1-16 材料採集班
『タカシ:登れ登れーっ!』
『サンライズ:これは楽だな』
土属性の賢者たちが穴を掘り始めた頃、サバイバー率いる材料採集班も出発して斜面を登り始めた。
斜面の上には見張りが立つため、今では補助のためにツルのロープが張られていた。それを伝ってぞろぞろと登る。
彼らのウインドウにもやはり図鑑内にあるミニャの仮拠点の設計図が表示されており、どんな材料が必要なのか共有されていた。
全員が登り終えると、みんなで森の中を30mほど移動した。
目的地につき、リーダーであるサバイバーが説明する。
『サバイバー:さて、我々は材料集めをするわけだけど、今回は時間をかけて落ちている木を集めるというわけにはいかない。そこで手っ取り早く木の伐採を行なう。事前に目をつけていた木がこれだ』
サバイバーは直径10cmほどの針葉樹を叩いた。
杉ほど高くはないようで7m程度だろうか。上に行くほど木は細くなるので、太い木材として使えるのは4mから5mくらいだ。
『サバイバー:図鑑を調べたけど、まだ鑑定されてないんだ。えーっと、ハナだったよね? やってもらえるかい?』
『ハナ:わかりました!』
ハナと呼ばれた賢者は、植物鑑定を木に使った。
■賢者メモ 植物鑑定■
『コルンの木』
・針葉樹。外樹皮に虫よけの効果があり、虫がつきにくい。
・ミニャにとって、毒性なし、薬効あり、食用可。ただし、外樹皮は非常に消化されにくいので、食用にすべきではない。
■・■・■
ハナは鑑定結果を全員に共有した。
『サバイバー:おー、それは予想以上に良い木材だね。森を見た限り、別に珍しい木というわけではなさそうだし、覚えておこう』
『ハナ:私、あとで図鑑に書いておきます!』
ふんすとするハナに頷いて、サバイバーはみんなに言う。
『サバイバー:この木を3本ほしい。この中に知り合い同士っていう人がいるなら手を上げて』
いなかった。無念。
採集班はサバイバー、木属性2人、それ以外が17人いる。
『サバイバー:では適当に班分けをして木を倒そう。この中で木の切り方をしっかりと知っている賢者はいるかな?』
『士道:俺がわかるよ。営林署に務めてたこともあるんだ』
『サバイバー:おー、それはいいね。俺なんかよりも詳しそうだ。士道は植物鑑定係でもあるよね?』
『士道:ああ』
『サバイバー:じゃあ俺がこの1本を担当するから、士道はコルンの木を鑑定しつつ2本を頼む。できれば他の賢者にも切り方を教えて、実際に切らせてあげてほしい』
『士道:了解』
『サバイバー:俺たちにとってはこの木でもかなりの大木だ。俺たちは声が出せないし、倒れる方向に人がいないかはスレッドで共有して十分に注意してほしい』
『士道:オーケー、任せてくれ』
『サバイバー:ハナは俺と一緒に来てくれ。俺は伐採が終わったらツルの採集を行なうからそれを鑑定してほしい』
『ハナ:わかりました!』
『サバイバー:あ、ごめん。あと、木を倒す際には対岸の見張りとも連携を取る。近くにゴブリンがいる場合はいなくなってから倒すよ』
というわけで、活動開始。
サバイバーの下にはハナの他に5人が残り、残りは全員が士道についていった。
『士道:この木でいいか。あまり離れすぎると運搬に時間がかかるからな』
士道は植物鑑定を行なって、コルンの木を選出した。
『士道:さて、この中で風属性はいるか?』
『ジャパンツ:俺が風属性だよ』
『ブレイド:俺も風属性』
『士道:じゃあ切り方を教えるから、切ってみるか?』
『ジャパンツ:よっしゃ、任せろ!』
『ブレイド:すまんがぜひ教えてくれ』
ジャパンツとブレイドが名乗りを上げて、伐採にチャレンジ。
士道に教わりながら、まずはジャパンツがトライ。
風属性も属性武器を出現させられるので、風のナタで切れ込みを入れていく。
『士道:こうやって三角に切ると、ここの部分の支えが無くなるからこっち方向に倒れるんだ。これを受け口という』
『ジャパンツ:ふむふむ、なんかで見たことある。反対側も切るんだよな?』
『士道:そう、そっちは追い口。そっちは三角に切る必要とかはないけど、受け口で作った三角の底面よりも少し上を切らないとならない。なんとなく理屈はわかるだろ?』
『ジャパンツ:ああ、わかる。だけど悪い、初めてだしちょっと目印をつけてくれるか?』
『士道:オーケー』
ミニャのオモチャ箱でたくさん召喚されるには、自分が役に立つことを示さなければならない。だからジャパンツとブレイドはかなり真剣に士道の自然教室に取り組んだ。
これで次にクエストの参加資格に『木を切った経験がある賢者』というものが出たら、参加することができる。そして、そのクエストは森にいる限り、かなり高い確率で再び発行されるはずだ。
もう少しで木が倒れそうなので、『材料採集スレッド』で連絡を取る。
【93、士道:こちら別働班。こっちはあと少しで倒れそうだ。方向は南、下流方面に倒す。サバイバーと見張り隊どうぞ】
【94、サバイバー:俺のチームはそっちに誰も行ってないから大丈夫だよ。俺たちの方ももうそろそろだから、北側には入らないでくれ】
【95、ワンワン:こちら対岸の見張り隊。ゴブリンや獣の姿は見られない。見つけたらすぐに連絡する】
【96、士道:了解。それじゃあ5分以内には1本倒れると思う】
対岸で見張りをしているワンワンは、カーマインたちが探索に出発する際に研修の見張りをしていた賢者だ。どうやら見張りが性に合うらしい。見張りは暇なので、それもまた貴重な才能だろう。
スレッドでそんなやりとりをしつつ安全が確保され、順番にコルンの木が倒されていく。
『ジャパンツ:うぉー、こえぇ!』
『士道:俺らからするとかなりの大木だからな』
切り倒したコルンの木の直径は10cm弱だったが、人形の胴回りよりもずっと太い。そんな木が倒れるわけで、その迫力は凄かった。
ところ変わってサバイバーチーム。
こちらでも賢者に伐採体験をさせて、技術習得のチャンスを与えていた。
そうして木が切り倒されると、ハナがあわあわした。
『ハナ:あわわわわわ……』
ハナはまだ女子高生だった。
大木が倒れる様にビビり散らかした。
『サバイバー:そうしたら枝を落としていこう。枝も使うから一か所に集めようか。俺はツルを1本落とすから、ハナはそれで1mがわかるようにしてほしい』
『ハナ:わかりました。人形の背で換算すればいいですか?』
『サバイバー:ああ、30cm換算でね。正確でなくてもいいけど、1mは越えておいてほしい』
サバイバーからツルを受け取ったハナは、ツルの横に寝転がって人形の身長を頼りにして1m定規を作る。人形は約30cmなので、90cm以降は勘である。
『ハナ:サバイバーさん、できました!』
『サバイバー:おー、ありがとう。そうしたら、それで根元から330cmの部分に印をつけて』
『ハナ:わかりました!』
そんなふうに作業が続けられ、330cmの木材1本に、140cmの木材2本、枝が十数本分手に入った。
『ハナ:樹皮は剥がないでいいんですか? たしか剥いだ方がいいですよね?』
『サバイバー:そうだね。樹皮はすぐ剥がれるし、腐りやすいから剥いだ方が良い。でもそれは下でやってもらおう。ちょっとここでやる時間はなさそうだ』
サバイバーたちの作業は材木をまとめるところまでだ。
人形は力が強いので伐採自体は早いが、物を運ぶのに致命的に向いていなかった。馬並みに力が強いハムスターがいたとしても、実際に荷馬車を運ぶことはできないのである。
だからこそ工作班は貴重な時間を使って人形の大型化を試したわけだが、結果は失敗に終わっている。
サバイバーはチャットルームでニーテストに連絡を入れる。
≪サバイバー:こちら作業が完了した。輸送班を送ってほしい≫
≪ニーテスト:了解≫
≪サバイバー:こっちも少し時間が余っているから、先行して少し運ぶよ≫
≪ニーテスト:わかった。生放送で場所は覚えたから、特に引継ぎに人を残す必要はない。人形は再利用するから全員で戻ってきてくれ≫
というわけで、サバイバーたちは木材の両端をツルで縛り、そのツルを木材の左右から持って6人で運ぶことになった。
賢者たちは一人一人がとても小さい人形だが、力を合わせてどんどん材料が集まっていくのだった。
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