19 強いんだ、大きいんだ
遺跡最深部の大広間には泉があった。そこにはきれいな水が湛えられていたが、その水を真っ二つに割って鉄で出来た巨大な魔神が現れた!
魔神は私の体の数倍以上の大きさだった。こんなものが動き出すと物凄く恐ろしい事になる。だが、遺跡の泉を割って現れた魔神は微動だにしなかった。
「なんだ、動かなければただのカカシか」
そう思っていた時……魔神の割れた頭部に光の玉が乗っかった、私は非常に悪い予感がした……!
「ZEEEEEEEEEEEET!!」
頭部に光の灯った魔神はすさまじい雄たけびを上げると、目を光らせてゆっくりと肘を曲げたまま、ガシーンと音を立てて両手を上に突き上げた。そして下を見下ろすと、私をターゲットに指定したのだ!
「……シンニュウシャ、シンニュウシャ、マッサツセヨ!ハイジョセヨ! ZEEEEEEET!」
「ロボだこれーーー!!!」
確かに遺跡にモンスターは出現しなかった、しかし古代の文明の結晶ともいえる鉄で出来た
魔神は様子見とばかりに耳にある突起から光線を放ってきた。私は難なく避ける事ができた、冒険者達とモンスター退治をした事で身体能力もレベルアップしていたのだ。避けた場所に氷の塊が出来ていた、さしずめアレは冷凍光線といったところだろう。ますます展開がロボアニメ的になってきた。
しかし、そんなロボアニメなシチュエーションを楽しんでいる場合ではない、敵は確実にレベル30以上のモンスターより、下手するとレベル40代後半のバケモノなのだ。
私は階段状の壁を上り、魔神の手を遺跡の剣で切りつけた。
ガイィィィィン!
鈍い衝撃が私の体を奔る、魔神の体は鉄やミスリルよりもはるかに硬い超合金のようなもので出来ていた。遺跡の剣よりも固い硬度の金属で出来ているようだ、さしずめオリハルコンかアダマンタイトといったところだろう。遺跡の剣は刃こぼれ一つしていないが、私の体には細かい振動と衝撃が伝わり、少し麻痺に近い状態になってしまった。
そんな私を目掛け、魔神の腕が体を離れ飛び出してきた、ロケットパンチである。これ製作者武器設定絶対遊んでて考えただろう!だがそんな悠長なことを言っている場合ではない、当たったら即死だ!
「自分の足元の床を落とし穴にチェンジ!」
間一髪である、1m程の落とし穴を床に作ったことで私はロケットパンチの直撃を免れた。こうなればこのスキルで戦うしかない、MPは残り40だ。
魔神は腕を上げ、指先から弾を発射してきた、ミサイルだ。この世界の古代文明はかなり武器開発に精通していたらしい。私はその時代に転生しなくてよかったかもしれない。
幸い、この魔神には翼がなかった。なので私の取る手段は一つだった。
「逃げるんだよぉーーー!」
私は大広間から一度退却する事にした、このままでは絶対に勝ち目がない。私は自分で作った床を渡った後再びマップメイクスキルを使った。
「普通の床を深い奈落の底にチェンジ!」
これで大広間への通路は無くなった、空を飛べない魔神は私を追いかけて来れない。そして私の姿が見えなくなる位置まで来ると……目と頭部の光を消し、再び沈黙した。
「ダメだ、一度出直してあの魔神を倒す方法を考えよう」
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