某国の騎士と共に

鍛治原アオキ

第1話



「——ねえ、君」




 彼との出会いは、思い返せば味気なかった。




「——ほら、こっちだ。ついて来て」




 最初はお互い、仕事の一環だとしか思ってなかった。




「——これを食べるんだ。あんなに動いたら、腹が減るだろ」




 けれど喋るようになって、だんだんと打ち解けていった。




「——地図の読み方がわからない?だったら教えてあげる。よく見ておいて」




 彼と話すたびに胸の奥がじんわりするのを感じた。




「——ああ、何やってるのって……あははっ!真っ黒じゃないか」




 彼に笑顔を向けられる度、変な感じがした。




「——もっとこっちに寄って。今日は寒いから」








 だけど







「——ねえ、イブ!私を置いて行かないでくださいっ!」







 平和な時間はそう長くは続かなかった。






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