1453回目

またか。またここからやり直しか。しかし何度味わっても死ぬのは気分が良くない。とは言え今回は大きな棍棒で頭を一撃でカチ割られたのであっという間だったのがツイていたな。


「今回のは中々良かった。やはり最短距離での丘越えよりも足場の良い道を使って迂回する方が戦い安いな。何よりそっちの道にいるエレキリザードの素材が良い。その後の雨の中での戦闘にはかなり有用だ。後は……」


 やばい、情報が多い。まとめろ、まとめろ。情報を整理しろ。もうすぐ出発しなくてはならない。次はもっと上手くやる。最善の手順をひとつずつ、確実に増やして行くんだ。そして少しずつ先へ進む。強くなる。何度でも、何度元に戻っても。


「よし、行くぞ。まずはこの錆びた剣をいただき、出てすぐのファイアラットの群れを蹴散らしてファイアラットの火鼠の牙って素材を回収して、それをこの剣に混合して、そのまま残りのファイアラットを振り切って直進。先にいるボーウッドを火属性を付加した剣で倒しボーウッドの堅木って素材を回収ああああああくそ、やる事が多い」


 投げやりになるな。まだまだもっとだ。最善の手順を見つけなくては。24時間なんてあっという間だ。24時間で限界まで強くならなくては。そして先へ進まなくては。あの門を超えなくては永遠に今に囚われたままだ。ああああああ集中出来ない。あああああいいいいああああ頭が痛いいいい。


「ああくそ……もうそろそろ行かなくては……」


 俺は錆びた剣を壁に寄り掛かる白骨から拝借し深呼吸をする。そして毎回思う、この人はここに囚われたのに死ぬ事が出来たんだろうか?もしそうだとしたら終わりは来るのだろうか?考えても仕方がない。余計な考えは振り払って扉に手をかける。ほんの少し力を入れればこの扉は開く。そうすれば1453回目の戦いが始まる。もうここへ戻るのはウンザリだ。だがおそらくはまだここへ戻って来る事になるのだろうけど。

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