俺の仕事は異世界から現代社会に帰ってきた勇者を殺すことだ【フルダイブVRに50年。目覚めた俺は最強だと思っていたけど、50年後に再会した娘の方が強かった話】
第39話 勇者リワーク!⑨【怪獣大戦争を見る】
第39話 勇者リワーク!⑨【怪獣大戦争を見る】
――確かに手ごたえはあった。
だたナイフは致命傷を狙っていた場所を刺した。
「痛ってえええぇ!!」
首を狙ってナイフを突き刺そうとしていたが、剣干はとっさに腕を上げ、ナイフは上腕を貫通した。
剣干は痛みにのたうち回っている……こいつ、こんなに痛がって怪我したことがないのか?
油断を誘おうとしているのかもしれない。
「ロジャー」
『了解』
ロジャーと阿吽の呼吸で会話する。
痛がり、地面を転がっている剣干の頭部にライフルの弾丸が撃ち込まれた。
剣干の動きが止まり、地面に血だまりが広がっていく。
え?もう終わり?帰還者グループのリーダーだって言ってたし、もっとしぶといのかと思ってたのだけど、所詮は子供だってことか?
「セイカ、剣干の生体確認は?」
『死亡しているわ。だけど剣干は帰還してからまだ一度も死んでないの……だから』
「一度は生き返る可能性があるという事か」
『あとあまりよくない報告があるの。MJSが全機破損、次から音葉を使った攻撃が来るわよ』
良いところまで追いつめたが、ここらが引き際だろうか。戦力も分散してしまっているし。
海老根を追ったアキも捕獲したと通信を聞いていたし、成果としては十分だ。
ただMJSは壊れたと聞いて気になっている事があるので、左陶の事が気になったので確認の為、移動した。
「……セイカ、左陶が居なくなってる」
『魔法が使えるようになったから地中に潜ったのね。いいわ、左陶に関してはもう底が見えている。SAVだけで処分できるようになるわ』
「それとセイカ、戦力が分散しているからここらが限界だ、撤退したい」
『ええ、成果としては十分よ。剣干が生き返る可能性があるので、その前に撤退してください』
「了解。聞いたか?全員撤退だ。富子としまこはどうなった?」
搬送部隊に海老根の引き渡し待ちだと聞いていたが。
『現在搬送部隊のヘリを目視で確認しています。引き渡し次第撤退します』
「わかった。集合場所の設定はセイカに任せるから指示に従って行動してくれ」
『了解』
さて……特にここで俺がすることはない、撤収しようとした時だった。
『お父さん!後ろ!』
後ろとは剣干が居た方向だ。セイカの悲鳴のような声に反応してガードしたまま振り返った。
振り返り、目で見えたのは一瞬だった。
角が二本生えた兜の黒い全身鎧を着たアルデ○ラン……は黄○聖衣だから違うな。
あれはそう、ゴルベ○ザだ。
振り返った時には俺に向かって切りかかっている最中で、もう避けることも間に合わなかった。
咄嗟に両腕を上げてガードしたが、恐らく俺は真っ二つに斬られるだろう。
そう覚悟していたのだが、俺の腕に剣が当たった瞬間、黒い鎧めがけて俺の腕から爆風が飛び出した。
「ええーーっ!?」
思わず声が出た!なんだこれは!?戦闘用スーツにこんな機能があるなんて知らないぞ!?
黒い鎧が後ろにひるんだところに横からものすごい勢い…というか目に負えない速度で何かがブチ当たった。
「うおぁー!!」
叫び声でアキと分かった。
アキの攻撃は、今まで見た事のないほどの威力だった。
一瞬で黒い鎧は二つ向こうくらいの山に飛ばされ、アキもその鎧を追って走る?飛ぶ?表現が出てこないほどの速度で俺の前からいなくなった。
「うわああああ??」
目の前で起こったアキが黒い鎧に出した攻撃の衝撃で、俺の体は吹き飛ばされた。
『お父さん!どうなったの!?無事なの!?』
俺はすぐに起き上がり、一瞬の出来事にあっけにとられていたが打たれた腕を確認する。
腕はついていた。切れてない…ただ骨が折れていた。
「ああ、生きてるぞ。腕は折れてしまったが問題ない」
『……はぁ、アキが居なかったらどうなっていた事か』
セイカに心配をかけてしまったようだ。だけどあれはどうしようもない。
アキが吹っ飛ばした黒い鎧との戦闘が山向こうで行われているのだろう。
さっきからビルの建設現場のような甲高(かんだが)くて鈍い音と、不自然なほど同じ場所に雷が何回も落ちている。
もう普通の人間が踏み入れない、地獄のような場所だ。
改めて、あんなのと戦っている、普通の人間の俺達は相当イカれている。
「そういえばさっき黒い鎧から攻撃を受けた時、俺のスーツから爆風が飛び出したけど、すごいな。俺に全く被害がなかった。だけどあんな機能聞いていないぞ。」
セイカはバツの悪そうな感じのトーンになり
『あれは身に覚えがあるわ。多分、幼い私と勉強をしていた時に二人で新しく開発した爆弾をお父さんのスーツに勝手に仕込んだのだと思う……ごめんね?私の管理不足よ』
「ちっさいほうのセイカに危ないものを教えるなと言うのは一旦置いておいて、結果としてあれが無かったら多分、俺は縦に真っ二つにされていたから助かったんだよ。後でめっちゃ褒めたり撫でたりしよう。セイちゃん大好き!」
『……なんだか自分の事なのだけど、幼い私との扱いの違いに釈然としないわ』
「そんなことより、アキはどうなってる?勝ってるのか?」
変わらず向こう側では、人外による大惨事が行われている。
『アキのデバイスはとっくに壊れてしまっているから、位置情報も映像も届かない状態ね。ドローンも近寄れないし、今肉眼で見えているものがすべてとしか言いようがないわね』
「そうか。ひとまず近づけられる所まで移動しようか」
そう言ってアキが居るであろう方向に向かって移動を促したその時……山が爆発した。火山の噴火のような爆弾を落とされた映像のような、そんな感じだ。上空にはきのこ雲が上がっている。
時差で遅れて爆発音が聞こえて、次に衝撃波がきた。
「うわああああああ!!」
それも一回だけではない。二回、三回と繰り返し爆発が起こり、みるみる山が火山の噴火のように真っ赤に染まり溶けて減っていく。まさに怪獣の大戦争の様な天災が目の前で繰り広げられている。
『お父さん!もうその場所は危険よ!何か物陰に隠れて!』
「あれ大丈夫か!?アキがやってるのか!?」
俺は周りを見回し、走り出した。
岩や洞窟などは崩れてしまっては危険なので、できるだけ安全だと思われる場所に移動をすべきだ。
『アキ、冷静を保っているか心配ね。いつも力を最小限まで抑えていた感じだったから』
「あれがアキの全力なのか……?」
『それはわからないわね。力を開放した感じはあるけど、全力かどうかはわからないわ」
少し開けた丘のような場所に着いたので、ここで待機する。
しばらくするとロジャー、J、ソゥと合流。富子としまこは搬送部隊に海老根を引き渡したのち、移動用の車両で待機しているという報告を受け、いつでも出動できるように指示を出す。
俺はアキの戦闘が終わるまで、天災並みの惨状を見続けた。
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