戦友以上>>>恋人未満 のんびり田舎生活したいだけなのに 厄介事は異世界から

アクサン

第1話

20××年。もうすぐ日本もなくなるかもしれない・・・


世界は、第三次世界大戦開戦か? で、右往左往している。

平和な日常生活が、核兵器の恐怖に震える日常生活へと変貌してしまった。

今のところ、核弾頭を2、3発撃ちあって、一旦休憩の様子だ。

初手から大国の中心部を狙う勇気はなかったらしい。

しかしどこの国も、譲るつもりなど毛頭ないようだ。

次の一手を練っているのだろう、自国の利益のためだけに。

国の権力者、指導者にとって人間の生活など、どうでもいいらしい。


そんな中で、スケープゴートにされたのが、沖縄だ。一発喰らわされた。

南国のリゾートは壊滅状態。オレの好きな旅行先だったのに、残念だ・・。

美しい海と空が、灰と煙に覆われた。


人類は、そろそろ最後の晩餐のメニューを考えたほうがいいのかもしれない。

自分も都会を離れ、親から継いだ小さな別荘まで避難している。

ここは、山の中にある静かな場所だ。

核の影響は、まだ届いていない。

今は、夜間外出禁止令が出され、外は静かだ。

窓から見える星空は、いつもと変わらない。

しかし、それは、いつまで続くのだろう?


TVのニュースでは、どこに核弾頭が着弾したのか放送が繰り返されいる。

国は、武器を買うのに何千億円も出すのに、国民を守るためのシェルターに一円も出さない。

国民がいなくなっても、国を続けられるのか?

オレは、そんな国に忠誠を誓い、税金を黙々と払い続ける国民もどうかしてると考えてしまう。

国民は国民以上の政治は、受けられないってことなのか。


昼間の国道では、元自衛隊、今は軍だ。の車両が走り回っていた。

核の傘って、どこいったんだろ?

もう何もできないじゃないだろうか?

対抗手段なんてあるんだろうか?

人類が終わってしまうのか、文明が終わってしまうのか。

生き残っても、石器時代に逆戻りになってしまうのだろうか・・。




自分は、二十歳を超えて数年たつけど、大人になったという実感が持てないでいる。

いつになったら、大人になるのかな?

自分の中の何が変わったら、大人と言えるのだろう?

相変わらず、エロ動画は好きだし、エッチできる女の子を血眼になって探し回っている。

結婚して家庭を持ち、子供をつくるなんて一度も、考えたことがなかった。


人より秀でた才能もないし、遅くまで残業してハイキャリアを目指そうなんて気骨も、持てないでいる。

仕事に楽なものはない、とは思うけど・・・。

ヨーロッパの方の会社でよく聞く、定時退社、長期休暇がうらやましくてしょうがない。

ブラック企業で、馬車馬のように働かされている大人は、体育館の裏に連れて行かれて、カツアゲされてる子供と一緒に思えてしまい、ちょっと虚しい。


好きなものといえば、音楽、映画、読書、スポーツ、ドライブと在り来たり。

性癖もいたってノーマル方だと思う。・・たぶん。

気の合う仲間とバカなことを言い合い、腹が痛くなるほど大笑いするような、人間

関係は好きだけど、気を使いながら顔色を窺い、愛想笑いをするのは超苦手だ。

一人の時間も苦にならない。予定のない週末は、この田舎の別荘で一人静かにすごす時間が大好きだ。


夢もあるけど、実現不可能なんだよね。

思い描くだけなら自由だし、夢はプライスレスだと思いたい。

生身で空を、自由に飛び回りたかった。

タイムマシンで過去や未来に行ってみたかった。

宇宙の果てがどうなってるのかも知りたかった。

人類が到達できない、宇宙の秘密に触れてみたかった。

ポルシェもほしかったけど、オプションをつけると、目玉が飛び出す値段だった。

地方に家が建てられる、おプライスでビックリだ!


それともう一つ、ほどほど巨乳の彼女がほしかった。

胸運がなく元カノたちはオールAだった・・・。

こんな世界情勢だと実現不可能な夢になってしまうのかな?

こんな夢すら、叶わない世界になってしまったら、生きていて楽しいのだろうか?


どうなんだろう?、石器時代に戻った世界でサバイバル生活をするのがいいのか。

さっさと人生店じまいがいいのか。

ここも攻撃されるのかは、分からない。

けど、早めに睡眠導入剤でも飲んで、とっとと寝てしまうことにしよう。

死ぬなら寝てる間に、ポックリがいいな。

運が良ければ明日、電気とかネットが使える世界で、目覚めたい。





日本上空、暗い空の複数個所で亀裂が開き、広がっていった。

日本は深夜なのに、亀裂の中からは、青空が見えている。

そんな裂け目を3台の車両が観測していた。

外観は、軍の車両に見えるよう、カモフラージュされている。

内部は軍仕様ではなく、1台目の車両には最新鋭の電子機器、観測装置が搭載されており、もう1台の車両には武器が満載され、3台目の車両には人員が搭乗していた。

観測装置を積載している車両のオペレーターが無線で本部に報告を始めた。


「こちら第16候補地点。亀裂を確認。座標入力完了。誘導レーダー照射完了」

「現在の亀裂は、大型1、中型1、小型3、計5か所。大型は最大幅1500メートル、最小幅950メートル」

すると、無線のスピーカーから返答が返ってくる。

〈誘導ミサイル続いて核ミサイル発射完了。ミサイルの越境確認及び亀裂の完全閉鎖を確認後帰投せよ〉

亀裂からは、生物ではない力の脈動のようなものが入り込み広がっていった。

車両内では、それを察知したかのようなアラートが鳴り響く。

「こ、こちら側への越境を確認」オペレーターが引きつった声で報告した。

〈魔獣か?〉

「いえ、生物ではありません。・・・これは、魔法流の越境です。大型、いえ広域拡散タイプです」

車両からの報告に返答していた無線の声が、口調と声音が突然、老人のものに変わった。

〈やられたの。今回はぬしの勝ちじゃな、ソドム。世界を覆うほどの魔法流なぞいつの間に・・〉

〈今回の人の文明もこれで終わりじゃろ。もう人の文明も飽きたな、次は、猿の文明でも育ててみるか〉

〈あ~、みんなご苦労だった。・・・聞こえてないようじゃの・・・〉

その礼に答えられる状態の人員は、既に一人もいなかった。

全員が、死んだ魚のように虚ろな目をしており、微動だにしない。

魔法に侵され、自我を崩壊させられてしまった、人間の末路である。


やがてすべての裂け目は閉じ始める。

その夜空に、二つの音速の飛翔体が現われ、青空に吸い込まれた。

小さな亀裂からは、地上に向かって、黒い影が落下していった。

空は、ゆっくり暗闇に戻っていく。

爆発音はしなかった。

力の脈動のようなものは、裂け目が閉じた後も、地球上を拡散し続けた。





海上を大船団が進んでいく。

空は、穏やかな青空であるが、海上は荒波が踊っている。

しかし、魔法船は荒波を無視し、海上を滑るように、島大陸に向かって進んで行く。

船上には統一感のない、思い思いの出で立ちの兵士、戦士、魔法師達が一艘あたり何百人と乗り込んでいる。

彼ら、彼女らは、種の存続のために集められた異種族連合軍である。

島大陸からの侵攻に、単一民族だけでは対抗できなくなり、渋々連合を決めたのだ。


船団の先頭集団付近、その中の一艘、船の舳先に、銀髪をサラサラとなびかせている女戦士が立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る