1 デスマーチから終わる日常生活
「これから先急カーブが続くので危険だからいったん話を切るぞ!」
そしてスマホのボタンを押して通話を終了させた。
私は眠い目をこすりながらフルスピードでアクセルを踏み込んだ、しかし慣れないハンドルでは遠心力を制御するのは難しかった。その直ぐ後!
ギュギュキュキキーーー ガガガガッ!!
普段車を運転しているとまず聞こえない耳障りな異音が車の下から聞こえてきた!
挙動も普通ではない。どうやら落下物を踏んでバランスを崩してしまったようだ!
しかし時すでに遅し、車はハンドルの制御の利かないままブレーキも受け付けない、動いたものはすぐに止まれない慣性の法則である。
もうダメだ!制御を失った車は側面を削りながらガードレールをこすり続け、最後には曲がり角のガードレールをぶち破った!!
崖から真っ逆さまに車が空中に投げ出された、これだけの勢いで飛び出したらシートベルトもエアバックも意味がない。私は車から大きくはじき飛ばされ宙に放り出された。
ドゴォ!!! ズガシャーン!!
私は体を強く崖の側面にたたきつけられ、そのまま崖を転がり落ちた。私から少し離れた場所で車が転落、大破炎上して豪音を上げていた。
今は夜中でしかも集中豪雨の中だ、どう考えても助けが来るわけが無い……。
全身が痛い、どうやら内蔵が中でグチャグチャになっているようだ、私は医者の専門家ではないので内臓破裂とかはわからないがとてつもなく痛かった。
「痛い…誰か、助けてくれ…」
そういえばずっと以前にスチムソンの高本さんも車の事故で亡くなったと聞いたが、私が
同じような目にあうとは思ってもいなかった、
痛さが全身から伝わってくる、私はもう助からないだろう。車の中で焼け死ななかったのが不幸中の幸いというべきだろう。
だが、全員の社長宛の嘆願書は水で濡れたり風で吹き飛ばされて全部無くなってしまった……みんな、すまない。
社長の居るゴルフ場はこの山の上にある。
電話もメールも一切切ってしまっているので直接会わないと話が出来なかったのだ。
あの嘆願書があってもゲームの制作延期が出来たとは限らないが……無ければ何もせずにクソゲーの烙印を押されるものが世に出てしまうだけだった、だから私がみんなの為にあがいた事には後悔は無いんだ……。
今までの人生が走馬灯のように思い出された、いつからこんな風になってしまったのだろう。
堀口さんがリーダーでドラゴンズスター3を作ってた頃が一番大変だけど楽しかったな、あのセーブできない上下30層ラストダンジョンはみんなにかなり文句言われたっけ……みんな、最新作完成できなかったらゴメンな……
「死ぬ前……に、……カツ丼の特上……食いたかったな……」
おびただしい流血! 私はその場に崩れ落ちた、やがて静かに 目を閉じて永遠の眠りについた。
生命活動を停止……死んだのだ。
残念!私の人生はここで終わってしまった!
あなたは死にました。
YOU DIED!
ウボァー!
ぐふっ!
どうやらこの業界に長くいたために自身の死亡も何かのメッセージを考えてしまう……。
「へんじがない、ただのしかばねのようだ……だったかな?」
頭の中に声が聞こえてくる。なんだか軽い男の声のようだった。
「アンタは? ……」声にならないが頭に直接来た会話に私は頭の中で会話した。
「私は調整神アジャスト・ツクール。君を迎えに来た。」
どうやら死神がやってきたらしい……。
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