3 使えないスキル=ハズレ?
頭がフワフワしてきたボクは気が付いたら謎の場所にいた。
「やあ、15年ぶりだね」
ボクの目の前にスラっとした軽めの男が立っていた。
「あなたは誰ですか?」
男は帽子を脱ぎ軽く頭を下げながら自己紹介をした。
「私の名前は調整神、アジャスト・ツクール。彼女の代わりにこの世界に生きる者たちの天啓を司っているものだよ。ツクールと呼んでくれたまえ」
「彼女?」
「ああ、君たちには関係のない話だったね、失礼」
ツクールはボクの方を見ながらうっすらと笑っていた。
「そうそう、前世のことは思い出したかな?」
「!!!」
そういわれた瞬間、私は前世での死亡するまでの記憶を全て思い出した!
「私は車から落ちて死んだはずでは……!」
ツクールが本をめくりながら話し出した。
「板上(ばんじょう)創(そう)一郎(いちろう)、ゲーム制作会社トライア、後のトライエニアックス開発部主任。数多くのゲームを作ってきたチーフディレクターで、夕暮れの山道を大雨の中車で走行中に転落死……かなり壮絶な死に方をしたようだねっ」
「よく人のことをそれだけ観察しているものだな」
ツクールが笑いながら話しかけてきた。
「まあね、君には最初に死神呼ばわりされたし、世界の生死を司るのは本来私の仕事ではないんだけどね、どうしてもやらないと世界の均衡を保てないので輪廻転生の代行をしているわけさ」
ここで下手に興奮しても仕方ないと考えた私は彼に今後のことを聞いてみた。
「それで、私にはユカ・カーサとしての人生と今後のスキルのための天啓が必要だから呼ばれたのではないのですか?」
「そうだね、では君にスキルを与えなくてはいけないね。ほかの生き物やモンスターには空を飛べたり強靭な肉体などの何かの能力がある。しかし人間には特化した生まれ持った能力がない。それをアシストするのがスキルの付与というわけだ。では君にスキルを与えよう」
そうだな、私にピッタリなスキル、それは一体どのような物なのだろうか?
まあ戦闘に使えるスキルなら異世界転生でよくある勇者になる事も出来る。
もしそれが無理だとしても、商人になるスキルや職人として生きるスキルもあるだろう。
どれも無理だったとしても、歌を歌ったり音楽を奏でるスキルでも極めれば生きて行く事は出来るだろう。
農業や漁業といった第一次産業というのもアリなのかもな。
私の前の世界での記憶や経験があればそれを生かせばそれでも食べて行く事は出来る。
第一次産業、第二次産業、第三次産業(サービス業)そして第四次産業とも呼ばれるコンテンツ、著作権業というものもあった……どのようなスキルでも極めれば生きる事は可能だろう。
まあ、よほどハズレスキルで無きゃ……レベル上がれば生きて行く事は可能だろう。
……そう思っていた私だったが、前世の記憶や経験から導き出されたスキルは……あり得ない結果になってしまった。
――床(ゆか)を作る・1メートル四方・1日の使用制限無し――
残念! 私の冒険はここで終わってしまった!!! これははずれの中でも大はずれのスキルだった……。
いくら私が前の世界で生きてきた経験があっても、このレベルアップに数年以上かかるスキルで食べていくのは至難の業だ。
何故だ……何故わたしのスキルはこんなモノになってしまったのか。
ハズレ数あれど、よりによって使いこなせないこんなモノ、左官や建築に携わっていたわけじゃないから使い方もまるで見当がつかない……。
さあ、私は一体これからどうすればいいんだろうか……。
だがあの神は何か笑っているだけで私にヒントをくれる様子は見えない。
仕方ない、もう諦めるしかないのだろうか……。
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