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お父さんは結構慕われていたようで、色んな人達が私にお父さんとの話をしてくれ楽しい歓迎会だった。
楽しい歓迎会だった。
そう思いながら、色んな男女に囲まれている元気さんの元へと歩いた。
「元気さん!!」
私の声に元気さんは私の方を見た。
「一緒に帰りませんか?」
「俺?」
「はい。」
「いや、ごめんね~。
俺これから二次会も行くけど!!
国光ちゃんも行く?」
元気さんがそう答えると周りの人達が盛り上がった。
「二次会に行かないって行ってたじゃん!!」
「ちょっと顔出すよ!!
俺がいないと盛り上がんないと思うし!!」
「飲みの席だけじゃなくて仕事の席でも盛り上げろよ~!!」
「誰も俺に仕事振ってくれないからじゃん!!」
「入社初日から漫画読んでるからだろ~!!」
「仕事振られたら漫画閉じるって!!」
「始業時間になったら閉じなさい!!」
周りの人達と盛り上がってしまい、もう私のことを見てもくれなくなった。
「国光さん!」
女の先輩達が声を掛けてくれ、私の方に困った顔で笑いながら近付いてきてくれた。
そして・・・
「さっき元気君が言ってたけど、好きな女の子がいるみたいなんだよね。
これからその女の子と会うって。
だからあんな感じの対応なのかも。
うちらも二次会に行かないから一緒に帰ろう?」
そう言われた・・・。
泣きそうになるのを我慢して笑いながら頷く。
「1年前、一緒に帰ろうって約束したでしょ?
忘れちゃった?」
金曜日の繁華街、私の小さな小さな声は煩すぎる雑音にかき消されてしまい、元気さんが私を見てくれることはなかった。
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