第7話

 学園の午後。好感度が上がらず焦ったリアさんが、私と殿下いる書庫へ突撃してきた。


「どうして? フォックス様は悪役令嬢のラビットと一緒にいるのですか? 彼女といても呪いは解けません!」


 ……フォックス殿下の呪い。


 乙女ゲームの殿下は幼い私に「その笑顔が怖い」という一言で傷付き。それ以来、笑わなくなってしまう。呪いというより言葉の呪縛のようなもの。

 

 だけど、婚約者に選ばれたのは私。

 私を嫌いな、殿下はますます笑わなくなる。その傷をリアさんが癒すのだ。


『フォックス様の笑顔が好きです』

『ほんと? 僕はリアの前なら笑えるよ』


 2人の可愛い告白のイベント。


 だけど私は殿下の笑顔が、全てが好き。

 まだ記憶がない頃の幼い私も、乙女ゲームとは違い、ポーッと頬をそめて「可愛い」と殿下を見ていたとかで。


 お母様がお茶のとき、その話をいつもする。

 殿下の前でも言うから、はずかしい。

 

 殿下にお会いするたびに獣化してくれて、私をナデナデ係にしてくれた。殿下は私からの呪いにかかってはいない。


「それで君が言う、僕の呪いとはなんだい?」


「その女が言った「笑顔が怖い」という一言で傷付いた、フォックス様は自分が嫌いなの。そして、原種の血が濃いフォックス様は獣化すると、元のお姿に戻れなくなってしまうの!」


 リアさんの言う通り。殿下は獣化してしまうと中々、元の姿に戻れなくなる。乙女ゲームでは獣化したまま、殿下は野生化してしまう。


 2度と、元の姿に戻れなくなると言われるが。リアは噛みつかれながらも、フォックスのトリガーを見つけて元に戻すのだ。


 ――涙ものの、イベントだった。


「へぇ僕が獣化から戻れなくなるかぁ。そんなことよりもラビットに対して言葉の使い方がなっていない。それに君の噂はいくつか聞いているよ。確か君は、僕以外にも婚約者がいる男性に獣人のしたリスの姿で言い寄っているだろう? あれ、やめた方がいいよ」


 リアさんが婚約者がいる人に言いよる? って、それって攻略対象者よね。


「やめないわ、私はこの乙女ゲームのヒロインなの! みんなに愛される存在なの! フォックス様はやく私と手を取り合い、そいつから逃げましょう!」


「そいつ? 逃げる? 嫌だけど」

「ふえっ?」


 期待していた言葉とは違い。驚きで、すっとんきょうな声を出したリアさん。


「悪いけど、僕はラビットだけを愛している」


「そんなの嘘よ!」


「なら証拠を見せようか。ラビット、僕の頬にキスして」

「ふえっ⁉︎ キスして?」


 今度は私がすっとんきょうな声を上げた。

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