第21話▷魔王覚醒

 クロエが迷宮の機能を使い、エイリス達を殺そうとしている。


 アウネリアは目の前の光景が信じられず思考が停止しかけたが、そんな場合ではないとすぐさま体を動かした。

 白い柱の向こう側……黒壁の四角い部屋に、現在凄まじい勢いで水が流れ込んできている。

 見ればここまで下りて来た階段へ続く道も塞がれており、このままでは仲間達三人は水に呑まれて溺れ死んでしまうだろう。


 それをなんとかするには……先ほどまでクロエが手を加えていた迷宮中枢部の装置を動かし、水を排出するしかない。


 事が起きる直前まで装置の効果を把握できなかった自分が出来るだろうか?

 一瞬そんな考えが過るも、すぐに「私は天才よ」と矜持を奮い立てる。

 こんな時に何もできなくて、なにが魔学の天才か。完璧にクロエの所作を思い出し、逆算して対処してみせる。


 そこまで一気に考えを巡らせたアウネリアは、水攻めに遭う仲間達に背を向け女神像の台座に飛びつくように動いた。


 しかし。


「!!」


 それをやんわりと止めるように、ふわりと後ろから身体を抱きしめられた。

 いつも好ましく感じていた爽やかな香水の香りが、今はねばりつくように鼻腔の奥を撫ぜていく。


「ごめんね、アウネリア。辛いだろうけれど、それはさせてあげられない」

「離して! 離してよ!! クロエ、貴女いったい……!」


 細い両腕による拘束はけして強い力ではない。

 だというのに変に絡みつき、振り払う事が出来なかった。まるで見えない腕でもあるようだ。


 アウネリアは苛立たし気にそれを成した人物を振り返ったが……。

 その片方だけの黄金の輝きとぶつかり、声を無くした。

 これまで自分以外にはけして見たことの無かった、自分にとって魔学への才能と興味を花開かせた祝福の色。


「ああ、この眼が珍しい? おそろいだね」

「なん……っ」


 クロエに出会ってから、アウネリアは己の眼の色が変化する様子を見せたことはない。

 だというのに何故、まるで知っているかのように話すのか。


 困惑するアウネリアの陶器のように白く、色の失せた肌をするりと撫でながら……クロエはうっとりと呟く。

 否。それはクロエの声を借りた、クロエでないモノの声だった。


「【ああ、お懐かしゅうございます。貴方様は尊き三つ目の内、ひとつをワタシに授けてくださった。おかげで矮小の身でありながら、こうして消滅することなく貴方様の前にはせ参じられた。嬉しい……嬉しい、ウレシイ、ウレシイ】」

「健気で可愛い子でしょう? ……僕にとって、一度目の運命の出会いだよ。二度目はアウネリア、君だ」


 同じ口から、今度はクロエ本人の声がアウネリアに語りかける。

 "貴方様"などという、アウネリアに話しかけながら別の誰かを見ている声と違って。


「この眼はね、魂を……同胞をこの世界で見つけて、導くための眼なんだって。他の魔族が持たない、特別な眼」




 魔族。

 その言葉に息をのむ。



――――この眼が、魔族のもの?




「この子は主の力の一部を手に入れて、ある変化を手に入れた。……僕を見てよ。どこにも魔族の特徴が出ていないでしょう? 僕は僕のままに、この子を受け入れ同じ体で共存を果たしている。凄い事だと思わないかい。この眼を隠している間はたとえ魂を見抜く術を使っても、たとえ君の眼を使ったとしても……僕の魂に隠されて、この子の存在は誰にも察することは出来ない」


 無邪気に宝物を見せびらかす子供のように弾むクロエの声。

 しかしこうして彼女が楽し気に話す間にも、エイリス達の命は削られている。


「……そんなの、どうでもいい! とにかく離しなさいよ! クロエ、貴女といえど容赦しないわよ!!」


 らちが明かないと、アウネリアは攻撃の意志を露わにし手にそれを成すための魔力を集めていく。

 しかしそれを打ち込む前に肩を掴まれ体を反転させられた。近距離で攻撃的な魔力を扱われているというのにあまりに無造作な動作に反応できず、アウネリアは成すがままにクロエに向き合う形となった。



「ねえ、アウネリア。君の"眼"で僕を見て?」



 だからそんな場合ではない。すぐにエイリス達を助けなければ。

 …………だというのに、恐怖か好奇心か。

 よくわからないものに突き動かされて、アウネリアは己の瞳が翡翠から金色へと変化していくのを感じた。


 するとおとがいに指をかけられ、顔を上向かされる。

 整ったクロエの面おもてが、視界を埋めた。



「ッ!!」



 引きつった声が喉の奥から零れた。



 これまで初対面の人間は全てその魂の姿を、形を確認してきた。それが習慣だったし、魂には隠し切れないその人の本質が現れる。


 ルメシオは生命力に満ちた緋色の魂。誰よりも真っすぐな人柄を感じた。

 リメリエは神秘的な菫色。優しくて情に満ちていた。


 …………エイリスは英霊の魂の形にして、清浄な空の色。包まれるような安心感を与えてくれた。


 そしてクロエは森の中に落ちた木漏れ日のような、黄色と緑が混ざったような萌黄色。

 大好きな色だと思っていた。


 しかし眼帯を外し金色の片目を露わにしたクロエには、その魂に重なるようにもう一つの像が見える。



 蜘蛛のように幾本もある細長い脚。

 それぞれが金属のような光沢を放ち、キチキチと擦れる音が聞こえるようだ。

 先の部分だけ人の手のようで、その不気味さが生理的な嫌悪を呼び覚ます。

 胴体や顔が無い代わりに、中央部に花のような花弁に覆われた青い心臓が脈打っている。それがクロエ自身の心臓部分と重なって見えていた。


 蜘蛛に似た細い脚は植物にも見えて、クロエの体を苗床として根を張っているようにも感じられた。


 それはまさしく、おぞましき魔族の姿。




 しかしアウネリアを驚愕させたのはそれだけではない。

 重なる黄金の瞳同士、クロエの瞳が映す像の中に……自分を見ているはずのそこに、異なるものが見えたのだ。


「ああ……美しいね。やっと近くで見る事が出来た。この瞳を隠している間は、力が使えないから」

「なに……これ……」

「なにって、君本来の姿だよ。自分で自分を見ることは出来ないだろう? 僕の瞳を鏡にして、存分に見てくれたまえよ」


 ドクンッドクンッと心臓の音が耳元で聞こえるような緊張感。

 アウネリアの背中を冷や汗が伝い、体中の体温が消え失せたように感じた。

 クロエに触れられている感覚も麻痺して、五感が狂う。


 ……それほどの衝撃。




 黄金の瞳の中には、ヤギの頭部に、草食動物に相応しくないぞろぞろと並ぶ肉食獣の牙を備えたナニカが移っていた。

 体は人間。しかしこちらは爬虫類の鱗に似たものに覆われていて、背中には鳥の翼を携えている。


 アウネリアはこの特徴を知っていた。

 歴史書で読んだからだ。







「魔王……」







 その瞬間、が弾けた。










 生きねば。生きねば。生きねばイキネバイキネバイキネバ。

 奪ってでも食らってでも同胞を生かせ。種族を繋げ。地に根を張り新天地を手に入れよ。

 欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいホシイホシイホシイホシイ。


 記憶というよりも本能とでもいうべき強烈な意識が濁流がごとく押し寄せる。


 魔王種という生物がたどった道。

 幾万と血に濡れた記憶を通り過ぎ、それは無垢だった魂に楔を打ち込んで行く。これはお前の記憶だと。


 しかし一瞬でも気を抜けば狂いそうな中、やがてひとつの記憶にたどり着く。

 それはまるで希望のように、見知った存在。



(エイリス……!)



 音にならない声で呼ぶ。

 姿かたちが違っても分かる。あれは愛する人の前世、若き日の姿であると。


 しかし縋るように求めた勇者がこちらに向けた表情は、未だかつて見たことが無いほど…………憎悪と憤怒、怨嗟……悲しみに染まっていた。

 人とはこれほどまでに複数の感情を宿す顔が出来るのかと、アウネリアは震えた。



『ミシュア!!』



 そして叫ぶように呼ばれたのは自分ではない、誰か、おそらくは女性の名。



 アウネリアはその時、記憶の中で自分が口の中で何かをんでいることに気が付く。

 堅いものを砕き、水分をすすり、嚥下した。それは日々の中でも生きる糧を得るために、日常的に行っている動作だ。エイリスともたくさんの食事を共にした。


 ただ"コレ"は違う。

 生きる糧を得るための生命活動ではない。


 砕く直前、眼下に見えたのは白い腕だった。だらんと力なく"自分"の口から飛び出ていた、人間の腕。


 取り込んだそれは己の体の中を循環し"同胞"が宿るための体として作り変えていく。

 その果てに体外へ産み落とされたモノを見て、エイリス、否。勇者エディルハルトは咆哮した。





 高速再生された記憶の中で、最期の映像は愛する人の刃が己の腹に埋まる所。


 視界の端には魔族の体と成り果てた、彼の妻が先にこと切れ転がっていた。










「…………はっ」


 水中から浮上し息をするように喘ぐ。

 肺に取り込んだ空気すら苦く、鉄さびのような味に感じた。


「【ああ、良かった。思い出されましたか】」


 クロエの声で、クロエの声でない音が耳をかすめる。



「なん……これ……っ、わたし、えいりすの、おくさんを……」



 理解した。

 こんな時でも正確に情報を思い出す自分の頭脳が嫌になる。


 勇者エディルハルトの一行には聖女とも呼ばれる彼の妻が居て、子を一人残して魔王戦で命を落としたことは最近調べて知っていた。

 しかしどの歴史書にも、魔王に食われて魔族になったという記載はない。

 エイリスが伏せたのか、それとも勇者一行の一人が魔族になったなどと記録として残せなかったのか。

 ……真相は分からないが、それは今問題ではない。



 繋がってしまった。



 勇者エディルハルトが転生の儀を使ったのは、魔王である自分を見張るためだったのだ。

 国外までついてきてくれると聞いたときは嬉しかった。

 もしかしてほんの少しは自分にも好機があるのではないかと。エイリスも自分の事を好いてくれているのかもしれないと。けど違った。アウネリアを見張るために、エイリスは共に来てくれようとしていたのだ。婚約を受け入れてくれたのだって、弱みを握られたからは無い。見張るのに都合が良かったからかもしれない。

 連鎖するように今までの彼の行動が繋がっていく。


 リメリエが自分のためだけに小説を書いてくれた。嬉しかった。

 自分の気持ちを見抜かれていたのは恥ずかしかったけれど、「言わなきゃ気づいてもらえないこともあるんですよ」といたずらっぽく微笑まれて、勇気をもらった。

 だから今日、帰ったらこの気持ちを伝えようと約束をしたのに……。



(そもそも私に、そんな資格は無かった)



 彼から愛するものを奪っておいて、どの口が愛の言葉を吐くというのか。

 喉の奥からこみ上げて来た汚泥のような吐瀉物を、アウネリアは白い床に吐き出した。



「ああ……さすがにきつかったか。かわいそうに。でも、これでいいんだよね?」

「【是。今の人格は仮初のもの。一度強烈に衝撃を与えてまっ更に塗りつぶせば、主本来の御心と力を取り戻す。クロエ、君の考えた策は実に優れている。最大の怨敵を労せずして屠りつつ、彼女に彼らの死を見せることで人として育った自我が消え失せるだろう。魔王様の降誕は確実のものとなる】」

「……ごめんね、アウネリア。君が君のままで居るのが僕としては好ましいのだけれど、僕と違って君は魔王そのものの魂に生まれた人格だ。だから本来の力を行使するには、魔王に主導権を渡してもらう必要がある」


 眉尻を下げて、心底可哀そうだと憐れむようにクロエは言う。


「……君の体は人類の中で魔族の魂を受け入れながら、人の体を魔族に作り変えることなく共存できた、最初の事例なんだよ。これまでなら赤子の君に魔王の魂が移った時点で魔族に変化していたはずなのに、君は十六年も普通の人間として過ごせていた。これはすごいことだ。魔族が闘争の果てに、人と共存するための変化を手にした証さ。だから主の力の一部を受け継いだこの子にも変化が生じた」

「…………」

「ほら、見てよ。僕も人の体のままで、魔族の彼と共存できているだろう? 角も牙も獣のような特徴も無い。人間だ。……しかしね、まったく変化していないわけでもない。彼を宿る前とは魔力の量も記憶力も身体能力も、全てが向上している。……魔人族、とでもいえばいいのかな? これは魔族と共に生きることによって、人が新たな生物へ生まれ変われる証明なんだよ。そしてこれから人と魔族が新たに紡いでいく共存の歴史の中、その過渡期で魔族を統括する魔王の存在は不可欠」

「だから……私に、消えろって?」

「…………ごめんね」



 それが心からの謝罪だと分かるからこそ、吐き気がした。

 すでに胃の中のものを全て吐き出したのに、今度は胃液までもが出てしまいそうだ。




 熱心にクロエが語る間にも柱の向こうに水は溜まっていく。

 もう天井までわずかな隙間しかなく、すでに気を失ったリメリエなどは力なく水中を漂っている。

 ルメシオがそれを抱えて隙間まで浮上する様子も見えたが、こちらもそろそろ限界だろう。


(頭がぐちゃぐちゃになる……!)


 早く動かなければならない。しかし気力の何もかもが奪われて、体に力が入らなかった。

 今さら自分に何をする資格があるというのか。


 しかし浅ましくも、縋るようにアウネリアはエイリスの姿を探してしまった。

 これが一方的な好意でも、せめて自分が消えるその前に初めて愛した人を視界に収めておきたかった。たとえ衰弱した姿でも、ただ一目……アウネリアがアウネリアであるうちに。



 だが、無様に床に転がりながら視線を上げた先で。

 アウネリアはこちらをまっすぐに見つめる、深い藍色の視線とぶつかった。



 ――――アウネリア!!


「!!」



 水の中、空気がこぼれることも構わずそう叫んだのが見て取れた。



(あなたはそれでも、私の名前を呼んでくれるのね)


 記憶を思い出した時からピキピキとひび割れるように、額の横を割って角が生え始めて来たのを自覚していた。

 しかしそれを見てもエイリスがアウネリアを見る目は変わらない。

 黄金に染まったまま戻らない目から水分が、あとからあとからこぼれていく。




 そしてアウネリアの様子を見て、困惑したのはクロエだ。




「……? 角? おかしいな。完璧な肉体との共存が成っているはずなのに、今さら魔族としての特徴なんて……」

「【ふむ。ようやく本格覚醒を成され始めたか】」


 自らの口を動かした共存者の声に、クロエは口元を押さえる。


「…………。ねえ。僕はこれでも君を信頼していたのだけれど」

「【クロエ。生き物というのはね、自らの種を残すために騙す事にも特化するものだ。君が賢くて助かった。我らの知能は宿った体に依存する。多くを学ばせてもらったし、アウネリアの記憶を手に入れた魔王様もこれまで以上に効率的な種の存続を行われるだろう】」


 ドクンっと強く脈打った心臓に呼吸が一瞬止まる。

 そしてクロエは自らの胸から青い花弁が花開くのを見下ろした。

 更には肉という肉、骨という骨の隙間を縫って冷たい金属が貫通していく感覚を生々しく味わう事となる。

 金属は更に細かく根のように触手を伸ばしていき、体の中に広がってあっという間にクロエから肉体の主導権を奪った。


「【魔王様が新たに手に入れた力はね、君たちの言葉で"擬態"というのだよ。そしてワタシもまた、主の瞳を介して同じ力を手に入れている。……君の語った「夢」というものも実に興味深かった。事象を自分の都合のいいように解釈して、簡単に騙される。餌としてとても適していた。今後も参考にしよう】」

「あは。これ……僕、やっちゃったかな」


 冷や汗を流しながらも、それでもすべては自己責任だと受け入れて。

 笑顔のまま、レディ・クロエはアウネリアよりも先に自我を消失させた。





「ッ!!」





 そのクロエ……否、クロエの体を手に入れた魔族の前で、アウネリアは強く床を叩き、膝に力を入れて立ち上がった。


「【主?】」

「私はお前の主なんかじゃないわ!!」


 小首をかしげる魔族を一喝し、アウネリアは透明な壁の向こうを見据える。

 エイリスは未だにこちらを見ており、今にも溺れそうになりながらも素手で何度も壁を叩いていた。


「……馬鹿ね」

「【ええ、馬鹿です。あのような力でこの障壁が砕けることは無いというのに】」

「お前に話しかけたのではないし、馬鹿にもいろいろあるのよ! 今のは馬鹿にする馬鹿じゃないわ!」

「【…………?】」


 心底分からない、といった様子の魔族を、アウネリアは嘲るように失笑する。

 そして角だけでなく背中から生えてきた羽を使い器用に浮かび上がると、透明な壁越しにエイリスの拳に手を沿わせた。





「愛しい人ね、って意味」





 妻の仇でもある憎き魔王を……しかし彼はずっとそばに居ながら、けして害そうとしなかった。いつでも殺せる機会はあったはずなのに。

 それは自分を、魔王ではなくアウネリアとして見ていてくれたからだ。


 ……エイリスはいつでも、アウネリアを見守っていてくれていた。

 婚約破棄を前提に、なんて馬鹿みたいな告白をしてきた女を、心底慈しむように。


 最初は見張りだったとしても、彼は先日聞いた言葉の通りの気持ちで、アウネリアを見守り応援してくれた。きっとこんなことにならなければ、ずっとそばにいてくれただろう。

 それがアウネリアと同じ感情ではなかったとしても。



「ああああああああああああああああああああッ」




 気力という気力全てを掻き集めて、アウネリアは己の内に渦巻く膨大な魔力を魔法へと変換させていく。

 今にも意識を失いそうだが、それは今ではない。


 ……愛する人と、友人たちを救ってからだ。


「【なにを……!?】」


 ズシンっと音を立て神殿……迷宮全体が揺れる。

 その異様さにさすがの魔族も困惑するが、なにかを成そうとしているアウネリアは強い魔力の渦の中心に居て手が出せない。

 そうしている内にも揺れは強くなり、地鳴りのような音が反響した。



「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! だぁぁああああああああああああああッ!!」



 やけくそのような叫びと共に……強烈な浮遊感が迷宮全体を襲う。


(魔王ってんなら、これくらいやる魔力をよこせっていうのよ!!)


 びきびきと血管が浮き出るのを感じながら、アウネリアは魔法の力を放出し続ける。

 それは以前、エイリスと湖上で空の逢瀬デートを楽しんだ時にも使っていた重力を操る浮遊の魔法。



 ただ、今回は規模が違う。






「でやああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」






 乙女とは思えない雄々しき咆哮とともに。


 アウネリアは海底から天まで、巨大迷宮の一本釣りを成し遂げた。





 巨大な迷宮が、丸ごと快晴の空を舞う。





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