最後の一日編⑥ もっこりサンタのお兄さん
伊達メガネサンタ変態お兄さんこと俺は、割と薄手なサンタ服を着て体に打ち付ける冬風に体を震わせながら、クリスマスプレゼント配りのため自転車を漕いでアストレア邸へと向かった。どうやらレギー先輩が遊びに来ていたようで、スピカやムギと一緒にワイワイとクリスマスケーキを作っているところだったらしい。ケーキを作り終えた三人に客間まで来てもらって、プレゼントを渡す。
「メリークリスマス!」
「おうおうメリクリ。お前、それ伊達メガネか?」
「誕プレで貰いまして。ではレギー先輩、こちらクリスマスプレゼントです」
「なになに……『蒸し暑い夏の夜、海辺の森で未亡人と……~闇夜に潜む淫乱悪魔~』ってこれ、完全に官能モノだろ!?」
「いえ、これはサスペンスですよ」
「じゃあタイトルの付け方間違ってるだろ!」
別に十八禁指定が付いているわけでもない至って普通のサスペンス映画だ、タイトル以外は。いやパッケージも何だかそれっぽいけども。
「スピカちゃんにはこれ、ガーデニング用のグローブだよ」
「ありがとうございます、朧さん。これで全身ガーデニング装備に出来ます」
「モ◯ハンでもやってるのか?」
「ムギちゃんにはこれ、絵筆セット」
「最近はずっと朧の絵を描いてるよ」
「何それ怖い」
そして今度は、誕生日を迎えた俺に対して三人からのプレゼントが。
「ほらよ、コガネさんがプロデュースしてるブランドが出したブレスレットだ。数量限定なんだとよ」
「ありがとうございます、格好良いですね」
「あとコガネさん達からも預かってるんだ。これ、コガネさんのサイン入りポスターだ。お前宛のコメントもあるぞ、転売防止に」
「いや僕は転売なんかしませんよ」
「あとついでにナーリアさんのサイン入りポスターも押し付けられたんだが、いるか?」
「そりゃ欲しいですよ!」
なんかついでにコガネさんとナーリアさんからの誕プレを貰えて凄く嬉しい。例えとして出すのはおかしいかもしれないが、なんかエロゲとか恋愛ADVの豪華版に付いてくるタペストリみたいだ。
「私からこちらを。フローラルな香りがするアロマデュフューザーです」
「ありがとう、スピカちゃん。これ部屋に置いとけばいいの?」
「はい。これで私と朧さんのお部屋の匂いが一緒になりますね」
「そ、そう……」
部屋の匂いを一緒にしたいって、それどういう感覚なんだろ。スピカは終始笑顔を絶やさなかったが、その笑顔の裏で何かを企んでいそうで怖い。
「はい、朧。これプレゼント」
「この小瓶に入ってる液体、何?」
「スピカの髪の毛と唾液と[ピーー」の毛と[ピー]とかを煮詰めて作ったポーション」
「そうなの!?」
「ちょっとむ、ムギ!? いつの間にそんなものを!?」
「というのは冗談。ただの精力剤だよ」
「だとしてもそれを誕プレに贈るか?」
俺はムギから誕プレとして謎の紫色の液体が入った小瓶を渡されたのだが、これ本当にただの精力剤あなのか? 何が主成分なのか全くわからないし、俺はこれを飲んで何をすればいいんだよ。
「まぁその精力剤は本当に精力剤なんだけど、それはおまけで本当の誕プレはこっち。朧の肖像画」
「え、ヤバ何このクオリティ……すごく嬉しいけど、僕の下半身がもっこりしてる気がするのは気のせい?」
「いや、これは朧がスピカのうなじを見て興奮しているシーンを再現した絵だよ」
「どうぞ、私のうなじです」
「いや見せなくて良いんだよスピカちゃん」
いや、自分の部屋に水着姿のコガネさんとナーリアさんのポスターと、股間がもっこりしてる俺の肖像画を一緒に飾っていると何だか変な感じになるだろ。それを見てしまうであろう夢那にどう説明すればいいんだ。
スピカ達とプレゼント交換を終えてアストレア邸を出た俺は、今度はアストレア邸の近所にある琴ヶ岡邸へ。ベガが世界から消えてしまった今、この巨大な邸宅に住んでいるのはワキアとその他使用人ぐらいなのだが、友人であるルナやカペラが訪れていて、意外と賑やかな空間だった。
「メリークリスマス!」
「あ、サンタだ。メガネでもかけちゃって、イメチェンしたの?」
「これも貰ったんだよ。あ、ワキアちゃんにはこれ、ビデオカメラ」
「え~これ私が欲しかったやつだ~」
「わぁちゃん、何かビデオを取るんですか?」
「もしかして、烏夜先輩と……!?」
「いや僕達に変なビデオ撮らせようとしないで」
すっかり病弱設定なんて吹き飛んでしまったワキアは、ピアニストとしての道を本気で目指す気はないらしいが、ピアノの演奏動画をネットに投稿したいという夢があるとのことで、それに適した機材を買ってきた。まぁ琴ヶ岡家の財力があればなんもかんも揃うだろうけど。
「カペラちゃんにはこれ、プロ野球チ◯プスのカード」
「え、これ自引きしたんですか!?」
「骨は折れたけどね。カペラちゃんが好きな選手が収録されてて良かったよ」
趣味で漫画を描いているカペラには熱狂的な野球ファンという側面もあり、何か俺が記憶を失ってた時に成り行きで一緒に野球観戦に行ったような記憶がある。ネブスペ2においてカペラはあくまでモブキャラのため専用のルートはないが、アペンドで追加されたら漫画家としての夢を志すシナリオになるのか、それとも野球要素が満載になってしまうのか気になる。
「ルナちゃんにはこれ。婦警のコスプレセット」
「朧パイセンは私をコスプレイヤーだと勘違いしてませんか?」
「ルナちゃんになら似合うと思ってね」
「お~結構際どいミニスカだねー。これなら烏夜先輩もメロメロだね」
「せっかくなので貰ってあげますけど、朧パイセンには見せてあげませんからね!」
半分冗談ぐらいのテンションでルナには婦警のコスプレセットをプレゼントしたが、意外と満更でもなさそうだ。断られたらくノ一のコスプレセットを用意してたんだが不要だったか。
「そして今日が誕生日の烏夜先輩に私からのプレゼント! ゴルフの会員権」
「こんな生々しいプレゼントある?」
「というのは冗談で、パパから相続した株式の半分をプレゼントするよ」
「もっと恐ろしいの来た」
なお流石にそれも冗談だったようで、星柄のハンカチセットを普通にプレゼントしてくれた。
「えっと、私からは……よ、喜んでいただけるかわかりませんが、似顔絵です」
「え、これ僕!?」
「朧パイセンにしては目がキラキラし過ぎです」
「でもカペちゃんのフレームには烏夜先輩がこう映ってるってことなんだね……」
何か少女漫画とかに出てくる、ちょっと素っ気無い感じのクールなイケメンが描かれてるんだけど、本当にこれ俺か? さっきムギから貰った俺の肖像画の股間部分をこれで隠しておくか。
「ルナちゃんは烏夜先輩にプレゼントないの?」
「え、これあげないといけない流れなんですか?」
「いや僕はただクリスマスプレゼントを配ってるだけなんだけどね」
「でもちゃんと用意してありますよ。これどうぞ、スピリチュアルなパワーを秘めているらしい隕石の欠片です」
どう見てもコンビニコミックとか雑誌の胡散臭い占いの広告によく載ってる勾玉とか宝石が付いたネックレスなんだけど、何かご利益あるのだろうか。ルナの実家は月ノ宮神社だし……いや月ノ宮神社自体はあまり宇宙と関係ないはずなんだけど。
その後、俺は一旦家へと帰宅して、第三部のヒロイン達に配るためのプレゼントを支度していた。コガネさんとナーリアさんのポスター、ムギが描いてくれた俺の肖像画、カペラが描いてくれた俺の似顔絵を部屋の壁に貼ってみたが……やっぱり肖像画で描かれている俺の股間がもっこりしてるのはヤバいだろ。
そんなことを考えていると、家のインターホンが鳴った。クリスマスにウチを訪ねてきたのは、隣に住んでいるシャウラ先輩だった。
「あ、め、メリークリスマス、烏夜君」
「メリークリスマスです、シャウラ先輩。何かありました?」
「あの、烏夜君の誕生日だから、プレゼントをって思いまして」
俺、シャウラ先輩に誕生日教えたっけって思ったが、俺のゲームのアカウント名に大体数字で誕生日が添えられているからそれでわかったのか。
シャウラ先輩とは直接合わずともゲーム上では結構会っているので、なんだかんだゲーム仲間としての親交はある。そんな先輩からプレゼントを貰えるなんて思わなかった。
「これどうぞ。フォロワーさんからの差し入れで頂いたんですけど、私だけじゃ使い切れないので」
「ありがとうございます。これは、のど飴……差し入れとかあるんですね」
「一応事務所に所属してるので、そっち宛に大量に届くんです」
ゲーム配信者スコーピオンとして活動しているシャウラ先輩は、メルシナのようにグッズを買い集めている熱狂的なファンもいるし、そりゃ差し入れを貰ったりもするのだろう。結構親しくさせてもらっているが、この人も中々に有名人だよな。
「僕からはこちらを。保温効果のあるアイマスクと冷却効果のあるアイマスクです。お好きな方をお使いください」
「ありがとうございます。こういう睡眠グッズも結構貰うんですけど、私ってそんなに不健康そうでしょうか?」
「朝方まで配信とかしているからでは……」
「確かに!」
お互いに体をケアするグッズを交換しただけのような気もするが、こんな真冬だと喉も痛めやすいからメチャクチャ舐めまくろう、のど飴。
その後はロザリア先輩、クロエ先輩、オライオン先輩、一番先輩、メルシナの五人にプレゼントを渡しに向かった。何か一番先輩達はサザンクロスに集まってワイワイしていたが、本来第三部のヒロインの誰かの個別ルートに入るタイミングで集まってるんだから、もしかしたらハーレムルートへと突き進むのかもしれない。現状上手くいってそうだから俺はあまり干渉していないが、あの一番先輩がハーレムを築くかもしれないと考えるとちょっと面白い。
そんな先輩方にプレゼントを渡し終えた頃にはもう日が沈んでいたが、俺はまた家に戻ってサンタ服から私服のパーカーに着替えてちゃんと防寒着を羽織った。そしてすっかり冷え切った冬の夜、俺は自転車を漕いで最後の目的地である、月ノ宮海岸に近い小高い丘に建っているローラ先輩の別荘へと向かった。
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