またいつか出逢えたら
びーまい
第1話
春先に降る雨は冷たい。
傘を持たずに歩いていた僕に降り始めた雨に対抗して、パーカーのフードを被った。
ざぁざぁと降り始めた雨はすぐに頭を濡らして冷たくなっていく。
早く帰ろう。
そんな気が起きてるようなそうでもないような、まだ今日あった事が頭から離れなくて足は動かない。
家に向かう道のり、線路沿いの街灯しかない暗い道で僕の目は何かを見つけた。
うずくまる黒い塊。
「え…」思わず声を出した。
その塊の周りには数匹の小さな猫。
黒い塊に見えたのは、丸まって横たわる人間だった。
か弱い声で泣き続ける猫達と、道路に倒れるその人。いつもなら素通りするはずなのに、猫に気を取られ足を止めてしまった。
「…大丈夫ですか…」
仕方なく声を掛けると、その人の目はすぐに開いた。
「…やばい、寝かけてた…。」
すぐに身体を起こしたその人は言った。
そして僕を見た。
濡れた前髪から垂れる雫。
細い顔に身体。
街灯のせいか白く見える顔に黒い前髪が張り付く。
少し開いた薄い唇が次の言葉を発しようとしている。
前髪の間から見えた大きく黒い瞳が街灯に照らされて薄く光った。
「大丈夫…じゃ、ないかも…。」
これが僕と君との出逢い。
あの時声を掛けなかったら
あの時素通りしていれば
僕達は、こんなに苦しい思いをしなかったのに。
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