8話 天座の七色
クロクロの属性は、主に七種の色で分けられている。
青、赤、黄、緑、紫、白、黒。
神々も魔法も基本的にはこの七色に分類される。
そして
神そのものや、もしくは神を超越する存在。
それを【天座の七色】と呼び、
曰く、【赤の天座】の試練に打ち勝つと強力な炎耐性がつく。
曰く、【黄の天座】と友になれば雷撃をまとい富が約束される。
曰く、【緑の天座】に
曰く、【白の天座】に祈れば癒しの奇跡を目の当たりにする。
曰く、【黒の天座】を倒せば黄泉の力の全てが手に入る、などなど様々な噂や考察が飛び交っていた。
【天座の七色】は時代毎に存在していたが、その全てが
赤を
紫を冠すは【
そして姿形は不明だが、その戦闘方法だけが目撃されている黒の天座……【封神の
そして永遠の命と全エルフの頂点に立つパパンかママンは、判明してなかった隠し天座じゃないだろうか?
おそらく属性は緑だと思う……。
ただ、そうなると俺の知っているクロクロの知識と
各時代に各色の天座は
そして俺はシーズン3と4の【緑の天座】を知っている。その発生条件も。
つまり、パパンとママンのどちらかが天座だとしたら、シーズン3や4の時代では存在しないことになる。
なんだかそれは嫌だった。
数百年後には推しのご両親のどちらかが死ぬのは、やっぱり納得がいかない。
だから俺はこの9年間で、
自身の推測と仮説に基づき、一つの実験を試している。
なんだかこういう研究者っぽい思考は、パパンとママンからの影響が強いのだろう。
少しずつだけど——
俺は知らず知らずのうちに推しに近づいているのかもしれない。
◇
2年が経ち11歳になった。
俺の古代樹と
なぜなら森の状態を俺が感知できないと、ヴァン少年が
「よー! レムリア!」
「よーじゃないです。私はヴァン君が森に入るたびに、獣たちを遠ざけるよう木々にお願いしているのですからね。こんな頻繁に来ないでください」
彼も13歳になり、もうすぐ村では立派な成人扱いされる歳になった。自由を許されたからなのか、前よりも頻繁に古森へ足を運ぶ日が増えた。
「そりゃー世話になってるとは思うけどさ、一カ月ぶりじゃん」
「エルフにとっての一カ月は一日ぶりみたいなものですよ」
元人間の俺からしたらまだそんな感覚にはなってないけど、ヴァン少年の危険を考えると、気軽にほいほい会おうとは言えないので
「大丈夫だって。こう見えてかなり鍛えてんだぜ、俺。この間も村に来た冒険者さんに剣術を色々と教わったんだ。けっこう才能あるってな!」
「だからといってあまり来てはダメです」
「そんなこと言うなよ。俺にはもう……」
家族がいない。そう言いかけて口にしなかったヴァン少年は強いと思う。
寂しいとか、
「俺にはもう……! お前がくれる
おっと、自らジャンキー発言ですか。
「あの薬マジですげえよ。修行で折れた足も、村の薬師には治らないって言わたのに一瞬で完治したしよ! 薬師のあの驚き顔を思い出すと、今でも笑えてくるぜ」
「【
「はっ! 俺はいずれ死人を生き返らせる秘薬を探し出す男だぜ? 無茶ぐらいしないとな」
「その前に修行で死んでいたら元も子もありませんからね」
「だから薬、くれないか?」
「はあ……」
元々は俺がヴァン少年をたきつけてしまったようなものだから、なんだかんだ死なれると寝覚めが悪い。なので【
「ありがとな!」
「はあ……」
こんな付き合いがもう6年は続いている。
「でもお前は
「私はエルフですから。10歳ぐらいから体の成長がゆっくりになっているだけです」
パパンとママンに聞いた話だと、エンシェントエルフはこれから100年ぐらいかけて人間でいうところの14歳前後になるらしい。
それからは1000年で1歳分ぐらいしか老けないのだとか。
パパンとママンが4000年以上生きていて、二十代に見えるのも納得がいく。
そういえば推しもシーズン1からシーズン10までの1000年間、ずっと16歳前後に見えたのはそういうことか。
「ふーん……じゃあレムリアはずっとチビのままか?」
「ヴァン君がよぼよぼのおじいちゃんになる頃には、うら若き美少女になっています」
「自分で美少女って言うかよ」
口ではつんけんしているが、ヴァン少年の表情は少しだけ寂しさを含んでいた。
きっと同じ時を歩めないことに、埋められない差を感じて悲しんでいるのかもしれない。
「そんな暗い表情にならないでください。今日はきっと特別なものが見れるはずです」
「べ、別に暗くなんてなってねえ! で、特別なものってなんだ?」
ああ、今日は本当にすごいものが見れるかもしれないぞ。
そんな思いを込めて軽くウィンクしてやると——
「——見てのお楽しみってやつです」
ヴァン少年はやっぱり頬を真っ赤に染めた。
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