第3話 一か八か……喰らいやがれっ!
「あ、あんたは一体?」
「そんなことよりもこいつが最優先よ。話があるなら後にしてちょうだい」
俺は言われたとおり距離を空け、赤いツインテール女が豚と交戦している様子を眺めている。
汗を吸いすぎたシャツの不快感も手伝ってか、我ながらひどく情けない光景に思える。
俺にも何かできればよかったのだが、戦闘能力がないことにはどうしようもない。
『
こんなクソみたいなレア能力より戦えるようにしてくれよ。
「はあっ!」
彼女の素早い二刀が空を斬りながら舞うと、次の瞬間豚から血飛沫のようなものがあがる。
ような、と言うのは血液と呼ぶにはおよそそぐわない色をしているからだ。
戦況的には彼女が圧しているように見える。
もしあれのHPゲージがゲームのごとく表示されているとしたら、今の連続攻撃で順調に減っているだろうイメージも容易にできる。
だが、敵は敵で倒れる素振りを一切見せない。
ああ見えてかなりタフな種族なのかもしれないな。
一方の彼女は少しずつ息が切れ始めているようだ。
戦闘は続いていき長時間に渡ると、あれだけ素早かった行動が一歩二歩と遅れだした。
それを好機と見たのか、豚は地鳴りのような雄叫びをあげながら飛び掛かろうとしている。
あれを喰らえば致命傷になるのは間違いなく一秒たりとも考えている時間はない。
手のひらを見つめた後、腕を伸ばし放出するイメージをすると体に熱を帯びていく。
「一か八か……喰らいやがれっ!」
一応目潰しくらいにはなるかもしれない。
なんでもいいから呼び水ならぬ呼び酒になってくれればいい。
なにより、この状況で何もしないままなのは男として格好がつかないからな。
手から発生した酒は水の束となり前方目掛けて飛んでいき、その反動で俺は後ろに弾き飛ばされそうになる。
「うおっ、思ってたより勢いが強いな!? おーいそこの人、うまいこと避けてくれないか!」
「え……水の魔法? 一体何が起こっているの?」
彼女は瞬時の判断で屈んで身をかわし、そのまま酒の束は豚の顔面に直撃した。
「まだまだああああ!」
戦闘は続いていき長時間に渡ると、あれだけ素早かった行動が一歩二歩と遅れだした。
それを好機と見たのか、豚は地鳴りのような雄叫びをあげながら飛び掛かろうとしている。
あれを喰らえば致命傷になるのは間違いない。
一秒たりとも考えている時間はない。
手のひらを見つめた後、腕を伸ばし放出するイメージをすると体に熱を帯びていく。
「これは支援と見ていいの? 何だかわからないけれど、この機に乗じるわ」
そう呟いた彼女が前線へと復帰していくのを見て、俺は邪魔にならないように酒の放出を止めた。
これまでと比べると豚は明らかに足元がふらふらになっている。
まさか魔物にも酒酔いの概念があるとでもいうのだろうか。
そうしているうちに決着はあっという間についた。
彼女は
轟音とともに大地に伏せた豚はピクリともせず絶命したようだ。
「ねえ、そこのあなた。さっきのってもしかして――」
二刀の剣士の姿と言葉が近づいた途端、俺は強い
チクチクとした草の感触を肌に感じたまま目の前は真っ暗になった。
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