05
血を採られてしばらく経った後、結果が出たようだった。名前を呼ばれて受付カウンターに行くと、受付のお姉さんが一枚の紙を渡してくれた。どうやらこれがスキル鑑定証明書、というやつらしい。
この世界、文字が共通じゃないので、パッと見た限りではなんと書いてあるのか分からない。
しかし、そこは英才教育を受けられた(元)侯爵令嬢。地続きの隣国の文字を学ばないわけがない。
じっと紙を見て解読を試みようとしたとき、わたしが読むより先に、受付のお姉さんが内容を教えてくれた。
「ルティシャさん、どうやら貴女、スキルなしのようですね」
「すきるなし」
わたしは言われたことを、まるで子供のように繰り返した。
元の国であったら、スキルなしでも別に困らないけれど、スキルで就職が決まるような国だったら、スキルなしっていうのは結構ヤバいんじゃないだろうか。
わたしが内心で冷や汗を書いていると、「安心してください」と言われた。
「確かにスキルはありませんが、神の加護があります。なんとかなりますよ」
「……加護?」
スキル制度が廃止された国に住んでいても、『スキル』という言葉自体は聞いたことがあるが、『加護』という言葉に関しては一度も聞いたことがない。
わたしが不思議そうな顔をしていたからか、お姉さんが丁寧に『加護』というワードについて説明してくれる。
「神の加護、というのは、スキルランクの最上位のさらに上に当たるもので、滅多につくものではないんですよ。当然、スキルよりも重宝されるので、神の加護がついていて仕事が見つからない、という話は聞いたことがありません」
……成程?
どうやらスキル自体には質の良さに応じてランクが変わるらしいが、もはやそのランクに収まらないくらい突出しているスキルのことを『神の加護』と呼ぶらしい。
「ルティシャさんの加護は――テイマー(猫)ですね」
「ね、猫……?」
「はい、猫族限定になりますが、全ての猫族を従えることができます」
最高か???
「つ、つまり、虎を手なずけてもふもふしたり、ライオ――じゃない、大獅子と仲良くなって肉球をもみもみすることも容易ってことですか?」
「そ、そうなりますね……?」
若干――いや、かなり引いた目で受付のお姉さんがわたしを見ているが、そんなこと、気にしていられない。
スキルが生活に密接していない国に生まれたから自覚はなかったけれど、前世での死に際の願いは、想像以上の効果を持って形になったらしい。神様、わたしの願いを叶えてくださりありがとうございます!!
国を追い出されて良かった! お猫様最高!
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