裏切られた善良領主は転生し悪役領主となる
ナナシの文字
悪役領主になる前のお話
「私」の始まり
第1話 転生
side ???
私は貴族の男爵だった
家の外を見れば奥に広がっているのは辺境の畑しかないと言ってもいい領地を任されたただの領主
貴族のいう私には称号以外何もなかった私は歴史の中ではよく起こる貴族の権力争いに巻き込まれてその称号すら剥奪されてもう平民と完全に同列である
男爵の地位はなくなってしまったがこれまで住んでいたまだ屋敷には当分の間住んでもいいことになっていた。
私には妻も子もましてや家族などはいないので荷物を整理したらなるべく目立たないようにすぐに出て行くつもりだった
そのこの地を後にする日が明日というそんな日だった
「しかしどうして......どうしてこんなことに......」
私はまるで火の渦のように燃えている部屋を見てそう呟いた
明日の朝一番に出かける予定だったので早めに就寝したがふと目覚めた時にはこの有様だった
「領主はどこだ!こそこそ隠れずに姿を見せろ!逃げたのか!」
「どこでもいい。すでにいなくなっても探せば痕跡ぐらい見つかる!とにかく手当たり次第探せ!!」
これだけ離れているというのに横に直接囁くような声が聞こえる
この声の正体が領主時代に何度も声を交わしたからわかるこれは領民の声それに単独犯ではなく領民全体のことなんだろうと人がある程度限られるこの領だからこそわかった
なぜだ。なぜだ。なぜだ。
頭の中にそれだけが回転する
私は貴族だが領民に寄り添っていたと思っていた
領内の政策も交流もしっかりやっていたはずだ
「外に出た様子はないようでっせ。見晴らしていた奴らがずって中にいたらしいでっせ。」
「そうか……ならここにいる他ない!わかったか!この屋敷の隅々まで見ろよ!」
怒りが突き刺すような音と床が軋む足音が大きくなっていき
こちらに近づいてくる気配が前から感じ取れる
「いたぞ!みんなこっちだ!早くこい!」
そうして私がかくれていた部屋のドアを乱暴に開けて一人の男が現れ睨むような目で人差し指を爪で心臓を突き刺すように指先を尖らせながらこちらを見つめた
「やっと、やっと見つけたぞ!苦労かけさせやがって。いや、やっとこの重みから解放されるんだ。」
しかしなぜこんなことをするかわからなかった私は今にも枯れそうな声でこう言う
「……何で……私が何をしたと言うんだ。」
「ハっ……何を言っている貴様は、俺たちの税金を横領して懐に入れたらしいじゃないか。」
「なにを……」
すると目の前の男は血のような赤い一枚の紙を持ちながらこういった
「しらばっくれるな!しっかりと犯罪の証拠があると言う書状が王都から上がっているんだよ!これでも違うというのか!」
「......」
この言葉とその王都からの正式な書面である『赤い紙』で大体わかった
つまり嵌められたのだ多分権力争いに負けた領主が暴動を起こさないように領民の信頼を得ている私が当て馬にされたのだ。この状況じゃ王都に確認も出来ない。
そう思っていると目の前の男が持っていた剣を私に向ける
なぜだ……領民たちは王都からの書状を疑って最後まで信じてくれなかったのか……
男が私に向かって剣を振り落とし辺りに赤い血が飛び散りそのまま肩から崩れてそこに沈む
「ガハッ……信用していたのに……」
「おお!見つけたか!……こんなところに空間があるなんて……」
「はい!こんなところにいやがって……この通りこれまでの恨み晴らしてやりましたよ!」
「よくやった!これでお前は英雄にっ……」
……私の人生はここまでか
そう思いながら自分の意識が薄れていくのがジワジワ感じた……
***
目を閉じた瞬間
岩が投げられるような痛みが頭のてっぺんから響き渡る
「イッツッッ……」
うん?
なんでこんなにも痛いんだ?
いや、そんな絶叫するような痛さではなく
じーんとした人がおもっきり振り回せるような長さの固い木の枝に頭に当てられたようなそんな痛みが感じられた
「だ、だいじょうぶですか?あわわっ……どうすればいいんでしょうか。まずはお医者様を……」
たしかあのとき……
そう私はたぶんあの時……死んだんだ。
体の正面は?
ペタペタと触るが……異常なし
剣の切り傷とうなどは?
頭部を触ってみるが……特になし
なんで生きているんだ?
「いや……そういえば少し前……」
なんでこんなことになっているのか考えると即座に出たことがあった
確か領主となり受け継いだ屋敷に存在した
その地下の隠し部屋には変な石があった
その名を『転生石』と言うものが……
石見つけたときはそこに石と一緒に添えられていた紙にその石の説明が書いてあったが……文字も掠れてよく分からずさらに相当古いもので一部調べてみたが
なにかに乗り移るなど……もう一度機会が与えられるなど
よく分からないものだった
「……すっかり石の存在も今の今までこの状況になるまで忘れていたからな……」
「あの……」
まあ、あの石が何かときれいというか
何か心というか本能が惹かれるものがあったのでポケットの中にいつも
「……」
まさかあの石が原因なのか?
いやそんなことが現実にあり得るのか?
そう思考を巡らしたがある時刺激が覚醒する
「……だっ大丈夫ですかっ!」
急にあらわれた女の人がしゃがみ口を手で多い右耳に直接訴えかけるように聴覚が壊れるほどの大声で叫んだ
「だ、だれだ!まさか……」
あのときの残党か?
それにしては身軽な……まるで使用人が着ているようなメイド服を着ている
その服の中にナイフや武器が隠されているのか……
私は頭を前に曲げようとするその手練れに向かって警戒を……
「申し訳ありませんリク様!ぶつかってしまって本当に申し訳ありません!」
「は?誰のことをいっているんだ。」
「え……それは……え?」
「……」
お互いに『何を言っているんだ?この人は?』と言っているかのような目線を送り静寂と化したこの空間の中あることに気づいた
私は向けられた視線の先……瞳の反射した私の姿を
よくよくみるとある異変に気が付いた
その視線が私から見て上から見下ろらせていることに
そう、客観的に見て体の大きさが目に見えないような昆虫と人間を見比べるように
あきらかに小さくなったのだ
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