第16話 社畜、ゴボタがヤクザになって驚く

「さぁ、早速今日から石油探しに行きますか!」


 昨日からずっと屋根を作っていたリーゼントは、まだ木の枝とツルを一緒に編み込んでいた。


 一体どんなやつができるかわからないが、俺とゴボタは戦力外だから、食料集めをしながら石油探しになる。


【スキルポイントを振ってください】


 いつものように朝の日課が始まった。


 半透明な板を見て、俺は昨日の実験の結果を確認する。


【スキル】 ポイント1

 魔物召喚 1

 └ゴブリン 1

 └コボルト 1

 地形変更 1

 └地形変更セット 1

 トラップ設置

 環境設備 1

 └植樹系調整 1

 資材召喚


 やはり予想した通りで自分でポイントを割り振らないと、魔物召喚にポイントが振られるようだ。


 ひょっとしたらゴボタがゴブリンで、リーゼントがコボルトなんだろうか。


 今のところ出会っているやつらと魔物召喚の種類の数があっているからな。


 集落にいた人達もゴボタに似ているからゴブリンになる。


「今日は気になっていた資材召喚にするか」


 俺は資材召喚に手を触れて、ポイントを振った。


【スキル】

 魔物召喚 1

 └ゴブリン 1

 └コボルト 1

 地形変更 1

 └地形変更セット 1

 トラップ設置

 環境設備 1

 └植樹系調整 1

 資源召喚 1

 └魔宝石召喚


 出てきた項目に俺は地面を叩くほど項垂れていた。


「ぬああああ、石油じゃねええええ!」


 資源っていったら石油や天然ガスだろう。


 それが違うなら鉄や鋼だと思うだろう。


 〝魔宝石〟ってなんだ。


 聞いたことも名前に俺は項垂れるしかなかった。


「とーたん、リーじえっとがみてるよ?」


 リーゼントを見ると俺とスクーターをチラチラと見ていた。


 あれはいつになったら乗れるんだと言っているのだろう。


 もはやリーゼントも手を動かす気もないのか、爪を鼻に入れて鼻くそを取っていた。


 しかも、それを俺に投げてくる。


 明らかにあれは怒っている。


「よし、まずは魔宝石を探すところからだな」


 拠点に居づらくなった俺はゴボタとスコップを手押し車に乗せて、急いで出かけた。


 ゴボタも一緒に道連れだが、あそこにいるよりは良いだろう。


 気づいたらリーゼントの鼻くそだらけになりそうだからな。


 ただ、適当に外に出てきたが魔宝石がどこにあるのかわからない。


「ゴボタは魔宝石を知っているか?」


「まほうしぇき?」


 ゴボタは悩みながら、胸を前に突き出してきた。


「まほうしぇき!」


 胸に何かあるのだろうか。


 耳を当てても心臓の音が聞こえるぐらいだ。


「とーたん、むじゅむじゅする」


 きっと髪の毛が当たって痒かったのだろう。


 ただ、魔宝石とゴボタの胸が何か関係しているのだろうか。


 よくわからないゴボタの行動を、しばらく考えていたが俺には全くわからなかった。


「宝石って言うぐらいだから地下深くにあるのか?」


 宝石はマグマが冷えて固まって岩石になる時に、特定の成分が集まって宝石になったはず。


 あまり知識はないが、宝石発掘の特番でそんなことを言っていた記憶がある。


 ただ、ここには山もなければ洞窟も見たことがない。


 あるのは森だけだ。


 ただ、その森の地面にも水がたくさんあるから、ひょっとしたら地面を掘ったら魔宝石でも出てくるのだろうか。


「それでもどこを掘れば……」


「とーたん!」


 ゴボタはどこかに行っていたのか、大きな石をたくさん持ってきた。


 そういえば、今まで石を見ることはあまりなかった。


「ゴボタ一つもらってもいいか?」


 俺は石を一つもらうとそのまま地面に置いた。


 スコップを手に持つと、そのまま石の上に振り下ろす。


「とーたん、だめぇ!」


 ゴボタは石を庇うように被さってきた。


 俺はギリギリのところで手を止める。


「怪我はないか?」


 すぐにゴボタが怪我をしていないか確認するが、どこもスコップには触れていないようだ。


「ゴボタどうしたんだ?」


「とーたん、いじめちゃメッ!」


 どうやら俺が石をいじめているように見えたらしい。


 今まで見たこともない石が確実に魔宝石に影響していると思っている。


 ただ、ゴボタは石を割ることを許してくれないようだ。


「そうか……なら仕方ないな」


「ふぅー」


 ゴボタが石から離れた瞬間、俺はすぐにスコップを叩きつけた。


「なぁ!? とーたん!」


 ゴボタは怒って俺を叩いているが、予想は当たっていた。


「やっぱりこれが魔宝石か!」


 俺は少しかけた石をゴボタに見せると、目をぱちくりさせた。


 石が割れた中には赤く光る魔宝石が見えたからだ。


 ルビーのようには輝いてはいないが、きっと削って磨けば綺麗になるだろう。


「なぁ! やっぱり魔宝石……」


 俺がゴボタの方を見ると、さっきまで石を守っていたゴボタとは別人がいた。


「おりゃりゃ! ほうしぇきださんか! オラ!」


 うちのゴボタがどこかヤクザのようになってしまった。


 石を地面に叩きつけては、割れないことに気づき俺のスコップを奪っていった。


 何度もスコップを叩きつけて石を割っていた。


 綺麗に真っ二つになった石を見ると、中の色は何色もあるようだ。


「はよだしゃんか! オラオラ!」


 宝石を目の前にしたら我が子はヤグザになる。


 それだけは忘れずに心に刻もうと思った。


「おりゃおりゃおりゃあああああ!」


 うちの子……ヤクザになっちまったよ。

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