っていないよ!クレジアントの性格は優しいけれど戦闘狂で時に冷酷。わざわざクレジアントの目に付くような紹介止め………
「それじゃあ次、ジュン君!Aクラスから惜しくもBクラスに落ちてきた子だ。逆にAクラスに上がったのはクレジアント君!皆今度あったら称えてやれ!」
「…ジュンです。よろしくお願いします」
あ、クレジアントはAクラスに行ったのか。良かった………本当に。あと、これだけは言っておきたいことがある。別に僕はクレジアントと仲良くしたくない訳じゃない。仲良くなれずにそのまま殺されないか心配しているだけだ。
なんなら、クレジアントと友達になれるなら友達になりたいとさえ思っている。でも
「それともう一人!彼女は実力で上がってきた子だ!ユーリア君!」
ユーリアか、ユーリアの挙動は本来の
「クライト君!私頑張ってBクラスに上がれたよ!これもクライト君が心の中で応援してくれたからだよね!」
「え、あーうん。えっと…おめでとう!」
いやまてよ、確かに昨日Bクラスの人に挑みに行ってくるとか言っていたような気もする。僕の頭の中がクレジアントとどう接しようかそのことでいっぱい過ぎて、あまり話を聞いていなかったのかもしれない。反省だな、これは。
というか、凄いな。流石は勇者クレジアントの本来の右腕的存在、魔法に長けていて確か6歳で母親が殺されている。その復讐を果たすためにクレジアントに協力してもらうんだったよな………という事は、今そのポジション僕になってる?
「うわぁ…」
「クライト君?どうしたの、体調でも悪い?」
「あぁ、いや大丈夫」
「…チッ、イチャイチャすんなよ」
3人並んでいて、右端に僕、真ん中にジュン君、左端にユーリアだったからジュン君に悪態をつかれてしまった。これに関しては申し訳ない、でもイチャイチャは絶対にしてなかったよね?今何かそういう雰囲気あった?
「それじゃ、さっさと席に座ってくれ!因みにだが、各序列がクライト君101位、ジュン君67位、ユーリア君98位となっているからな!決闘を挑む際はしっかりと覚えておけよ、学校の規約違反をしないためにな!それじゃ授業始めるぞー!」
ニーナ先生は相変わらずテンションが高いな。僕はクラスを見回して、彼がいることに気が付く。それはスタグリアン、レイシル公爵家の次男で入学式で隣だった男。顔は整っていて、品性がある。
「隣、座っていい?」
「あ、クライト。またあったね」
「私もクライト君の隣に座ります!」
丁度3人席という事もあり、ユーリアも僕の隣に座ってくる。奇しくも、入学式と同じ席順になった。現実は小説より奇なりってね、まあこんなことは『奇』に入らないかもしれないけど
「あれ、いつの間にそんな可愛らしい彼女さんできてたの?流石プレイボーイ」
「おい、からかってるだろ。第一ユーリアは彼女じゃ…」
「そうなんです!クライト君、私が告白したら『良いんじゃない?』って言ってくれたんですよ!って、えぇええ!スタグリアン・アンサラーレイシル様!これはご無礼を」
「いや、そんな気にしないでくれ。学園内では身分制度は関係が無い。それにしても、はは、クライトらしいね」
いや………え?ちょっと待って、今日情報量多すぎない?いつの間にかユーリアが僕の彼女になってる、え?いやおかしいよね。あ、頭パンクするかも
「ちょっと、釈明させ…」
「あ、そうだ。今正式に友達になってくれるかい?生憎、俺はあんまり友達と呼べる人がBクラスには少なくてね」
「いやもちろんもちろん、それより…」
出鼻をくじかれたけど、もう一度釈明を試みる
「ユーリアさんも、友達になってくれるかな?」
「え、は、はい!もちろんです」
「敬語はいらないよ、俺もユーリアって呼ぶからさ」
「あ、じゃあ私もスタグリアン君って呼ぶね」
完全に僕の話を聞いてくれる体勢に入っていない。いや、というよりも先にユーリアにどういう事か聞かないと…
「それじゃあ授業始めるぞー!私語は基本的に慎めー、それじゃあよろしく!」
結局どういうことか聞けずに授業が始まってしまった。授業が始まると、結構難しくてそれどころじゃなくなってしまった。
☆★☆★☆
授業が終わり、休み時間になる。ここでBクラスの他の生徒が話しかけてきた。えーと、この人は誰だっけ?
「クライト君だっけ?お前強いらしいじゃん、ちょっと決闘しない?友好の証に」
「え、嫌ですけど」
この人どういう神経してるんだ、初対面の相手に『決闘をしないか?』って言いながら迫ってくるのは絶対に友達になりたいって思ってないやつだろ。というか、
「えーケチだなぁ。あ、もしかしてビビってるの?」
「あーそうですね。そう思います」
こういう奴は基本スルーするに限る。基本的に関わりたくないやつに友好的に接するのは勘違いさせるからね、だったら関わりたくないですよアピールを最初にしていた方がお互いにとって得だ。
「チッ、なんだよ。弱い奴らどうしでつるんどけよ」
「はぁ?クライト君は弱くないけど、あなたこそそんなみみっちい性格どうにかした方が良いよ」
「はぁ?じゃあ弱くないってところ証明して見せろよ、別にお前でもいいぞ。スタグリアンさんは…別に」
あー、こいつ思い出した。侯爵家のギルバードじゃないか?自己紹介しないから忘れてたけど、弱い奴を煽って虐めるのだが大好きな奴で、クレジアント入学当初に序列が自分よりも低いからってバカにしたけど、秒でやられた奴だ。
つまり、僕と同じ噛ませ犬キャラだ。そう思うとなんだか可哀そうになってくるな。まぁこいつは死なないだけましだとは思うけど、僕は本来死ぬからね。
精神年齢の低い奴で、公爵家みたいな自分よりも家格が上の人には歯向かわない。たとえそれが実力的に劣っていたとしてもね。現に子爵家の僕と伯爵家のユーリアに喧嘩を売っている。
「俺が戦うよ」
「…スタグリアン、やめときなよ」
「僕の学園初めての友達を馬鹿するのは少し許せないんだ、勝てないとは思うけど全力で戦うさ。僕は君たちの友達だからね。」
スタグリアンの碧い瞳は固く輝いていた。これは、僕が止めたって聞かないな。一度好きに戦ってもらおうか。彼が頑張る姿を応援しておこう。
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