第2話 鬼頭翔太の場合【問題編】
警視庁捜査一課の俺――
「被害者は15歳の
今が午後4時だから、およそ14時間前に殺されたということか。
「死因は圧死です。すなわち、何か大きなものに押し潰されたものと思われます。そして奇妙なことに――」
吉田が険しい顔を作ったので、俺は身構えた。
「その圧殺なんですが、胸のあたりを圧迫されたみたいで、胸には波打つような溝が多数入っていました。こちらに写真が」
吉田が見せてきたのは、鬼頭翔太くんの遺体だった。たしかに、胸のあたりに溝がたくさん付いている。その模様はまるで木の年輪のようだった。
「この年輪みたいなものに押し潰されたというわけか?」
「そういうことになるでしょうね」
吉田が頷く。
「現場は完全なる密室でした。ドアにも窓にも鍵がかかっていたのです。第一発見者である父親は、窓から鬼頭くんが倒れているのを見て、ドアを破ったそうです。それから、息がないのを確認して119番と110番に通報したようです」
「ふむ……」
「ですが、この際密室は問題ではありません」
「どういうことだ?」
「鬼頭くんは
「なんだって!」
『鬼神』とは、超能力を持つ一族のことだ。現代日本には四家が残されているという。
「鬼頭」という名字だが鬼神ではないという者ももちろんいる。が、鬼頭翔太くんはれっきとした鬼神だったようだ。
「鬼頭くんはどんな能力を持っていたんだ? 死んでも生き返るとか?」
「ジョークのつもりですか? 全然面白くないですよ。鬼頭くんは未熟で、まだ自分で制御できるほどではなかったそうなのですが……彼の能力は憑依でした」
「物に魂が宿るということか?」
「簡単に言えばそういうことです。鬼頭くんは夜寝ている間に、時空を越えて物に意識が宿っていたそうなんです。さらに、意識だけでなく感覚まで」
「感覚もかよ」
「はい。なので、密室は関係ないんです。午前2時には鬼頭くんは寝ていたでしょう。すなわち、どこかに憑依していた可能性が高い。そこで押し潰されると、部屋で寝ている元の体も連動して死んでしまうのです」
「なんと不便な……」
俺は鬼頭くんが不憫で仕方なくなった。自分で制御できないのに勝手に魂が飛んでいってそこで圧死してしまったのだ。彼には全く非がない。
悪いのは彼を潰したほうのヤツだ。もしそいつに殺意があったなら、晒し首にしてやろう。
俺は考えた。果たしてあの年輪のような模様はいかにしてつけられたのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます