第66話 楽しい宴 ②

 ーールチィ!このパリパリしたヤツ美味いぞ!

 ーーこっちのマカロンとやらも絶品! はぁー幸せ。


 二匹が用意された食べ物を大量に皿にとりながら幸せそうに食べている。

 白ちゃん黒ちゃん、パーティー満喫してるね。



 あっ獣王様の話が始まる。



「今日は最高の日になった。もしかしたら最悪の日になる可能性もあった! だが今日は素晴らしい日になった!! 皆でこの感動を祝おうぞ!」


「「「「「ワァァー!! 獣王様!!」」」」」



 会場が歓声で揺れている。凄い盛り上がり。


 妖精さん達もいっぱい集まってる。


 ーーありがとうー

 ーー友達帰ってきた

 ーー楽しーお祭りー

 ーー素敵ーねー幸せー

 ーーわっしょいー


 妖精さん達も帰ってきた仲間がいて喜んでる。何かお祭りと間違えてる妖精さんも居るけど。ワッショイって……

 可愛いけどね?


 ーールチィ! あっちの方にうまそうな料理が並んでいるからさ? 見てくるぜ!

 ーーあっまってよ黒! 僕も行くよっ


 黒ちゃんたちが、バタバタと新しい料理が並ぶテーブルに走って行く。

 なんだろう、人型姿なのにワンコのしっぽが見えるのは気のせいだろうか?


 会場の端にあるゆったりした席を、私達のために用意してくれたので、一人寛いでいるとこちらに向かって歩いて来る可愛い人が。


「ルチィ様! 獣人国の式典服凄く似合ってますわ!」

「ありがとう。ミミィさんも凄く可愛い!」


「まぁ! ありがとうございます!」


 ミミィさんがいつもの如くギュウッと抱きしめてくる。身長差の所為なのか、毎回大きな胸で息が出来ない。


「ウップッ! はっはぁはぁ……」

「あれえ?」

「ミミィさん! 毎回毎回……絶対ワザとでしょ? コレは」

「えへっ? バレちゃいました? だって獣王様はとっても喜んでくれるのですよ? 大好きなルチィ様にも私、好かれたくって」


 そう言ってウサ耳をぴこぴこさせて私を見る。


 ぐぬっ

 何ですか? この可愛いさは。

 こんなことされたら、何も言えません。


「ルチィ様も竜王様に抱き付く時は、コレをお勧めしますわ! きっと喜んで下さいますよ?」


 なっ何を! 私がシェラ様に?? 胸を?

 無理無理無理無理無理無理無理っ


 あーっまた変な想像しちゃった!


「ルチィ様? お顔が赤いですよ?」


 貴方の所為ですよ!!


「お熱いのでしょうか? 良かったらこちら飲まれますか?」


 ミミィさんが手に持っているピンク色の綺麗なソーダを渡してくれた。


「わっ、ありがとうございます!」


 興奮して喉も渇いていた私は、一気に飲み干した。


「はぁーーっ! 甘くて美味しい」


「そうでしょう! こちら獣人国で今大人気のソーダなのです!」


 人気なのもわかる。微炭酸でとってもフルーティ。


「もう一杯どうぞ!」


 ミミィさんがウエイターさんからおかわりをもらって来てくれた。


「ありがとうございます。」

「ふふではカンパーイ♪」

「カンパーイ♪」


 ミミィさんとグラスをカチンと合わせ飲み干す


 ゴクッ

 うん!美味しい!

 はぁ~。あれ? なんでかな? 顔はもっと熱くなってきたような。


『ルチィ? 何を飲んでおるのだ?』


 獣王様とお話しいていたシェラ様が席に戻ってきた。


「あっシェラ様~。獣人国で大人気のぉ。えっと。? んん?」


『ルッルチィ? 顔が真っ赤ではないか!』


「あっ! そうそう~。大人気のソーダ! これっ」


 私は持っていたグラスを、上に掲げてシェラ様に見せる。


『なっ! これは……酒じゃないか! ルチィ? 酒など飲んだ事などないであろ?」

「ええ~? シェラ様? これはソーダだよぅ? おしゃけじゃないにょ」

『獣人国では酒をソーダと言うんじゃ!』


「えっ!? ルチィ様! お酒ソーダを飲んだ事ないのですか? すみません! お水貰ってきます!」


 んん? ミミィさんが慌ててる。お酒? って言った? それくらい飲んだ事あるよ~。んん。? 前世で? 今の世界では? ん~。まっいっか。


 何かふわふわして……気持ち良いし。

 シェラ様が眉毛を八の字にして困っている。なんでそんな顔してるの?

 こんな時は……そうださっきミミィさんに教えてもらった……。


「シェラ様! 私、ミミィしゃんにおちえてもらった事があるにょ」

『教えて? それより大丈夫なのか? 呂律が回ってないぞ?』


 なぜかやたらと心配しているシェラ様。それを無視して

 私はポンポン! ソファのイスを叩く。

「シェラちゃま、ここに座って?」

『ルチィ? 本当に大丈夫か?』


 シェラ様が困惑している。なんでかな?


「はにゃく!」とそんなシェラ様を急かす。


『はいっ!』


 シェラ様が慌ててソファに座ると、私はいつもミミィさんにされてる様に、シェラ様の顔を胸に埋めた。

 ギュウッッと。思いっきり。

 


 あえ? 何も反応がない。


「シェラちゃま?」


 抱き付くのをやめて、シェラ様の顔を見る。


 スッゴイ真っ赤だ。


「シェラちゃま? どうちたの?」


 真っ赤なシェラ様は口元を手で押さえて何かブツブツ言っている。

 あれえ? ミミィさんは大喜びって言ってたのに。


「シェラちゃ~。嬉しくないにょ? ミミィシャンがね? コレをしたらシェラちゃまが喜ぶっちぇ教えてくれて……シェラちゃまはイヤだったにょ?」


 そう言ってシェラ様の顔を覗き込む。やはり真っ赤だ……どうしたのかな?


『ちっ違! いっ嫌なものか!! 嬉しいに決まっておる! なんならもっと欲しいくらいだ!』


 今度は早口で捲し立てるように、嬉しいと語るシェラ様。ええと嬉しいって事だよね?


「なら良かっちゃぁ~」


 あれ? 天井がグルグル回って……ん~……


 ーールチィー。ルチィー。


「はにゃ?」


 シェラ様が何か叫んでる。

 ププッ

 顔が必死だぁ。



 このまま私は眠りについた。シェラ様が半泣きでパニックになっているなど知る由もなく。


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