家族はホラいる。

夕日ゆうや

とある家庭。

「こら、藍梨あいり。綺麗に食べなさい。もう、宏斗ひろとはさわがない!」

「だって、ママの料理おいしいんだもの」

「だからって急いで食べると喉に詰まるわよ?」

「むー。いいもん!」

 緑色の毛虫がボタボタと落ちてくる。

 すっと宏斗と藍梨の存在が消える。

 わたしと義人よしひとのつながりが、消えていく。

「いやだ。嫌だ。イヤだ!」

 わたしは辺りにある刃物をばらまく。

 買ってきたたくさんのお守りを切り刻んでいく。

「あはっはは。いい気分!」

 消えていった家族の顔を思い出し、わたしは家を走り回る。

 の気配が漂ってくる。

 腕を這い回るウジ虫。

 背中を滑り落ちる悪寒。

 すべてがでたらめな世界で、わたしはひとり叫ぶ。

「あの人の子なのよ!」

 わたしは血走った目を外に向ける。

 ベランダから、身を乗り出す。

 わたしは吸い寄せられるように五階建てのベランダから飛び降りた。


『今日未明。某所の高層ビルにて、若い女性の変死体が見つかりました。警察は事故と事件の両面で捜査しており――』

 俺の耳に聞きなじみのある名前が聞こえてくる。

 だからあれほど俗世と関わるべきでないと忠告したのに。

 俺は祝い酒で喉の渇きを潤す。

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家族はホラいる。 夕日ゆうや @PT03wing

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