Vol:13 かまってちゃん
「裏を返せば、自身の抱えるトラウマを
穴埋めしてくれる存在を、求めています。」
ーーズキッ。
聖女の言葉で、竜司の胸に刺す様な痛み。
それは、彼自身、長年、自己愛や、
他人の愛情を渇望していたからこそ、
トラウマの正体に気づき、痛かった。
「好きなタイプはどんな人?」と聞かれて、
「優しい人が好き。」と、答える人はいる。
竜司も、きっと、同じ答えをするだろう。
一見、社交辞令にも、無難で
至って、普通の回答にも、聞こえる。
中には、接客業のマニュアルの様に、
機械的に、答える人もいるだろう。
けれども、その発言には、裏がある。
ポッカリと空いた、心の穴を満たす人を、
人材募集をする様に、求めている。
いわゆる、『かまってちゃん』、
承認欲求が強い人は、そのタイプなのだろう。
例えば、SNSで、不特定多数の人の
気を引こうと発信をする人を見かける。
その日の嫌な事とかを綴っては、
「疲れた」、「大変だった」との愚痴や、
「○にたい」と、過激な内容もある。
自らを、まるで赤子で、か弱い存在だと
アピールして、構ってもらおうとするのだ。
話がずれるかもしれないが、炎上する人は
心の穴が、より大きいのだろう。
「チッ...。」
竜司が、考えに耽っていると、
別の道に気がつき、また、辿り着いた
その内容に、顔を歪ませる。
最近、テレビで持て囃されていた、
『あざとい』人も、似ている。
これは、相手に気づかせない様に、
自分の掌で、他人をコントロールする、
上級者向きの、穴の埋め方なのだろう。
ちなみに、竜司は、あざとい女性が、大の苦手。
いや、この場合、大っ嫌いの表現が、正しい。
(それはまた、いつかの話に譲るとしよう。)
竜司は、嫌でも、想像してしまった。
『私の心の穴を埋めてくれる人を募集!』、
(私にとって、都合が良い人。)
『条件:いつもアフターフォローしてくれて、
否定せず、褒めてくれる、優しい殿方』
(少しでも、気に食わない態度は、即クビ。)
『時間:私が落ち込んだり、寂しくなった時』
(24時間、365日の待機、3秒以内の対応。)
『報酬:要相談』
(そもそも、さらさら、あげる気はない。)
『定員:1人』
(本当は、誰でもいい)
...etc
ドヤ顔を決めるアイドルの様な
芸能人を載せた写真の真下、
書かれていない、コワイ裏事情が
丸見えの、やり甲斐搾取を含む文章、
つい、ブラック企業を、想像してしまった。
電車の吊り革や街中の広告に、
そんな堂々としたモノがあったらと、
呆れて、苦笑いするしかない。
ーー最近は、『株式会社あざとい』という、
ヤリ手企業もあるし気をつけよう。
竜司の心では、特殊詐欺の扱いをする事にした。
自己完結が済むと、竜司は、ふと疑問が浮かぶ。
ーー人間、完璧な人はいない、はず。
ーー弱さを補うのも、大事じゃないか?
人には、長所・短所がある。
お互いの弱みをカバーし合う関係は、
建設的であり、大切ではある。
たとえ、それが、理想論だとしても、
人間関係の営みがある以上、
あざとく、他人を利用し、一方的に、
搾取する関係性は、ナンセンスだろう。
それに対する、聖女の返答は、シンプルだ。
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