異世界勇者は日本でも勇者になれますか?

四熊

第1話

俺、天宮士郎あまみやしろうは異世界の神に日本から召喚され異世界で勇者として魔王を倒すことを命じられた。

最初は戸惑い、拒否しようともしたが魔王を倒さなければ日本には帰れないという半ば強制的な理由からこの戦いに身を置くこととなった。

道中でも何でこんな理不尽な目に遭わなければならないんだと何度もくじけそうになりながらも魔王軍と戦う中で知り合った仲間、魔法使いで炎魔法を得意とするレヴィーと聖女であり高度な回復魔法や防御魔法を使えるジャンヌに支えられながらやっと魔王城までたどりつき魔王との最終決戦へと挑むに至った。


そして。


「シロー、私が隙を作ったんだから逃すんじゃないわよ」


「シロー様、悪しき魔王にとどめを」


俺の仲間であるレヴィーとジャンヌが既に戦闘でボロボロで今にも動けなくなりそうな俺の背中を押す。


「ああ、分かってるよ。これで終わりだよ魔王」


そう言って最後の力を振り絞るとレヴィーの魔法でのけぞらせ攻撃の手が止んだ魔王めがけ駆けると魔王の心臓に剣を突き立てた。


「人間如きに我が負けるとは」


そう言うと魔王は倒れた。


「よっしゃー」


思わず歓喜の叫びがでてしまう。


長かった本当にこれでやっと戦いから解放されて安全な日本に帰れるんだ。そう思うと気が抜けてしまいこの戦いでの疲労もあり尻餅をついてしまった。


「ちょっとシロー大丈夫」


「シロー様」


レヴィーとジャンヌが俺を支える。


すると俺は力を使いすぎたのかふらりと倒そうになってしまった。


そして倒れないように伸ばした手の先にあったジャンヌの胸をもんでしまい俺が思わずびくりとしてしまう。それを見とがめたレヴィーは顔を真っ赤にして怒りだし、ジャンヌは恥ずかしいそうにうつむいた。


「シローあんたこんな死闘が終わってすぐにおっぱい、おっぱいなんてとんだ変態じゃないの」


「シロー様、そういうことは私だけにしてくださいね」


「ち違う不可抗力だ」


魔王との決戦が終わったというのにとてもやかましいやりとりがなされていた。


だが魔王を倒してすぐにこのように騒がしくしているのは僕たちがこれからばらばらになり会えなくなってしまう未来を考えないようにしているからなのかも知れない。


レヴィーは魔王を倒した功績で魔法協会での高い位が約束されているし、ジャンヌは大聖女として神の化身として扱われ教会の中で祈り続け高位の聖職者以外と会えない生活を死ぬまで続け無ければならず、俺は魔王を倒すと強制的に日本に戻されてしまう。


俺は殺しあいが続くこの異世界から早く帰りたい一心で剣と魔法を振るってきたのにレヴィーとジャンヌにあってから異世界での生活がとても楽しかったしこの生活が続けばいいなとも思っていた。


そして俺の身体が光に包まれ始める。


さっきまでやかましくしていたのにも関わらず水を打ったかのように静かになった。


「なあ、やっぱり帰りたくないな」


絶対に言うまいと思っていたのにその時にいざなってみると俺の口からふとこぼれてしまっていた。


レヴィーもジャンヌも、勿論俺も泣いていた。


「レヴィー、ジャンヌ、俺は皆に会えて良かった。あっちに行っても絶対忘れないから皆も俺のこと覚えていてくれよ。」


「当たり前じゃない忘れる訳ないでしょ」


「私も教会のなかで一生を終えると思っていましたがとても面白い旅でした。シロー様あちらに行ってもお元気で」


そしてレヴィ―とジャンヌは消えゆく俺の手にそれぞれ袋を渡して来た。


「これは」


「帰ってからのお楽しみよ」


俺が袋の中身を聞くとレヴィ―は照れながらそう言い、ジャンヌは微笑んでいた。


そして俺は完全に異世界から消えてしまった。


俺は気づくと異世界に行く前にいた場所の公園にその時の服装で倒れていた。


俺は最初今までの異世界での出来事は夢や幻かと一瞬思ったが持っていた袋であれは本当にあった出来事だったんだと確認できた。


良かったとほっとしながら袋の中身が気になり開けてみる。


まずはレヴィ―。


中に入っていたのは手紙と指輪だった。


そしてジャンヌ。


同じく入っていたのは手紙と指輪。


内容はどちらも俺のことが好きだという内容が彼女たちらしい言葉で書かれていた。


忘れたくても忘れられないよこんな。


そして俺は取り敢えず自宅のあった場所に戻ろうとしたがその前にコンビニで今がいつなのかを新聞で確認することにした。


異世界に俺がいたのは5年はいた。どのタイミングで戻されたのか分からないが5年後の日本に飛ばされているか異世界に飛ぶ前に戻されているのかどちらだろうかと新聞を手に取ると書いていたのは俺が異世界に飛ばされてから時間が10年経っていたらしいということだった。


となると自宅に帰っても知らない人が住んでいる可能性があるし、この長い空白があっても働ける仕事があるのかということだった。


そしてこれらの問題を一つづつ解決していこうとした結果、自宅は流石にこの長い時間が経ってしまったのもあって違う人が住んでいて現状雨風をしのげる家がなく、仕事もこの空白では見つかりそうもなかった。


どうしようか思案にくれていたその時目についた一つの本があった。


『他人とは違うことして生きていく動画クリエーターのススメ』


これだ、動画クリエーターになろうそう思った。











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