面倒な奴の告白を断る口実にたまたま通りかかった俺を彼氏とか言った美少女とは仲良くできません
本町かまくら
第1話 はい?
学校という世界は、実に狭いなとこの頃思う。
昨日起こったプチ事件が次の日には全生徒に知れ渡っていることもしばしば。
例えば、理科教師のまる爺が分かりやすすぎるカツラを新調したときなんか、その日の放課後にはまる爺の授業がない後輩がその話をしていたり。
はたまた大事件ともなれば、それはそれは一瞬にして全校生徒周知の事実となる。
それを深く、そして身を持って実感している俺は、本当に学校は狭いなと切実に思う。
さて。
それは事件などの出来事に限らず、もちろん人にも適用される。
「ねぇねぇ! 小谷鳥さんがまた告白されてるんだって!」
「しかも今回はあの坂東先輩なんだって!」
「ヤバいじゃん! 早く見に行こ!」
俺の横をぱーっと女子生徒三人が駆け抜けていく。
それも俺と同じ進行方向に、であり少し嫌な予感がした。
そのまま歩いていくと、嫌な予感は見事に的中。
校舎に囲まれた中庭に人だかりが見えた。
マジか。俺、そこ通りたいんだけど。
「よく来てくれたな、小谷鳥」
「早く済ませてくれる? 私、暇じゃないの」
「はっ! つれないこと言うなよ」
大衆の視線を一手に集める二人の男女。
男の方は知らないが、女子生徒の方は知っていた。
何故なら我が校で一番と言っていいほどに有名人だったから。
――
整った顔立ちに、彼女のアイコンともいえる黒髪ロング。
すらりとしたスタイルを持つ抜群の容姿はまさに絶世の美女。
加えて頭もよく、定期考査では常に一位の座に君臨している。
そんな浮世離れした彼女だが、性格もかなり特徴的で常に他者を寄せ付けようとせず、近づけば蜂のようにブスリ。
はっきりとした物言いにオブラートは存在せず、毒舌だと解釈する人が多い。
そんな小谷鳥だが、やはりその容姿から異性にかなり人気がありこうして告白されることも多いとか。
ま、顔のいい奴には性格に難があるもんだよな。偏見か。もしくは願望か。
「でよ、お前に話があるんだが」
「お前って言うのやめてくれる? 私がまるであなたの下みたいじゃない」
「そういうなよ」
なかなかの毒っぷりだが、男の方は屈するどころか不敵な笑みを浮かべている。
なんだこいつ。ドMか?
「で、話なんだが、小谷鳥。俺の女になれよ」
うわ。
現代でそんなこと言う人初めて見た。
イタさに気づいていない様子のいかつい男。
依然としてニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべている。
「はぁ、こういう人ほんとにいるのね。すごいわ、昔の不良漫画を見てる気分」
全く持って同感だ。
「返事だけど、もちろん答えは――NOよ。金輪際かかわらないで」
当然だろう。
そもそも初めから印象は悪そうだったし、告白があれじゃあな。
しかも小谷鳥は告白を断り続けてるらしいし、鼻から誰かと付き合うつもりなんてないんだろう。
これにて終了、かと思いきや、
「お、おいおい? 何言ってんだよ。俺とお前はお似合いなんだから答えはYESに決まってんだろ」
粘る男。
どこまでもイタいな、こいつは。
「NO」
「いや、絶対に付き合った方がいいぜ? 毎日楽しくしてやるからさ!」
「あなたの手を借りるほど人生に絶望してないわ」
「なんだと⁉」
なおも抵抗する男。
観衆は完全に白けていて、興味の熱が冷めている。
小谷鳥の反応も断固って感じだし、この告白は終わったも同然だろう。
このまま足止めを食らっててもしょうがない。
よし、通るか。
「だ、第一なんで断るんだよ! 断る理由なんてないだろ!」
「もう帰ってくれる? これ以上はおすすめしないわ」
「ちっ! いいだろうが! 減るもんじゃねぇんだからよ!」
男はそれでも引き下がらない。
さすがの小谷鳥も呆れたようにため息をつく。
俺は生徒たちがばらけ始めたのに乗じて、しれーっと二人の横を通ろうとした。
「なぁ、おい! 聞いてんのかって!」
男が小谷鳥に詰め寄る。
――その瞬間。
「うえ?」
ガッ、と俺の腕を掴まれ、気づけば男の前に立たされていた。
「この人、私の彼氏だから。だから無理」
…………へ?
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