水溶少年
はるりぃ*。+
プロローグ
深い森の奥の、小さな集落。
公園もなく、コンビニもない。
学校だって、となりまちまで行かなければならない。
ここの子どもたちにとって、「遊べるところ」と言えば、それは果てしなく広がる「森」だろう。
だから、たいくつを持て余した子どもたちは森で遊ぶようになった。
「今日はいるかな?あの子」
「雨だもん!きっといるよ!」
この集落には、集落の子どもたちだけが知る“ひみつ”があった。
『この森には、“水の子ども”が住んでいる。』
水の子どもは、雨の日や湿気の多い日、雪の日なんかにふらっと現れる不思議な子で、この森のことや地球のこと、過去に起きたこと、果てには学校では教えてもらえないようなことでさえも…、彼はなんでも知っているのだ。
綺麗な清流色の髪に、水のように透き通った綺麗な白い肌…
森で傷だらけになる子どもたちにとって、彼はかなりの異彩だ。
そういえば、彼はいろいろな遊びも知っていた。
水に浮かべた木の葉でボートレースをしたり、
雪の日には雪合戦をしたり…
思えば、彼が知っている遊びはどれも「水」を使うものばかりだった。
その上、彼が触れた水はまるで意思があるかのようにうねったり形を変えたりする。
子どもたちは不思議そうにして、どうやってるの?と尋ねる。
「うーん…、わからない」、彼は決まってそう答えるのだった。
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